ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

Nature 雑草 フローラ/ファウナ

ニワトコとライラック [ロミー・シュナイダー序章から二つ目の章]

日本のニワトコは‘欧州の赤実ニワトコ=Sambucus racemosa)‘に属する一つだ。映画「白いニワトコがまた咲く頃」の白いニワトコはそれより広範にみられる‘黒実ニワトコ=Sambucus nigra‘の公算が大きい。 世界に数あるニワトコ仲間の欧州代表になる。日本のニワトコの母種とされる赤実ニワトコとの目立つ違いは花序(花の付く様子)即ち果実の付き方だろう。

Sumbcus nigra Corrage 01


日本ニワトコの果熟期を知らない。その母種である赤実ニワトコ果実の集まりは葡萄の房に似ている。黒実の方は、逆円錐形の白い花から類推できるように、熟して重みで垂れると底広がりになる。いずれも6~7月に純白の花を咲かせる。夏休みに入る前のシント・ヤン(=セイント・ジョン)祭に、小麦粉生地にどっぷりと浸けたこの花をパンケーキにする。森の縁だけでなくしばしば農家納屋の傍らに植えてあるので、採取は難しくない。満開の時期のおやつになり、夏休みに入る浮き浮きした気分の花なのだ。

Wenn der weiße Flieder blüht題名の`白い`はその通りだが、上画像の説明にあるSchwarzer Holunderと言うのは`黒いニワトコ`の意味。これは学名をそのままドイツ語に置き換えたもの。一つの事物に複数の呼び名があるのは当たり前で、ニワトコを指すドイツ各地の言葉で、HolunderとFliederの二つが親分格で知られているのだろう。

Sambucus 02 Niwatoko


おまけにFlieder(フリーデル)と言う語はライラックも意味する。一つの言葉が複数の事物を意味する場合も多々ある。ライラックは独・仏のLilaをブリテン風に発音したその仮名である。ライラックと言う仮名語彙が日本に定着するのは昭和になってからと思われるが…。

日本にライラックそっくりのハシドイと言う小木が自生する。花色は紫。その知名度はいにしえに遡るらしい。まだハシドイの語源や由来を調べていない。なので私はこれを、ハシウドと勘違いしてしまう。生まれた土地のとなりに、やはりいにしえハシウド名があるためで、ハシドイの木を連想する手がかりになるような気がする。ムラサキの花樹は高貴で美しい女性を象徴するから、ハシウド⇄ハシドイであっても個人的に了解しようと思う。[note 1]
ところが20−21世紀に於いて、そのハシドイに代わり、リラやライラックが通り相場になっているのは、明治の鹿鳴館文明あたりからの悪しき習慣をひきづっているのかも知れない。

リラと言う言葉はフランスに学んだ多くの先人によって、ライラックより知られている感じがする。リラは同時に紫色を指すことも知られる。なぜならフランスでもドイツでもリラの花はまず紫であるからだ。和名の正式名称はムラサキハシドイと言うらしい…が、ややこしくて行けない。何のことはない、日本のハシドイと独仏のリラは近い縁なのだ。それぞれSyringa reticulataとSyringa vulgarisと記述される。一般にはシーリンガと言うと通じるかも知れない。

リラ即ちライラックの白いタイプが存在する。ライラック野生種の色変わりと言われるが、突然変異でアルビノ即ち白花が出たのではなく、白みがかりのものを選抜改良した作出種と思われる。Syringa vulgaris `alba`のように書かれ、括弧``内に幾つか異なる固有名詞が収まる。この白いライラックこそがロミーとマグダが娘母を演じた映画「Wenn der weiße Flieder blüht」の花だろうか? (映画キャスト名にローズマリーとマグダレーナの本名が出ている筈)

Balkan Syringa vilgaris  Collage 01


リラ即ちハシドイの開花期は4~5月だから、映画を仔細に見た人ならば、判断できるのではないか。園芸種で8月あたり咲くのもあるそうだ。母テレーゼと娘イヴィーが白い花と共に夏姿であれば、ニワトコに成ろう。4~5月は春だが、60年前に温暖化は顕著でなく、夏の気温まで上がらないので、夏の衣装にならないだろう。つまり春のコステュームならライラックと言う推量をしてみる。



15才のロミーは一寸見では、可愛いけれども整った美しい顔立ちではない。個人的意見と好みだ、しかし同感する方も多いと思う。その後のスターダムへの映画幾つかをTV放映で見た。私の印象はファニーフェイスに近い。それが彼女の持ち役、字名にすらなったシシー役にピッタリだったのだ。現実の”バイエルンはヴィッテルスバッハ家傍系”エリザベートの少女時代のお茶目に重なったと想像される。

ニワトコあるいはライラックの花が咲く頃、この映画の主題歌が映画以上にヒットしている。欧州戦後しばらくしての、明るいメロディーとして受け入れられたようだ。日本でも熟年・高齢の方々なら口ずさまれるのではないか…。ロミー三つ目の章として書いてみよう。


【Note】;
1. ハシウドは実在の女性名。彼女は聖徳太子の産みの母らしく、いっとき現在の京都府京丹後市のタイザと言う村に滞在したと言う。タイザを漢字で間人とするのだが、別読みがハシウドなのだ。つまりハシウド皇后と言う分け。当時、民が高貴な人物をその正式名で呼ぶのは無礼になったらしい。そこで始め手をかえ品を変え呼んでいたと思われるが、彼女が退座した時、そのタイザを間人すなわちハシウドの読みにしたのだと言われる。持って回った屁理屈に聞こえる。だが、そうでもしなければ間人をタイザと読ませる分けにいくまい…。
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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

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