ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

Hacking, Spy and Battle of secuarity

国家の舵取り それとも 商いか :「トニー・ブレアの弁明それとも正当主張」

アンソニー・チャールズなんて言う名前をきくと、アントン・カーレルも独蘭系にぎょうさんあるだろうな~とつまらないことを思う。そんな名前なら保守的な、日曜に教会に行く地方の名士に似合う。新教よりも旧教を信じ、何事も秩序良く収めている。宗教を信じる…そんなことは最早あり得ないのだ。キリスト教社会のなれの果てである現代だからこそ、その最も心地よいグループに所属することが肝要。アンソニー・チャールズはスコットランドとイングランドそれにまあウェールズも含める王様連合国家の最長政権の首相を務めた。

あざなの方が通り良い。トニー・ブレアと言う。法律家だった親父はエディンバラの名士で、土地の伝統である旧教家族だったのは言うまでもない。スコットランドは盟友フランスと常に徒党を組み、イングランドに対抗した。南のイングランドに行くより、短い海道をぬけてカレーあたりに上陸すれば、そこはもう旧教に満たされている。若いトニーが親父に反するように、長髪を振り振りロックグループで歌を歌い、数年フランスに暮らしたのも、多少の分けありだったかもしれない。

Leverson Inquire 01

今週はじめ、リヴァーソン公聴調査委員会に、彼が出席した。電話盗聴スキャンダルは昨年6月末に、殺害された少女ミリー・ドーラ―の携帯記録の改竄を契機にして一挙に波紋を広めた。ルパート・マードック署名入り全面謝罪広告、タブロイド紙ニュース・オブ・ザ・ワールドの廃刊など、過去に例のないすったもんだの末に設置された委員会である。下院で真っ赤になって自己弁護したデーヴィット・キャメロンが「こりゃアカン、面目に掛けて公聴会を作るぞ~」と昨年7月に決心した結果である。

成ったばかりの新首相はブライアンHリヴァーソンと言う63才を起用。Sir称号を持つから、言わば30年勤続して名誉教授資格を得たような検事ヴェテランである。ピカッと良く手入れされた剥げ頭の人で、雰囲気は穏健。日本にも名誉教授職が存在する。長年勤めあげたご苦労に贈る資格である。メディアに出てくる真面目な先生方に相応しいタイトルだ。ブライアン卿はブリテン人だから、これにニタッとユーモアが付く感じ。

タブロイド紙による警察トップ供応にジャーナリストによる捜査官買収、メディアと公衆との在り方、メディアと政治家との関係。これら3テーマのセッションに従い、それぞれ被害者または証言(加害)者を招待してきた。委員長は6名の陪席判事を補佐人として、さらに6名を法廷弁護人として指名した。

下院公聴会はウェストミンスター議事堂内の小さな部屋で行われたが、リヴァーソン聞き取り調査はウェストミンスター地下鉄駅を出た所、あの寺院向かいにあるエリザベス二世会議センターで行われている。既に警察官/被害者/ジャーナリスト等50名~、、、が委員長自身と‘検事役‘の質問に答え、証言を行っている。例えばこれまでの記事で人気俳優ヒュー・グラント(Hugh Grant)出席を扱った。

トニー・ブレア59才は1997年5月から2007年7月まで、3次の内閣の首班を務めた。労働党内閣として長期記録と思われる。彼の役目は、10年間に為した事項への質疑に対して正当防衛しつつ、政治家(首相)が持つべきメディアへの心構えを提言すること。あるいは両者間の今後の平和的共存のためだ…。

ブレアは小一時間だったか、法廷弁護士の丁寧な質問に、弁明であり、同時に正当な主張を行った。聞く人の立場によって言い訳に響き、また正義に思えるのだ。ユナイティッド・キングダムの新聞テレビは何れの語彙もあからさまにあげていないようだ。女王の国であるから、同時にQEⅡ自身のために、彼女が任命した宰相を傷つけてはならないだろう。前々任者マーガレット・サッチャーの今年の映画が連想されるが、長期の宰相であった人々はいかようであれ尊重されよう。修羅場を抜けて、国家を舵とったのだから。

2名の人物は同じ場所に座っている。右はルパート・マードック。80才を越したばかりで意気軒昂。1997年ブレアがダウニング通り10番の官邸に入って以来、労働党を支え連携してきたメディア企業のオーナー。正確に言うと、合衆国在籍ニュース・コープNCのオーナー。NCは世界各国に出先を持ち、UKはUSに次ぐ(と言えど比較にならない売上)重要市場だ。傘下の数ある新聞の統括本社ニュース・インターナショナルに、マードックは初め右腕Les Hinton…、さらに長男ジェームスと5番目の娘レベッカを配しUK部隊を維持成長させてきた。

ヒントンは1995~2007期間のNIのCEO。傘下日曜ゴシップタブロイド紙ニュース・オブ・ザ・ワールドNOWが盗聴によるセンセーショナル記事で部数を伸ばした時期。今年の公聴会と警察捜査によって同系紙サンも盗聴とIT担当官買収など、同じ違法をしていた事実が判明。NC系でないデイリー・ミラー紙を含め、多くのメディア関係者が事情聴取を受け、逮捕者が続出した。

振り返ると、私立探偵を使う盗聴が当たり前になっていた時、レベッカ「嬢」と言う感じの若い秘書がマードックの目を引いた。彼女をまず編集者に昇格させた。数年後NOWからSUN筆頭編集者に抜擢移籍。切れ者の編集者…と考えて良いのだろうか? 2007年UK統括会社NI社長としてヒントンの後を継がせる。ヒントン差配の期間にレベッカはUK組織のトップに上り詰めたわけだ。わずか10年余だから、実の娘を4人持つマードックの5人目の娘と揶揄される。

盗聴日常業務を指示する同僚と机を並べ、傘下タブロイド紙の現場を歩いたレベッカ・ブルックスがヒントンと共に盗聴を知らなかったと言うのはお伽話である。知らぬ存ぜずを公聴会や事情聴取で繰り返した。

既に10年以上前から私立探偵と彼らに盗聴を依頼した記者の逮捕が相次ぎ、UK責任者ヒントン始めNOW関係者の公聴や裁判が続いている。ヒントンはもちろん企業ぐるみの犯罪を否定、記者たちが勝手にした違法行為と主張。

次画像の上はそうした場面。若造風情のコールソンを見ると、事件は既に長期間にわたっていることがわかる。マードック系新聞の懸命なカバーが功を奏し、一般に殆ど取り上げられなかったのだ。

前列左:ヒントン、右マードック。後列左:アンディー・コールソンと思われる。右:ブルックス。
彼らの表情から7~10年前の法廷場面。コールソンとブルックスが同列同職の頃だろう。

Leverson Inquire 03
下はチャリー/レベッカのブルックス夫妻。深刻な憂鬱を抱えているとは想像できない。
先月、証拠隠滅容疑で、運転手・秘書等近い人々6名を含め、二人は訴訟された。


チャーリー・ブルックスはデーヴィッド・キャメロンと同窓。キャメロン選挙区オックスフォード・シェアーのクリスマス・パーティーなど政治イヴェントにも妻と共に出席する。妻はNIのチーフ・エグゼティブである。彼女は首相にメイルを送り、首相は地元の親しい仲間感覚で返事する。彼女のボス・マードックが官邸裏口からいつでも歓迎されたように、レベッカもインタヴューなど簡単に約束をとり、足しげく官邸に出向いている。他新聞の有力記者のインタビュー頻度と比較できないのである。

ダウニングストリートを巡るマードック資本との`親しさ`が昨年7月、公に浮上した。ブルックスの元同僚でNOW編集者コールソンが官邸首席報道官になった経緯とその1月辞任を主要テーマとして、下院公聴会質疑とその事情記事が出ると、キャメロンはウェストミンスター議会のベンチから立ち上がり、湯気を立てて弁明演説を行わねばならなかった。

一方ニュースコープNo2のヒントンはロンドンNIから転出、ウォールストリート・ジャーナル誌を出版するダウ・ジョーンズ社CEOに就任していた。キャメロンがスキャンダル徹底調査を打ち出した数日後、NI期間の責任上、ヒントンはNCすべての職を辞した。NI傘下企業群の違法行為にしらばっくれた過去の言質が問い直されるだろうから…。実際は辞任によって長年のコンビを組みマードック帝国を築いた僚友ルパートの防波堤を果たす意味がある。

それは即ちブルックスの幕が閉じられることだ。ヒントンの下でブリテン国籍者として傘下タブロイド紙を運営し、逮捕された探偵や記者たちへの補償支払いと盗聴被害者への(秘密の)賠償などをルパート長男ジェームス・マードックと共に扱ったのだから。広範な社会的スキャンダルに於いて、マードック親子に次ぐ中心人物がこれ以上、職に留まれないのは明らかだった。その辞任は彼女の正しい判断である、とキャメロンは記者発表。仲間内のバツの悪さを噛みしめたに違いない。

ジェームスはヒントンとブルックスを凌ぐ事実上のUKトップだった。NCはBSkyB(ブリティッシュ・スカイ・ブロードキャスティング)と言うテレビグループの39%筆頭株主で、ジェームスはそのマネージャーである。ブルックスの抜けたNI当面の責任者になったが、NC/NIはBSkyB 全株取得をめざし政権と交渉最中だった。

それはBBCと並立する民間企業の誕生になる。ゆえに政府の許認可事項で、メディア政策の焦点だ。ジェームス/レベッカによるキャメロン及び担当閣僚へのネゴが身内の親しい雰囲気で進んでいたが、キャメロンが湯気を立てて間もなく、BSkyB全株買収の計画放棄をNC/NIが公表。首相による買収OKと言うスキャンダルを上乗せするわけにいかない。今年に入りジェームスはBSkyB代表を辞し、ロンドンを去った。マードック帝国は旧大英帝国を傷つけ辱め、自ら身を引かねばならなかった構図に見える。

盗聴に留まらず、深刻な問題の本質が見えてきたと言うべきだろう。巨大なメディア企業が一国の政策を左右する。また国家治安のトップ人事に介入するような状態。血まみれ新聞売上競争の結果、密かな盗聴や買収/供応によって事件当事者や捜査側警察から情報入手、それをTVセンセーショナル番組と組合せる…。国家の舵取りよりも、商いが優先する。

Inquire 02
首相現職時、イラク派遣部隊の兵隊たちと。 右はリーヴァ―ソン委員会の答弁中の表情。

ブレアの在籍期間、マードックは15番目だとか20番目の閣僚だったと、当時の官邸主席報道官で元労働党員のプライスが公言する。ロンドンに豪華アパートを持ち、自家用ジェットで来るたびに、閣僚並みと言うより、もっと自由にダウニングストリ―ト10番地に出入りした。選挙キャンペーンの財政を支えたかもしれぬが、例えば対イラク戦争の国内世論操作に協力した。サダム・フセインは核兵器を装備していると言う例の‘国際常識‘雰囲気醸成をバックアップしたと言うこと。ニュースコープNCはブッシュとブレアとの両BB政権にとってメディアの要を果たしたのである。

長髪スタイルでフランス語を流暢に話すアンソニー・チャールズと言う若者が凝り固まった労働党に新風を送った。労働者の党であるから、商いする資産家の喜ぶような政策を選挙スローガンにしない。欧州の所謂`社会民主主義`のアマチャと言うか、捨てきれない保守的残滓が多くある。例えば企業の解雇(首切り)に足かせを付ける。組合スト権の尊重、基本産業の国有化…。その上に拍車をかけるのが平和ヘイワの戦争反対/核兵器反対の常套文句。

しかし彼は左の定型定番を破った。さもなければサッチャーからメイジャーへ続く保守党政権を覆せなかった。そして彼はジョージWブッシュと戦線を組んだ。もしも保守党が継続したなら、当然US+UK軍のイラク進攻に``アンソニー・チャールズ・ブレアの労働党``は連日デモを組み執拗な反対をしたに違いない。左様な`左`お決まりは日本にも染みついている。社会党/共産党と言うのは欧州社会民主主義の底にある腐ったリンゴ部分を共有している。

小ブッシュと対イラク政治戦略について膝を突き合わすブレアは労働党々首ではなかった。アングロサクソンの栄光を担う歴史的立場にいたと思われる。ブレアはブッシュと会談後のマードックを何度も迎えたと言われる。この親しい気楽さをして、後に彼はメディア王・若妻の赤ん坊の名付け親になっている。そして英国教会から抜けて旧教に改宗したそうである。そこが、信じるも信じないも、彼の今に相応しい枠組みと言うか、落ち付ける場所だったに相違ない。

イラク参戦の反対に回ったのは保守党だった。ドーヴァー向うのフランス保守党も、皮肉にも石油利権と武器輸出利権のためと、アンチ・アングロサクソン伝統とのためにイラク介入に渋った。欧州政党の左右が国内事情とそれぞれのイラク利権ゆえに、混乱して見える時期だったが、欧州政治は常にそうなのだと言えよう。

キャメロン政権の特定メディアグループへのドブ漬かりは実はブレア時代のそれを踏襲したに過ぎない。政権と言う実体にとって、必要なのは強い見方である。人々に影響を与え、その決定を左右するメディアの味方だ。労働党と保守党と言う違いはなく、政権党の宿命…。これにルパート・マードックは巧みに乗ったと言うこと。共和党/保守党あるいは民主党/労働党の政治信条はどうでも良い。商いが政権を選ぶ。政権が商いを選ぶ。


[蛇足」:
作る積りもなかった本ブログが走り出したのは、言わばこのスキャンダルのお蔭。ロンドン警視庁と言う名で推理小説などに登場するスコットランドヤードに捜査官182人のチームが設置される。Operation Weetingと呼ばれる。それより先にウエストミンスター下院の「文化・メディア・スポーツ」委員会によるマードック親子を第1回にする公聴会が持たれ、BSkyBサテライト局が連日実況中継を行った。ブレアのような大物の場合、ライブで流される。こうした実際に、野次馬根性に衝かれたんです。
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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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