ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

Nature 雑草 フローラ/ファウナ

ブラックバード/クロウタドリ 子供の世話をするのは雄か? [鳥専科その2]

ひねもす雨が降る。唐松を支える脚立の水平木に何かが見える、鳥だ。10㎝くらいの薄茶色の鳥だ。スズメに似ているが、そんな大きなスズメはいない。雀ならば、雨中に関わらず殆ど動かずじっと留まっていまい。修業中の寺小僧と言う感じ…、その位置にいることが重要なのだ。どんなに雨に叩かれようが。 

Merel 01

首下の薄茶と白のまだら模様と、その下の白っぽい部分とから、メーレルの生まれて間もない雌のように見える。孵化後の一月くらいだろうか。同時期の雄の色味を知らないので、私には雌雄の判別を付けられない。野生の鳥で、孵化後の雌雄を知るのは一般に難しいと言われる。英語名ブラックバードのように、幼い雄鳥が孵化後から黒いならば、話は簡単である。

しかし左様な単純な事実について、一般本に記述がないから困る。だからと言って専門家やマニア鳥屋さん目当ての高い本を探したり買ったりする普通の人はいないだろう。専門書には知らなくても良い難しすぎる細部が溢れていて、素人にとり判読が厄介である。ネットのウィキペディアの半分は本当で半分は怪しい。もし記述があれば、…らしいとして引用するが、メーレル幼鳥の雌雄を知る諸点についてまだ記述されていない。

一番の確かな方法は捕獲して、鶏の雛に用いられる鑑別法に従い、判断することだ。私はしかしそんなことをしない性質なので、観察しているうちに何時か分かる機会があるだろうと放っておく。一応この時点で、この小鳥は雌と仮にしておく。彼女は半時間の内、一度くらい動く。首を左右肩(?)に押し付け、羽をといたり、真っ直ぐそのままで角度を変えるのである。それ以外を除き、首を上方一定の角度に固定して動かない。幼いのに感心する忍耐ではないか。

Merel 02

5~6m手前の二重ガラスのこちら側に三脚を立てカメラを据えた。ガラスが綺麗でなく気にかかったが、鳥の注意を引いて場所替えされたくないので、そっと時々見守るだけにした。アニマルやバードのウォッチングする隠れ小屋に数度おともしたことがある。もちろん野外のブッシュブッシュである。忍耐もいるが、なんと退屈な行為かと内心ひどく疲れたことを覚えている。

小さな鳥は我が``坪庭``植込み生まれに違いない。ならばこの庭は同時に彼女の居住区である。両親にとっては、恐らく彼らの縄張りである筈。メーレルは他の仲間が縄張りに来ると、もちろん追い出す筈だ。身動きせずに留まる場所はきっと親鳥が安全で都合いい場所と考えたのだろう。

これもバード・ウォッチングだが、気楽で言わば豪勢版である。室内で、全仏テニスオープン観戦しつつ、コーヒーを飲みつつ、どう展開するかを時々見るだけである。何も起こらないかも知れない。夕闇になれば、シャワーを楽しんだ彼女は植込みの巣に帰るだけかもしれないのだから。

黒い鳥がトットットと飛び跳ねて左壁側から現れた。クチバシに獲物をくわえている。唐松の下まで飛び歩き、上を見上げている。あたかも我が子が所定の位置にきっちりいるのを確かめるように…。彼は一羽ばたきで軽く止まり木にフワッと移動。子は微動だにしない。彼女はこちらに向いたままで、父は向う向きになる。

Merel 03
これは餌をくわえた餌付け前と逆の手続きを踏む餌付け後の2ショット

この相関位置は、まだ餌付け出来ない。それを子は知っているわけである。数秒後、父鳥は両足を蹴り、中に浮き、そこで180度回転する。ジムナスティック平均台のトップ女子選手の要領。父鳥が止まり木に着地した時、彼らは同じ向きで並んでいるのである。即ち餌付け態勢が整った。子は今しばらく目を閉じたまま動かない。

Merel0885.jpg

瞬く間もなく、二匹の鳥は止まり木に向かい合う位置につく。待ちわびた子の鳴き声が聞こえるような気がしたが…。下方から大きく開かれたクチバシ内部に、上方から餌を結わえたままの親鳥の嘴が突っ込まれる。周到で確実な受け渡しである。しかし大きな白身であるから、二度に渡り、同じ動作を繰り返した。どのように餌を分け与えたのか?見えなかった。ヴィデオ撮りだったならば、スローモーションで確認できたかもしれない…。

作業を終えると、親鳥は与える前に行った逆の手続きを取り、子と逆向きになってからフワッと向う側の地上に降りた。そしてこちらに向き直り、トットッと飛び歩き、右手方向に数m移動。瞬時、聞き耳を立てるようにしていた後、草面の乱れた部分を首を左右に数度振り突っついた。すると数センチのミミズを嘴に捕えている。急ぐ風もなく、再びトットッと取って返し、同じ仕草で止まり木に上がり、同じ向き方の手続きを取り、ミミズを子に与えた。

やがて彼は、私から見える舞台から静かに姿を消した。1時間以上、私はテニスにとらわれつつ時々外を見やったが、幼い鳥は彫像のように場面に釘付けになっていた。小雨が休みなく降り続いている。父鳥は遠くで彼自身の胃を満たしているに違いない。その後、夕闇が迫る頃まで、父親鳥が餌付けに帰ってきたのは数度だと思う。ロラン・ギャロのテニスマッチが終わりTV画像を消した時、唐松支えの止まり木から小鳥の姿は消えていた。

鳥の生態記録ドキュメンタリーも多く放映される。記憶にある限り、育児つまり幼鳥に餌を与える日常作業は両親が揃って行う場合が多かった。ひねもす細い薄い水滴がおちたこの日、我が庭のメーレル/ブラックバード餌付けは雄のみによって行われたのである。上品で細身の雌は何処にいるのだろう。彼の上さんは病気で巣に臥せっているのだろうか?

人間にも母親が亡くなったり病気の場合があり得る。離婚して父親が子供の面倒を見る稀な例もあり得る。公園/住宅ねぐら型とは言え、野生の鳥で片親が死ぬ場合は頻繁に起こるだろう。その場合、子連れのまま`再婚`する鳥はいまいから、残った親鳥一匹が子の面倒を見るのだろうか? それとも悲しみに暮れる残った親は育児を放棄するかも知れない。そして若い新妻と番うかも…。あるいは何事もなかったように独りで餌付けを続けることもあり得る…。

これらは謎である。左様な日常観察をする人がいるかも知れない。するとどこかに報告されていよう。それはきっと専門書的あるいは小さなマニアグループのニュース誌のような場所と思われる。私のような門外漢には、やはり分らないままにとどまる。

とりあえず、特殊解として我が庭住まいのメーレルことクロウタドリの育児は雄のみが行うと言う事実をあげておく。鳥も大家に習うと言う積りはないのだが…。
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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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