ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

Miscellaneous Human History 雑史/外伝

美しいヴュルツブルクからの旅立ち  [別れの三] 

マイン川はライン支流のひとつ。ドイツに源流を発する国内河川としてモーゼル等に並ぶ。モーゼルは西から東に流れコブレンツに河口を開く。マインは東から西に流れる珍しい例で、マインツに河口を開く。マイン沿いの町や村にはam Mainが付き、例えばフランクフルト・アン・マイン、マインツ・アン・マイン、ヴュルツベルク・アン・マインなどは要所で知られる。ジグザグに蛇行するマインに連なるワイン名所やバイエルンの歴史を語る小さな町や村を訪ねてみたい。遊覧船マイン2週間の旅、そう言うのだと気楽でいい…。

Wrtzburg 04
schönen Würzburg / 美しいヴュルツブルク

Würzburgはバイエルン州でミューヘン・ニュールンベルクに継ぐ三番手の大都市なそうな。1942年この街の最終的ユダヤ人狩りが行われた。それから1945年4~5月までユダヤ人は居なかったとされる。それまでに数度行われ、残っていたのが2500名余らしく、自宅や街角で捕えられヴュルツブルクの駅へ数珠つなぎに歩かされた。そこから南のダッハウ等の強制収容所へ列車輸送されるのである。

このオペレーションに責任を持つ親衛隊とゲシュタポ(Gestapo=秘密国家警察)は写真を添えて記録を取っている。写真に添え書きをゲシュタポ担当者が残している。

"Auszug der Kinder Israels aus dem schönen Würzburg![彼等の歩く列を見ていると]``イスラエルの子供たちが美しいヴュルツブルクの町から出てゆくエクゾドスに思える``その後に. " … muß i denn, muß i denn zum Städtele hinaus …"と言うシュヴァ―ベン民謡歌詞を正確に書き足している。

日本語へ意訳された歌詞が幾つかある。ネットで見つけた出だし部分の日本語歌詞は「理由合って出て往かねばならない、この街から旅立たねばならない」と言う「ねばならない」と言う悲痛さを直接に表していない。理由はバイト数半分の言語を原文通りに逐語訳すると、どうしても長くなり過ぎメロディーに合わないからだ。[日本語への移し替えに於ける止むを得ない欠点だが、また長所にもなり得る] その一つの歌詞は作者は夏目利江で、下記の内容。

   さらばさらば 我がふるさと  
      ふるさと遠く 旅ゆく  さらばさらば 
         我がふるさと ふるさと遠く 旅ゆく  
            いざ共にぞ忍べ しばしの別れ 
               さらばさらば 我がふるさ
                   ふるさと 今別れゆく  

故郷を去らねばならないから、余計に別れの情が高ぶる。恋人と別れる辛さが胸にジンとくる。そう言う主題だから、巧みに詠った元歌と言わねばならない。でもチャンと救いは用意されていて、修業を果たした暁に彼は故郷に帰ってこられるのです。それは原詩の2/3番に暗示されている。

私が…しなければならない→muß ich、この構文が当時のユダヤ人宿命に合致する。1933~1945年の期間に替え歌になった核心がここにあるのではないか。普通のドイツ市民として暮らしていた人々が、ある日突然、家/職業/財産/学業、、すべてを剥奪された。ユダヤ人と言う理由で。逃れられない非情なのだ。原詩のムシデンを「強制収容所へ行かねばならない」と歌うのである。 

Wrtzburg Collage 01

Exodusと言う語彙は旧約聖書にある出来事。ご存知のように、奴隷から解放されたイスラエルの民をエジプトから脱出させるモーゼの物語。紅海を超えてイスラエルの地に向かう自由を得た人々を、秘密警察官は連行され収容所にぶち込まれる元ヴュルツブルク市民に重ねているのである。同じイスラエルの民であるが、奴隷からの自由と自由を剥奪された強制収容との落差は大きい。

添え書き者の意図をどう読むか? 研究者の記述を間接に紹介した数行であるから分からない。あるいはヴュルツブルク駅へ歩くユダヤ人たちがナチ党の非情に対し痛切な怒りを込めて歌ったのかもしれない;故郷を出て行かねば、出て行かねば、と。ドイツ人なら誰でも知る民謡の歌詞だから、出エジプト記の聖書場面と、美しい街と別れなければならないユダヤ市民とを重複連想させた。ただの連想にすぎないとしても、歴史の符号が合いすぎる…。
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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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