ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

Ordinary People 雑人雑名

共和国と言う嘘っぱち共和国

シリアは正式に「シリア・アラブ共和国」と訳されるそうだ。絶対者や君主をもたず、人々が選挙を通じてリーダーを選ぶ`共に和する`国と言うこと。史上の初例は、宗主国スペインから独立せむとするオラニェ・ナッソウ家を統領とする`リパブリック`である。それは1588年エリザベス1世が130余軍船からなるフェリーペ二世艦隊`アルマダ`を撃破した時代変わりをも意味する。又オリーヴァ-・クロムウェルが(冬女王エリザベスの弟)チャールズをスコットランドに追いだした(1645)後の共和制も指す。別の言葉で言うと、議会が絶対権威である国王に代わって政治を主催する政体である。

バッシャード・アル・アッサドは非常事態法を常に維持したまま、大統領に`選出`された。ホセニ・ムバラクも、アレクサンドル・ルカシェンコ(ベラルーシ)等も同じ手口で大統領であり続けた。かたわら彼の一族/取り巻きは忠実なる秘密警察や親衛軍隊を用い反政府組織/個人・デモを取締り、獄舎にぶち込んだ。彼らの牛耳る国家は`共和国`を名乗るために、選出された形を整え「大統領」に治まる。共和制と言う嘘っぱちの``共和国``をでっち上げ、大統領とは名ばかりの独裁者である/であった。

SNCはシリア民族評議会、NTCは(リビア)民族政権移管評議会。いずれもアラビア語表記を英語頭文字にしたもの。一連のアラブ蜂起に於ける反政府団体の呼称は概ねこんな感じになる。パリにおけるSNC設立も、現地の国内全域民主化運動も既に1年を経過した。シリア領土は実質上、内戦状態に入っている。なりゆきはベンガジ反政府組織NTCの歩みに多かれ少なかれ重なっている。

‘少なかれ‘の部分と言うのは、NTCが立ち上げから終いまで一枚岩だったことに対し、SNCは複数グループの離合集散で、全くまとまっていない点。昨年11月ソルボンヌ大学社会学教授ブルタン・ガリオリンが3ヵ月間の議長職に付いたが、まとまらず/まとめられず…。かつてシリアから欧州諸国に亡命した人々がそれぞれ作る反政府組織で、それぞれがまた現地戦闘グループと連携したり/しなかったり…、つまり一つのまとまりある反政府組織として機能していない弱点。

先月半ばからの国連(UN)特使コーヒ・アナンの5ヵ条平和プランが今月初めのイスタンブール`シリアの友達`会議で採択され、同時にタケノコの如し反政府グループ再結集がうたわれ、シリア国境外にチリジリバラバラに展開する`自由シリア軍`への給与支払い決議が決まった。自由シリア軍は政府軍からの脱走兵を中心にして、リビア革命と同じ軍人でないヴォランティアで構成される、軽武装集団。彼らはデモ活動に加わり、殆どが家族親戚兄弟姉妹を政府軍に殺された人々。

Sylya Collage 01のコピー

イスタンブールの国際会議に出席したのは現シリア政権の大統領を`独裁者`と見なし、それゆえに退陣すべきとする外交姿勢を採る国々。UN(国連)とEU諸国、US(米)、UK(英国)に加え、トルコ/アラブリーグ/など大多数を占める。これの対抗勢力はシリアに軍港を借り、年間500億ユーロ以上の武器輸出のロシア連邦。そして似たり寄ったりの理由と歴史的友好関係を保つ支那とイランである。北鮮もシリア支持だ。一言で言うと、ならず者の国家グループ。

例えばヒラリー・クリントンは「同胞を殺害するアッサドは国際人権法に照らし罪人である。即刻退陣すべき」と演説。同趣旨を韓国の国連総長バン・キ―・ムーンも声明。ブリテンとフランス外相ウィリアム・ヘーグとアラン・ジュペ―は現政権に代わるSNC将来の選挙による民主政権になるようにバックアップすると足並みをそろえている。

これらは外交上の口上である。実質上の武器供与も軍事圧力も彼らは採らない。リビアの長丁場の軍事支出に音を上げたからだ。自由シリア軍は常にアッサドお抱え精鋭軍に匹敵する武器供与だけを望んでいる。しかしアルカイダなどの手に渡る危険を回避すると言う理由でEU≒NATOも一切の武器援助をしない方針だ。手っ取り早く言うと、彼らは口だけの綺麗ごとを並べ、実際の軍事的行動は何もしない。することはシリア経済封鎖と、例えばアッサド自身と妻、近い親戚などの欧州資産を凍結し、同時に彼らの欧州旅行(≒EUへの入国)禁止措置を採ったこと。

一方「シリアの友達」会議主催のトルコはもう長い間、ナトー加盟国である。アラブ諸国の敵・イスラエルと共同軍事演習をするほど「欧州国家」であって、シリアに対して大胆な外交圧力をかけている。しかもシリア北部の長い国境線に沿って、急膨張するシリア難民テントを増加設営中である。

宰相レジェップ・エルドアンはリビア紛争時と同じ厳しい非難をアッサド一味に発している。彼のトルコ三軍と海上警察(のような組織)の総合軍事力はEU≒NATO中で英仏に次ぐ第3番目である。イージス艦も購入予定だそうで、欧州きっての大軍事国家になっている。このトルコがアラブ圏で存在感を示しつつあるのが21世紀の新しい中近東情勢だと言うこと。死に絶えるあのオスマントルコ…、と言えど土地だけの継承者で、思想的に直接に繋がらない現トルコ共和国の動静に今後注目しなければならない。内国に多くの矛盾を抱えつつ、半ばアジア半ば欧州に属するトルコは今、陽の上がる新興勢力に成りつつある。

このトルコに対峙するのがアラブ圏諸国。例えば内戦で揺れるバーレン、イェメン。サウディアラビアですら、潜在的な蜂起を抱えている。100%欧州政策に呼応するのはアラブ首長国のカタールやドバイだろう。カタールの君主親族はフィリピンやバングラディシュ/インドなどの労働者を迎え、彼ら自身は左団扇で、民主主義を唱えている。石油資源に恵まれ、働かずして同胞が資産形成できるお伽話の現実に享受するミニ国家群だ。アルジャジーラと言うサテライトTVはカタールの言わば国家経営組織と思われる。

中でもカタールほど、リビア革命のさ中、具体的な武器援助を陸続きで行った国はない。非常に英米仏よりだ。トヨタのランドクルーザーを改装して、機関銃を備えつけ、一大隊分をリビア・ベンガジに供給したのはカタールだと言われる。さもなくば、他の諸国を想像することが私に出来ない。 

シリア政権の今採れる唯一の手段は、コーヒ・アナンがいかなる綺麗ごとを並べようが、「殺すか殺されるか」だ。5つの平和プランの受諾は表向きに過ぎず、本音は時間稼げをして、反政府軍とそのシンパを殺せるだけ殺し続けることだ。そうしなければ、アッサド一味を待っているのはガダフィーのリビア崩壊と同じ筋書なのだから…。





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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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