ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

Here&there lands 雑なるアレコレ大地

シリア内戦は代理戦争?    

一日だけの熱暑が過ぎた。22/23日は早秋の気配。ヴァカンス族は帰り、子供たちは活き活きと通学し始める。あのデカイ喋り屋、家族には気を使い大慌てするデーヴィッドもスペイン休暇先から帰宅、彼の子供たちも学校へ。

奴さん曰く;いずれ倒れるシリア政権だから、スムーズな政権移管のために用意せにゃー…。と言うわけで、昨日まずフランソワと、次にバラックと電話で話した。その経緯をダウイング通り10番地のスポークスマンが公に発表した。[補足1]

シリア独裁政権が築き上げた軍事力に驚かざるを得ない。中近東圏の敵は長い間イスラエルだけだったのだから。油の売り上げ殆どを武器充実に費やすのはアラブ独裁の常識なのだろう。アラブの親分たちはそうして競い合った。[補足2] リビアは兵器として用いるに化学物質製造施設を持っていた。そのシリア版は4種を開発生産する工場で、東京地下鉄で用いられたサリンも大量に蓄積されているらしい。

外国からのジャーナリストを暖かく迎えたい。けれどもそ安全を我々は保障できない。日本人ジャーナリストが政府側砲撃で傷つき、移送するヴァンの傍らでその事情を説明するシリア・フリー・アーミー。の銃乱射があったそうだが、状況は全く不明
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傷つき、移送中か病院で亡くなったと言う山本ミカさんの取材作業中。近影と思われるが、イラク湾岸戦当時かも。

シリアに恐らく現時点で最大量の化学兵器が蓄えられているそうだ。70~80年代にイラク政権がグルド民族を殺戮した同当のガス類と言われる。本来イスラエル攻撃用だが、反対勢力地域の(シリア自由軍SFA)壊滅に用いる公算が強い。追い詰められたアサド一味の必然的に採る手段だと、トィッターやSFA自身の情報が伝える。

オバマ政権は詳細情報を握っている。化学兵器を使用した場合の一般犠牲者の数を測り知れない。これを超える無差別殺戮化学手段はやはり見えない放射能以外にない。この月曜日に大統領自身が「もしも使えばシリア政権はenormous consequencesに直面すると演説をした。淡々とした静かな語り振りだったが、実はイミシンである。軍事介入を示唆したわけだ。

すっかりヘッピリ腰になったアメリカ合衆国が言うのだから注目すべきでは。軍事介入+その後の維持コストに悲鳴を上げた過去があるから…。イラクにようやくコンマを付け、アフガンも間もなく片を付けられそうだ。リビア紛争ではEUサイドの NATOに主導権を取らせ、ナントカ上首尾だった。それ故に3度目はあるまいと、バッシャール・アサドは選挙対策用の演説と居直った。内心はギクッとして、脅かされたに違いないのだが。

これを受け、露西亜の外相Sergei Lavrovが20日モスクワに、支那の政府特使Dai Bingguoとシリア副首相Qadri Jamilの両使節団を迎えた。オバマ声明への反駁を揃っておこなった。再と言うべき合意点は、リビアにおけるUS海軍を含むNATO介入のような事態を許さぬと言うこと。

武器と石油と生活物資の要請にシリアから出向いたJamil使節代表曰く「独立国家に対するオバマの干渉は国際法に違反する。シリア問題は我々国内問題ゆえ我々自身が解決する」。[補足3] シリア支援の露支の主張はこれまでの繰り返しで新鮮味は皆無。熊と龍が肩を組んで、遠吠えしている格好になる。現場の戦場と全く無関係。

山本美香さんと同僚。恐らくジャパン・プレスと言う日本報道社の様子。彼女はジャーナリストの4人目犠牲者。Homsの砲撃でブリテン/フランスの3名が既に亡くなっている。当時ジャーナリスト狙い撃ちと報道された。ソーシャルメディアの発信地の追跡から、当局が場所を確定、集注して砲撃した。SFAサイドも政府側TV報道の`顔`であるジャーナリストを血祭りにあげている。あるいは山本氏の例も政府側作戦一環なのか、それともさまざまな利害異なるグループの仕業か…
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アレッポのSFA側の仮病院。医薬品と手術器具が不足。

17ヶ月続くシリア紛争は既に少なくとも殺された犠牲者1万8千人を数える。プラカードを持つ民主化デモを武器で抑圧したのが始まりだった。アサド政権は同胞デモの人々をテロリストと呼び、露西亜と支那、隣国イランから武器供給を受け、圧殺を継続。露支は国連安全保障理事会におけるアラブ諸国/EUによるシリア制裁提案を拒否権を用い葬りさった。

何度も書いたのだけれど、再び三度繰り返して書く。反対勢力はカタール/サウディアラビア/トルコ等から武器支援を受け、トルコ・レバノン・ヨルダン国境沿いからシリア自由軍部隊をシリア内部に展開し、リビア戦闘状況のように実質支配区を増やしつつある。政権が完全に管理する行政区は無くなりつつある。複数の現地潜入ジャーナリストによるヴィデオ映像を含む報告から明らか。

数日前3週間ぶりに政権側TV 局SANAにアサッドが姿を見せた。ダマスカス市内の政府中枢域にある小さなモスクのラマダン明けの儀式だった。インタヴューを受けた近くの市民はモスク周辺の道路封鎖と警護政府軍の物々しさを語っている。つまりダマスカス自体が既に市街戦場になっている。23日の今もあちこちで戦闘が続き、砲弾を受けた住宅が燃えている。

末期政権を露支は保持継続しようと執拗に踏ん張っているわけだ。政権軍は可能な限りのヘリと戦闘機を投じ、全土の反対勢力域に大っぴらに爆撃を開始。空から砲弾が降ってくる。住民は東西南北の国境鉄条網をはいくぐって向うに出る以外、身の安全を守る手立てはない。

露西亜と支那に加え、US/UKアングロサクソ(時にEUを含め)コンビに反抗する数か国がシリアを支持している[補足4]。熊と龍が何故しつこく、デモ隊への圧殺を見て見ぬふりして独裁シリアを支え続けるのか? 様々な要因がある。だが簡単な答え方をしてみよう。

プーチンは実力者でロシアを牛耳るが、独裁的ふるまいと取締り強化に対する運動は後を絶たない。共産北京は政権にたてつく行動を一切許さない。いずれも、アラブの春の床机倒しを避けなければならない。言論の自由を軸にする自由民主化とはロシアとシナとの現状を揺さぶり、エジプトのごとき崩壊につながりかねない。露支政権の目的は明快だ。インタネットを激しく取り締まり、情報の拡散を攪乱し、あらゆる手段を用いて反対勢力の芽を摘み取ること。

露西亜(モスクワ)に、支那(何より香港)に、自由を訴える運動組織が存在する。知名な戦士たちが多い。サテライト局に紹介されるのはかつてのチェス世界選手権者カスパロフ、何でもオブジェ化するアイ・ウェイウェイ(ローマ字:Ai Weiwei)など。高名な彼らの逮捕を当局は繰り返す。プーチンにとって「ロシアの安定」、共産北京にとっては「社会主義の調和」それぞれ看板のために、見せしめに批判者を牢屋にぶち込む。昨日捕まったカスパロフは他の知名活動家と共に拘束3年の可能性ありと聞こえた。シンガー女性グループと同様な仕置きを与えようと言うわけ。

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上:シリア副首相、モスクワの発表。 下:パリのエリゼ宮玄関。シリア民族評議会メンバーを迎えるオランデ大統領。欧州滞在または亡命シリア人の組織。現地多くの異なる戦闘グループとの連携が希薄とされる。資金収集と支援国交渉が彼らの役割。今後の現地グループと一体化の努力を請われている。

オランデ仏蘭西大統領が不況で四苦八苦。非人道シリア内戦に何もしなかったと、前任者サルコジーの勇敢に比較され、面目が立たない。キャメロンも経済に関し同じだ。ながらもロンドン五輪の良き余韻に助け舟をもらい、今パラリンピックに顔を出し、盗聴ハッキングスキャンダルの悪イメージから回復しつつあるように見える。

そこでデーヴィッド、休暇明けの茶色に焼けた元気さで僚友バラックに応えたい。しかしブリテンだけで出来ないので、リビアで勝ち取った成功パートナー・フランスのフランソワに朝の電話をいれた。会話は英語を用いるそうだが、フランス語も入るチャンポンかもしれない。

オランデにしても国民の声に応え、シリア反政府勢力に具体的な援助をするジェスチャーを示す必要がある。両者は近い政権交代への準備シナリオ作りに合意して、具体的作業に入るそうだ(該当部局は既に案出していよう)。同時に緊急援助として、致命的な死に関わらない、つまり武器供与の代わりに、FSAサイドへの情報機器に加え、野戦病院の医薬品と治療器具を送付すること。さらに難民を受け入れる周辺国へのテントや生活物資の供給。

それだけではないだろう。公にされないが、化学兵器が使われた場合の軍事介入についての段取りが話された筈。オバマの脅しが効けば起こらないが、これまで調停も警告もすべて棚上げして戦闘継続してきた事実を忘れてはならない。既にキプロス島とレバノン海岸の領海への仏英米艦派遣が検討されていると言う。近いので日数を要しない。

西側3名リーダーの電話会談は、3国がシリア反対勢力を支持している事実を言う。一方露と支那は独裁者を支援している。日本は前者に属する。具体的なシリア経済封鎖に日本は関わっていると思われるが、外交の場で日本の首相/外相のアサド非難の声が聞こえることはまずない。

日本人ジャーナリスト山本美香氏が銃弾に当たり亡くなった。40年前の日本人ジャーナリストたちを思い出す。ヴェトナム取材に命をささげた勇気ある人々だった。左様な日本人の署名記事を、巨大な購読数を誇る大新聞にも専ら配信だけの時事・共同にも見ることはあまりないのではないか。戦闘両サイドのいずれかにインベッドされているとしても、とまれ現地に入り取材し続けた彼女に敬意と心からの黙禱を捧げたい。

だからシリアは日本と関わると言う議論ではない。じつは、シリア内戦は日本の利益、と言うか国家存続に直にリンクしている。人々の自由な発言を封じるならず者国家二つ、露西亜と支那が絡んでいる…。それは次の雑談にしよう。
23日午後、我が村はオテントサンが顔を見せ、ダマスカス市内も太陽に照らされている。SFAファイターズを捜索中の政府軍タンクと兵士たちを映す政府側TVの映像を、フランス24と言うサテライト局が紹介しているのをみつつ…。


[補足]:
1. 彼らが会合で名前で呼び合うのかどうか知らない。キャメロンは既に何度もオバマと接触、オランデは就任したばかり。時間を重ねるうちに、二人だけならば、普段の感覚になり、ファーストネームで呼び合うだろう。こうした個人的外交接触が一つのミソになるのは昔の中曽根首相が認識していたようだ。フランソワやデーヴィッドにバラックと呼ぶ生活習慣を日本人が持つことはない。中曽根氏がもし米国同僚を名前で呼んだとすれば、自然体のような努力をしなければならなかった筈だ。西側の40~50世代リーダーの外交能力はこれに負うところが少なくない。通訳や第3者が入らぬ場で突っ込んだネゴを行うための素地…。
2. 主要なる西側及び東(旧)共産側の軍需産業にとってかけがいのない市場である。例えばUS毎年のエジプト軍事援助。戦闘機/タンク製造企業にとってワシントン経由の市場は莫大。シラク仏蘭西の湾岸戦争批判はフセインイラクによるミラージュ等軍用発注と関わる。
3. Qadri Jamilはしばらく消息が不明で、反対勢力に回った説が流れていた。こうして、露/支那のバックアップをもらい、断固アサド側に留まる姿勢を示したわけ。しかし面白いのは、「ヤミルは政権側からの脱落を模索途中…たまたま残される家族の手配が間に合わず、やむを得ずモスクワ出演になった…」と誰かが呟いている。末期になると、あり得よう。ほんとのアサド一味を除いて、誰もが家族を安全圏に移し脱落したい。つまり家族がネックと言うか最大関心事になるのは、過去の革命や政権崩壊期に共通している。
4. ウィキリーク創始者アッサンジェの亡命を歓迎するエクアドル。そしてUSに対し常々大上段に振りかぶるヴェネヅエラ。コレアとチャビスの二人の大統領は意気投合している。

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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

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