ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

Nature 雑草 フローラ/ファウナ

帰化種と二重・多重国籍草

Erophila verna 001-1 姫ナズナ 畑の堆肥

白い原っぱ。 パット見だと、霜がうっすらのようにも見える。あるいはヤナギやポプラの綿毛が風に吹かれて広がっている…。先日の暖かい三月末の光景だから、いずれもそぐわない。遠くから歩いてきて、何だろうと訝った。路傍から畑に踏み込んで、かがんで見て初めて分かった。Frühlings(独)Vroegeling(蘭)と言う雑草だった。春早く咲くので「早咲っ子」と言う感じで呼ばれる。和名を探した時、ナヅナの前にヒメを付けると分かり、意外に思った。アブラナ科の花からか? 似ているようで似ていない…そう私は思う。

Lamium purpureum 002-1 ヒメオドリコソウ(姫踊り子草  堆肥

紫の花が遠くまで一面に見える。この耕作地一角も「早咲っ子」と同じように、一つの雑草で覆われている。欧州の典型的な春を告げる雑草たちの二つ。それぞれ他の雑草は見られない。作物収穫後に耕され、そしてそれぞれの種がまかれた結果である。まもなくこれらの雑草地が耕され、計画農作物が播種(ハシュ)される。すると雑草それぞれの持ち味と言うか、それら農作物の生長促進に役立つ成分を持つ雑草が選ばれているのではないだろうか。

耕作地=畑は春になると、耕される。昔は農夫/婦が人力とクワ、そして牛馬によって行った。欧州では機械≒トラクターで耕される。最近、大型機械を要するローン農耕企業が請負う傾向にある。もはや農家それぞれが自分のトラクターで土地を掘り起こすことは少なくなりつつある。多種多様なマシンを備え、耕作からタネ巻き、収穫まで請け負う企業に依頼するのが効率良い。

農家は人手から機械に成り、徐々に大規模になってきている。中途半端な耕作面積や機械化では、経営効率が悪く、立ちいかなくなっている。農家の主は肉体労働者と同時に農業専門知識の実施者でなければならず、実体験と農作業ソフトウェアーの総合力に従う経営者になりつつあるのでは…。

耕される広い耕作地は冬の間に、特定の植物を育成している。その植物は春の来るころに枯れても枯れなくても、そのまま耕される。そして次に植えられる穀物や野菜の堆肥となる。耕地を豊かな土壌として、維持するのは農家の基本なのだが、一方で冬場も栽培成長中もモノカルチャーにならざるを得ない。

大規模な一つの作物への集中、一種の家畜への集中をメガ・モノカルチャーと言うそうだ。大量集中工場生産と同じ効率的な生産性が至上目的だから、自然及び環境に与えるマイナス面が大きい。一昔前、数十年前、麦畑や野菜畑の合い間に出てきた雑草の類はもはや生存の機会を奪われつつあるらしい。作物成長の障害物を取り除く徹底的な努力が採られるから、それらの土壌で生きていた菌類や土中生物が消滅するらしい。同時にそれら植物を食草とする昆虫が生存できなくなる。

Lamium purpureum  004 Collage ヒメナズナとヒメオドリコソウ
画像説明はヒメ「ナズナ」表記。「夏無し」由来説に従うと「ナヅナ」になる。

白と紫の原っぱの近接画像。農作物の収穫後から次期播種までの準備期間で、早春に開花する雑草の例。上の画像から推理されるように、ヒメナズナ4枚花弁の直系は5㎜に満たない。笠をかぶった踊り子が並んだように見えるオドリコソウの小型版のヒメオドリコ草もさして目立つサイズでない。

そこで行政(市町村)は観光資源にもなる放牧・耕作地の風景作りのために、農家と相談し合い、より大きな美しい花を持つ堆肥植物のベルト地帯を奨励したりする。ヒメナヅナやヒメオドリコソウでは誰も美しいと思わぬ。その代り、地中海近辺の自生種や遠く南米や極東の派手な栽培植物の種まきをする。見事に成功する例も多く、沢山のウォーカーの眼を楽しませる。

ところがこれには地元フローラ愛好家や生物専門家が異議を唱える。時に思わぬ異国の花々が勢力を伸ばし、本来の植生を混乱させたり、あるいは同種を圧迫する弊害が生れる可能性があるからだ。


Erophila verna 001-3 Collage met Geldersetasje

ヒメナヅナ名は日本古来の春の七草・ナヅナからの借用。ナヅナは別名ペンペン草と言われ、右の3㎜ばかしの花が受粉すると逆三角形の袋のような実を沢山つける。果実が女性の持つハンドバックや財布のように見えるので、我が村では「フェーデルランド地方の小さなバック」と呼ぶ。コイン入れのような名称が諸語に多いのは流れ星を見た羊飼い三名が財布の底をたたいて、聖母マリアとその子を祝った物語から。分類命名者(リンナエウス等)も果実形から連想し、キリスト教者なら自然な共通イメージだろう。

ナヅナの葉っぱを古代庶民は日常ヴィタミン野菜として、平安期の宮人は御飯と混ぜて食べる菜採として食文化の雅を観た。植民地合戦の欧州諸民族は食い気より、銭(ゼニ)気が優先し、あらためて学/種名Capsella bursa-pastorisに付いている`財布`を見直したかもしれない。

ヒメナヅナ左画像の一番上の花は受粉をして、子房が大きくなっているようだ。さらに進むと内部の種子を宿す鞘状になる。ヒメナヅナはこうして一年に何度も世代交代を繰り返す。日本帰化は江戸期か? 東インド組合会社の船荷詰め物である乾燥植物に混ざった種子からかもしれない。

その名前元のナズナは古く、古代における穀物伝来絡みで大陸から渡来した雑草らしい。つまり、いずれも帰化種なのだ。彼らはユーラシア様々な土地との多重国籍草と言えるのでは。


Lamium purpureum 02 Collage オドリコソウホトケノザ

ヒメオドリコソウもオドリコソウの小型版として和名をもらっている。左の白い花が(欧州基本種)オドリコソウ。日本のオドリコソウは基本種とやや違うらしい。私には比較できることが出来ないうえ、恐らく難しすぎる。だから同じオドリコソウとしておこう。

有名な`仏の座`と言う雑草もご覧のとおり、ヒメオドリコソウと同じ紫色で同じ口唇型と言われる花を持っている。これら三つは兄弟姉妹で極めて近い関係、現在は三つとも南北の半球に広がる。元々欧州~西ユーラシア自生種と聞いたけれども、地球上の隅々で帰化している古手だと言う。日本へは明治時代の帰化種、とどこかで書かれているのを見た。ほんとなら意外に新しい。

白い原っぱは滅多にないと思われる。「春の早咲っ子」草の後に、何が植えられるのか? またシソ科ヒメオドリコ草の大群は日本各地でも見られると思う。ひょっとすると、いずれも日本の作物に既に役立っているかもしれない。趣味の畑をする隣人に聞くと、これら一風変わった雑草は連作を避け、異なる今年の植えつけ作物のためではないかと言う。 素人の私には作付後にもう一度、さらに来年、足を運び確認すると納得できるだろう。


[蛇足]
「帰化種と二重・多重国籍草」題名は帰化人と二重または多重国籍者をイメージ。日本国家は、20才以上で日本国籍を持つ個人に複数国籍を認めていない。これは国際的に、珍しい。殆どの先進国は複数国籍を認め、それらの旧植民地諸国はそれを見習っている。個人の法的実在証明としての国籍は一つであるべき、と言う主張を日本はしている…と解釈される。
私はこの論理を支持する。そして人間以外の生物にたいしては正反対の立場に近い。いつか国籍論、複数国籍の問題を取り上げてみたいと言う気持ちが本題名に出た次第。
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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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