ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

Terrorism テロ

[エピローグ篇:ハッセルト] 馴れ合い政治  調査追求ジャーナリストの役割

13世紀ハッセルト。堀をめぐらした砦が分かる。左右は欧州一の広さと言う日本庭園。姉妹都市・伊丹市の寄贈らしい。
hasselt met Japansetuin


ブリュッセルの中央P委員会がどうやら地方に丸め込まれたらしい。警察(Politie)組織の不正を審査する委員会は法務大臣管轄である筈。Hazodi警察の腐敗について証拠付きの訴えを受けた委員会が地方裁判所の判決待ちで動かなかった…。

こうした国の(治安維持に限らぬが)組織の働きぶりをチェックする機関が日本にもある筈。ベルギー連邦Hazodi警察の場合、P委員会に加え、労働裁判所、州諮問委員会、腐敗防止委員会、地区警察行政長会議など分けの分からぬのが揃っている。今回、これらの何処も機能していない。言っても動かないのだから、分けが分からぬだけでなく、建前だけ揃っているんですね。

2名に罪ありとする検事をP委員会は信じたのだろうか? 調査せずに2年放置だから、P委員会と地方検事の腐敗と言うか、知り合い関係が怠慢を呼んだ…。左様なネットワークは国を問わず、役所人脈間でしょっちゅう起こっていると思わないでいられない。

鐘を打ち鳴らしたクロッケンラウダーにすれば、信用する中央のチェック機関が検事とグルになって動いているように見える。ショックを受け、打ちのめされて不思議でない。土俵際に追い詰められた2名の無実を勝ち取ることが、当面の弁護士の目標だ。イーリス・エクセルマンと言う40代だろう、苗字通りの切れる弁護人ならいいのだが...

彼女は警察関係の弁護で知られているらしく、警鐘者4名はその評判に通じていたのだろう。事務部門長のヴェテランであるフランケンは旧知だったのかも…。イーリスが考え、4名を説得したと考えるのが自然だろう。無実を勝ち取り、不正を世に知らしめる手段としてメディアを使うこと。幾つか採る弁護戦略の一つでしょう。”強欲のミスマネージメント”腐敗実態はフラームスのラジオテレビ(VRT)の時事調査番組パノラマ(Panorama) に持ち込まれるのです。

ヴェトナム戦争やニクソン政権の実態を報じたUS、それに総理の犯罪で活躍した日本の例。それぞれメディアの力はご存知の通りで、あまりにも有名。しかしメディアに騒いでもらって名を売って、弁護士商い繁盛をめざす輩は一杯います。野暮な話は取り上げられない。タイミングが良く、幸運も必要なのは世の定め…。この関門をパスしてパノラマ責任編集者とウィムを動かしたのがドシェー(資料)を揃えたエクセルマン女史の説得力である筈だ。

マルク・デュトローのケースは例外と思われる。複数の少女を誘惑、自宅秘密地下室に閉じ込め、無理強い犯して殺害を繰り返した。検察・警察とその担当部所間の縄張りや不協力のお蔭で、少女たちが消えたにも拘わらず、捜査は膠着した(北鮮の日本人拉致事件で、家族の訴えは警察の箸にも棒にも引っ掛けてもらえなかったとか…嗚呼、国が滅びる)。

これを転換させたのはメディアだった。パノラマ他メディアは当局の長期間の無能ぶりを追及、議会にデュトロー諮問委員会を立ち上げさせる。こうした犯罪とお粗末な当局に抗議するブリュッセル都心を埋め尽くした何十万人もの白いマーチをご記憶でしょうか…。デュトロー裁判は世界の耳目を集め、日本報道陣もワロニアの古都に出向いてきましたね。

ブリテンのゴシップ盗聴もメディアであるが、ここで言うメディアとは調査追求するジャーナリストを指す。刑事が捜査活動するのに比喩できる。違う点は捜査権無しで、証拠を集め、検証しなければならない。そして記事にするか、映像にして発表する作業。映像メディアは印刷メディアとやや違い、欧州各国の場合は時事番組とリンクしている。追求する時間が必要であるから、今日あった出来事をニュースとして報道するのと異なる。またエンタメ・盗聴タブロイド紙とも別世界だ。この分野は故にインヴェスティメント・ジャーナリズムと言われる。根気に加え、しばしば被疑惑側の脅し/反撃に対する勇気が必要になる。

VTRジャーナリストのファン・デン・アインデ(Wim Van den Eynde)とジャック・セーファールトは4ヶ月をかけて、黙々と調査と事実チェックを繰り返した。ウィムの低い落ち着いた声が印象的だ。彼は全ての関係者にインタヴュー申し出をする。誰にも意見を述べる機会があったということは重要な点である。

たいていの連中はそわそわとなって、上ずる感じなのだ。インタヴューに応え映像に紹介される人々のさまざまな立場が浮き上がるのは勿論だが、そそくさと申し出を断る経緯もまた事実追求のきっかけなる。

パノラマは休暇期間を終えた最初のドキュメントとして、火曜日10月6日20時から異例に長い50分ドキュメンタリーを放映。関係者へインタヴュー依頼するウィム個人の電話中の姿とその会話内容、療養するアニタを除く3名告発人とその証言、更に市長/検事/他関係者による言動公開フィルムと弁護士イーリス証言との突合せ検証場面、、、


チェス盤の駒の動きを登場人物の動きに連想させるイメージを挟みながら、ドブにつかる組織の異臭を視聴者にふんぷんと匂わせる。それは一つの地域において名士たちが互いに熟知しあい、よそ者に物言わぬ閉鎖性の世界でもある。同時にステフ・ステーファールが地域議会を"アルタナティブ社会党"過半数で占めてから続いている"左=リンクス"政治の暗闇なのだ。

放映直後からフラームス語のソーシャルネットワークが俄然やかましくなった。翌7日、新聞見出しトップも他テレビラジオの全メディアがこれを報じる。新フラームス同盟党ドフロート(Degroote) 議員が2年間いかなる調査もしなかったP委員会を査問する議会委員会を招集したいと声明。同時に告発人を訴訟したが、有給休暇採りや保険詐欺をした警察コミッショナーを訴訟しない地方検事の矛盾と「出鱈目の告発4名の口封じをする」と言う時代錯誤的言動を指摘。

Lamon,Claes en Rubens


同じ日、Reyers Laatと言う23時TVトークショーに市長と任命されたばかりの新ヘッドコミッショナーが出て、インタヴューを受けた。市長クラースはまだパノラマ放映を見ていないと断りながら次のように公言:

ドキュメントは一方的に作られているようだ。既に私は新コミッショナーと組織再生作業に入っている。4人の配置転換は嫌がらせを終わらせる誠心誠意の私の気持ちだ(ヴェラは倉庫のような一人ぽっち部屋。アンマリーは廊下の隅机)。昨年9月の検事告訴に対応して、不正行為をした2名の戒告停職処分をしたのは正当な措置である。(1年以上の自宅謹慎処置を受けている)告発人へ謝る理由は全くない。

警察の弁護士であるヒューゴ・ラーモンの「ジャーナリストは裁判官でない」、槍玉に上った検事ルーベンスの「ドキュメントは一方的でまだプロのレヴェルに達していない」と言う批判が記事にでる。彼らはデュトロー事件を忘れているのだろう。臭いものに蓋をしたい側の”強がり”か…。ファン・デン・アインデのひと言「二人は冗談言ってるんでしょ」の反応が記事に付される。

金曜9日、パノラマドキュメントを見たヒルデ・クラースは7日夜のトークショー言辞を180度返す。前任者から引き継いだドシェー(資料)に充分に対応してこなかったかも知れない。だとしたら4名に謝ると声明。するとすぐさまN-VAとVB(フラームス優先)野党議員たちブログに「なんと傲慢な、ヒルデは知っていて何もしなかった」と辛辣な批判が書かれる。

日曜11日、地方裁判所の2名への完全無罪判決が出る。裁判所の前は報道陣であふれ、本人2名を代行して判決を受けた弁護士エクセルマンが笑みを浮かべて応えている「裁判は私たちの声を聞いてくれた。公正が示された。これが腐敗の告発を始めるスタート点です」。マイクの束に追われるラーモンは判決を受け止めると言い、上告するかどうかは地方検察の検討/判断に帰すると不在のルーベンスに下駄を預けた。地方検事の惨めな敗北とモラルの失墜は明らかだ。

Vrijgesproken


10月13日議会に於ける法務大臣解答。連邦政府の新政権成立手前のため、仮大臣(と言えど前期から4年以上務める)Stefaan De Clerck(クレルク)が四党の質問に応えたもの。

P委員会のハッセルト事件への関与について議会調査助言委員会を開く。
2. 鐘突き人=内部告発者に対する明確な法整備を行う。既に複数党の提案が出ている。

ハッセルトのクロッケン・ラウダース2名無罪判決に対する検察上告をしない。
4. 1月に150頁hazodi腐敗資料が検事ルーベンス扱いになっている。彼自身が深く絡んでいる故に、これを検事総長Yves Liégeois(リーフォーイス)に移管する。

ルーベンス自身の停職処分の可能性や他機関の進める今後の関係者処分について、クレルクは明言を避けた。だが、これで連邦政府責任閣僚の基本方針が出たわけ。警鐘者の意図が本元に伝わったと言うこと。これに従って、かなりの数になる地方行政機関と各種団体(委員会)が調査に取り掛かり、作業を進めていると思われる。ブリテン・フォーンハッキングと同様な長い時間が掛かるでしょう。

12月8日に当座の使い込み金額調査結果が出る。半分の額が警鐘者4名中の3名によって違法受領されたと言う報道がでた。弁護人イリースがすぐに、被・告発側の仕掛けた罠/嫌がらせだと、侮辱と名誉毀損の理由で訴えている。

告発された"名士たち”はあらゆる手段で4名をいじめるだろう。今後小さないざこざが続くだろう。4名の職場復帰がどうなるか? 停職あるいは辞めざるを得ず、自宅謹慎/療法期間の損害賠償がどうなるか? ベルギーの法整備とハッセルト界隈のクロックラウダー事件の実際処理はこれから始る。

ヒルデ・クラースと言うオバサンは事実に突っ込まず、力のある古参同郷人に踊らされていたマリオネットだった。オドオドその場限りの対応に終止した彼女の今後、例えば次選挙での市民判断が興味深い。土地の馴染みは良心の公正や正義より遥かに強い。ヒルデの2期目継投は多いに有り得るだろう。あるいは追求調査過程で、知らなかったと言う言明の嘘が明らかになったりすると、辞職せざるをえない状態もありえよう。

当分ハッセルト界隈に石工職人組合の亡霊がさまようのかも知れない。
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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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