ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

Miscellaneous Human History 雑史/外伝

レンブラント本物見つかる だが多くの贋作は永久に”ホンモノ”として生きる

1630年は380年前。アムステルダムにその時、生きていた白髪の老人と若い男の肖像画を描いたのは引っ越してきたばかりの24才レンブラント・ファン-ラインだった。

老人の方はこれまで彼の弟子の作とされてきた。師匠の画法を学ぶ弟子の作品や、他の画家による模写画を本人自身の作品と区別するのは容易でない。市場価値の高い画家作品の贋作が世に出回るのはその真贋を見極めがたいからである。知られる例ではヴィンセント・ファン-ゴッホをまねたエミール・シュッフェンネッカーの贋作。彼は儲けたようです。

Met man

個人所蔵の”老人”はアムステルダム・レンブラント美術館に借用展示されていた。ライデン工科大学など協力を得て開発された光学電子透視機=スキャナーを用いるプロジェクトで、今回のホンモノの結果が公表された。責任者はアムステル大学で教えるウェーテリング。従来の機械ではここまで出来ず、うやむやばかりだったらしい。

スキャンの結果、隠されたデッサンが明らかになった。いろいろ細部のウェーテリング氏の説明はややこしいので置いておき、ともかく新機械が今後、これまでの”実に多くの灰色作品”の白黒を決定するのではないかと期待される。

思い出すのは安田火災海上が1987年だったか当時のオークション破格値58億円で買ったファン・ゴッホ15本向日葵だ。説が幾つかあれども、同様な向日葵画の初期の数よりいつの間にか1枚が増えた。それが安田の15本茎絵らしい。これを贋作とする資料をそろえて力説するフランス研究家がいた。この主張に乗せられた私は、当時ファン・ゴッホ美術館の学芸員二人の内の一人と電話で話したんです。その書付が今見つからず…、ともかく彼は電話最後に自分の調査に自信を持っていて、「大丈夫さ」と言ったんです。

贋作説を大っぴらにしたのは電話盗聴で今騒がれるマードック系の日曜紙サン。当時の安田火災海上がどう反応したか? オランダの専門学芸員2名の保障付きによるクリスティー競売だから、ホンモノであると言う声明を出したと記憶している。かの2名は既に退職しているほど昔の話なんです。サンの偽説の一つの根拠はファン・ゴッホならば決してする筈のない”花茎の折れ方”だったのでは。もしもそうなら、偽の可能性高いですね。

ヴィンセントほど執拗に対象を観察する半ば”狂人”は稀。少しでも絵を描く人なら、花瓶にさした向日葵の沢山の茎の一つが不自然ならば、直して描くか、なんぞ手当てするでしょう。ヴィンセントより一回り年かさのドイツ画家は商いに熱心の余り、急いで描きすぎ失敗をしたのでは…。しかも一枚多くなった経緯を追ったフランス人が探し当てた画廊アドレスはどうやらシュッフェンネッカーの絵を扱っていた所だったそうな。(このフランスの人物はオランダ在の美術史家だったが、現在健在だろうか?)

111203 Rembrand 04

30 年前にこの新しいスキャナー機械はありません。かの二人と協力ブリテン側鑑定に用いた方法は現在ほど確実でないです。日本にある向日葵オーナーはぜひ疑いを晴らすべきでしょうか?私はウェーテリングの組織に鑑定依頼しても良いのではないかと思います。なぜなら贋作の場合、58億円は保険会社から返却されるのです。その代わり、贋作でもその向日葵の絵は返却して最早”安田”手元にありませんね。

贋作も”ホンモノ”と言うアイロニーがある。大画家作品のあたかもホンモノのような立体的印刷物が、世界広く居間に飾られています。また有名美術館はしばしば、展示による損傷を防ぐため、模写を一般公開している。鑑賞者はそれを知らず、ホンモノとして受け止めている場合が殆どです。こうした文脈で考えると、本物にほぼ等しい贋作は”価値ある”作品なのでは…。

エミール・シュッフェンネッカーは絵描きとして名を留められたのはファン・ゴッホの絵らしい絵を商いしたためです。さもなくば誰にも知られない無名の画家に終わっていた。オードリー・ヘプバーンとピーター・オトウールが可笑しく演じたコメディーに、贋作画家のビジネスマンである彼女の父親が上手に描かれています。贋作と画商とコレクターの世界を軽妙に扱った映画とも言えます。


美術コレクターと言うのは商いを通じ大金持ちになった人たちです。彼らにとってグレーゾーンの歴史画家作品は重要な投資対象に変わりありません。贋作を承知している場合もありえましょう…。この世界に毎年、殆ど一般に知られない歴史上実在の画家作品が続々出てきます。昔気質ホントの通は嘆いていますが、アラブや露支那のにわか富豪の需要が後をたちませんから、通貨危機などと拘らず大活況を呈している。

そんな半分は闇がかりなので、法人または個人美術館は怪しき灰色を堂々と飾っている…。安田の”15本茎向日葵”購入者あるいは現オーナーも恐らく同じ心境と思われますが…。
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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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