ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

Nostalgic Melody&Film 懐メロ&フィルム

忘れな草(2) 聖母たちの傍らに咲くアンジェリカたち

左:Vergiss-mein-nicht 副花冠から出る白い放射状がモジャモジャする例。この科属仲間のごわモジャごわモジャのしるしなのかも知れません。
Vergiss mine nicht  unt Archangelica
右:Angelica archangelica(英語風でアンジェリカ・アルクアンジェリカ)  

草花Vergiss-mein-nicht(フェルフィス・マイン・ニヒト)はムラサキ科と呼ばれ綺麗に響く。実際は「ごわごわ毛で覆われた葉っぱや茎」 の仲間が多く、ラテン科名からもそんな印象を受ける。左画像:灰色毛をご覧あれ。だから、清楚で純情な歌の気分を裏切っているとも言える。ボラーゴとか キューリ草と言われるサラダ用雑草もこの仲間です。キューリ草の青紫は「聖母の青」と言われ、彼女を象徴する青い衣服の染料になっ た。[2011-11-07参照:少女・乙女・処女 フィンカ・マヨールの聖母信仰…]

右画像はAngelica archangelicaはアンジェリカ属こと和名でシシウド属と名付けられ、これもコーラスグループのイメージと離れている。食い甲斐のある野菜になる と言われる。試すと非常に苦かった!お陀仏にならないように、上手に料理法を開発しなければいけません。アンジェリカ・アルクアンジェリカと重なって いるのは、この属で馬鹿でかい種類と言う意味でしょう。大きくなり、写真のアンジェリカは2mを悠に越す。和名が"オオシシウド"や"オオウド"なら納得 なんですが、もっと洒落た別名や方言だと思います(すみません、日本に自生しているのでしょうか?)。

アルクは偉大と言うことで、アークビショップ=大司教と同じ接頭辞ですから"大天使"。マリアに受胎を告げるのはこのアルクアンジェリカですね。20世紀 前これらの草花がエルサレムに生えていたかどうか? まだそんな記述を探したことがなく分かりません。しかしその後の世紀を通じて、ワスレナグサ仲間と共 にアンジェリカたちも聖母たちの祭られる路傍に自生し続けてきました。


いつの世もいつの世も 別れる人と
   会う人の 会う人の
     運命(さだめ)は常にあるものを
      ただ泣きぬれて浜辺に摘んだ
        忘れな草をあなたに あなたに

       1964年 作詞:木下龍太郎 / 作曲:江口浩司

日本の浜辺に摘んだ勿忘草はどんなワスレナグ種なのだろうか? 塩っけと砂地の浜辺で育たないと思われる。けれども(市場を占有する欧州園芸種が庭から 逃げ出し、海岸近くの畑付近に着庄すると、肥えた土壌なので塩含みに勝って育つに違いない。前回の雹にもめげず咲く例で分かるように、忘れな草仲間たちは寒さに強 い。すると多少の塩味にさえたじろがないのでは…と思う。

北海道と長野県に自生する勿忘草があるらしい。北海道に因み、エゾムラサキと物知りは呼ぶそうだ。学名記述を調べてみると、意外にも欧州中央に生えている‘森ワスレナグサ‘と同じなので驚く。厳密に遺伝子並びなど比較すると違うのではないか…と想像だけしてみる。詳しい研究レポに疎いので分からない。

辺境の西欧州と日本列島にもしも同じワスレナグサ種があるなら、隔離分布と言うこと。だが、種名の後に続く変種またはさらに下位ヴァリアントになるのではと私は思う。この自生ワスレナグサを目にする機会は園芸種(アルペン裾野域のワスレナグらしい)より遙かに少ない筈だ。

木下の詩は、そんな屁理屈と違い、1番と異なる歌詞と、その状況設定のために選ばれた語彙と言う気がする。摘める場所は野原/草原、川面/堤などあるけれど、選ばれた語句は浜辺だった…。

「二木紘三(フタツギコウゾウ)の歌物語」を主催される二木さんが「浜辺の歌」で名"蛇足"を加えられている。大正初期に林古渓自らが補釈した「作曲用試作」の詩作であると。あまりにも有名なので、木下の無意識の下敷きだったかも知れぬ。

江口浩司と言う作曲家はきっとこの作曲によって知られ、のちのキャリアーを作り活躍した人なのだろう。作曲家と言うのは詩(ウタ)を読み、さてどうしてメ ロディーを発想するのだろう。凡人ゆえ月並みなほめ言葉しかないけれど、江口の曲は見事ですね。驚くべき才能かつ作業と私には思われる。歌の調べ、旋律と 言うのだろうか? いかなるオタマジャクシも出てこない不精な輩にとって不思議でならない。

とは言え多少の類推をしてみる。樹木の細工を普段する過程で、初めのアイディア・スケッチから幾つかのコンセプトを展開して、それらを実際に作ってみる。 立体になった時、更に働き(機能)と美しさ(好み)、そして全体との整合性を見つつ仕上げてゆく(数を作る場合は量産性やコスト、時に素材選択すら勘定に 入れますが)。そうして仮に三つ出きると、しばらく遊ばせて眺める。やがてこれだと言う一つが決まる…。左様な創意工夫の過程は曲作りにもあるのではなか ろうか。

江口と木下の作品が出きると、歌い手が決まる。学校唱歌でないレコード化する商い世界はそうですね。両名は既にコーラス・グループ、ヴォーチェ・アンジェ リカを知っていて、彼女達をイメージして作ると言う場合もあるのでは。出来ているのをふさわしい歌い手に与える場合もあり得るでしょうが、前者の場合、作詞作曲過程に歌い手の個性と少なからぬ相互作用があって興味深い。

忘れな草の旧名の一つは"ネズミの耳花"と言うギリシャ名。葉っぱの形からそう呼ぶ草花の一つですが、薬効との絡みで、どの草花かを特定できたと思います。忘れな草をあなたにを歌った天使の歌声即ちヴォーチェ・アンジェリカの後者は天使の女性形だと思います。

天使に男女がいるのも面白い。数世紀がかりのヴァチカン聖堂を仕上げた建築家はミケルアンジェロですから、アンジェロは男で、アンジェリカは女なんです ね。そんなわけで、ドイツ連邦宰相のオリジナル名もこれの筈デスが、綴りから仮名はアンゲラです。立派な業績を残した同名の聖職女性(尼僧)に聖人を被せる例があるようです。天使と聖人とのコンビで語彙矛盾と言うか、徒然なる言の葉も妙ですな。
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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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