ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

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Sport スポーツ/ホビー

ドーピング……薬物と義足と競技環境

王たちの寄合所帯であるブリテンを騒がすトップニュースはパラリンピック陸上競技だ。高級新聞からゴシップ新聞まで、映像メディアではBBCからSkyまで、技術進歩の速い身体障害者用の道具論議で占められている。陸上競技200m決勝結果が発端になった。

両脚切断のハイテック義足規格がIPC(国際パラリンピック委員会)とIOC(五輪委)とで異なっていた。T43/44カテゴリー200m一位のブラジル選手はやや緩いIPC規格に準じ、二位の南アフリカ選手は健常選手と争えるIOC規格に従っていた。昨日のレースを観戦して、優勝者の走力に驚いた。コーナー通過地点でたっぷり10m近く差があった選手が、ゴールで鼻の差で勝つと言う大逆転を演じたのだ。記録はそれぞれ21"45と21"52。一日経ち、2位の選手がおおむくれ。一位の器具が極端に長く、公正でないと言う。

パラ委員会は抗議に理を認め、彼と会談を持ち、今後の検討課題にすると発表。しかし、騒動を回避するためメダル結果はそのままにした。抗議したピストリウスは既に9年間、このカテゴリーで負けを知らない選手。ハンディキャップ・アスレティック世界で有名な選手だった。優勝したオリヴェイラは、まだ一度もピストリウスに勝ったことが無く、個人記録も22秒を切ったことが無かった。

昨日、`突然変異`が起こった。理由がわかった。彼の義足はIPC許容範囲とは言え、ずっと長い。レースのヴィデオがあちこちのメディアで公開されている。長い`ハイテック脚`の加速力をどなたも認められるだろう。陸上短距離に於いて自己記録を数ヵ月にして0.5秒更新するのはまず起こり得ない。これは器具によるドーピングと言える。

  南アフリカ陸上、オスカー・ピストリウス選手のカテゴリーT43/44の200mスタートと途中走行。腿に装着された義足部を強化グラスファイバー製の形状からブレードと呼ぶ。スピードスケートの動く刃と同じ語彙だが、こちらはヘラのような扁平形を指す。
  T4344 Men200 a
走る様子は健常陸上選手と殆ど違わない。しかしブレードのハイテック化と長さによって、健常者を簡単に凌げるだろう。ウーセイン・ボルトの世界記録など容易に破り得る。その走法はこの画像と違い歩間が2倍以上になり、飛ぶように見えるだろう。


スポーツ記録は常に更新されてきた。走る/跳ぶ/投げる/泳ぐ…すべてが更新されてきた。人間の体力向上よりも、むしろ他の要因によるだろう。走る土壌/道具/衣服/靴、さらに薬物/高地トレーニング、あらゆるサポート手段が開発され、常に改良更新されている。

1928年アムステルダム五輪、女子800m銀メダルは人見絹江(註1)、男子三段跳び金メダルは織田幹雄。彼らが走ったトラック/フィールドは只の`地道`だったのだ。今はそれらが弾性を持つ。彼らが履いた靴は重い金属釘を打ちつけた素朴な皮靴だった。今の靴はハイテック素材のグリップ付きで加速性能を持つ。当時のプール水は只の水道水。現在の水は濾過され最適温度の精選水。東京オリンピックの時からでさえ、競技環境は格段に進歩している。肉体の進歩と言う概念があるかどうか知らない。ところが施設/道具は常に進歩する。

例えばスピードスケート競技の氷はハイテック・ウォーターである。世界記録を出せるスピードスケート・リンクの氷はリンク内温度・湿度と連携しつつ、スケート刃が最適滑走する硬度に作られる。またブレード後部が脚部の動きに応じて重心を移し閉開するクラップ・シューズが開発された。これで記録が革命的に短縮された。1世紀前の第一回世界選手権の環境と比較できない。こうした外部的記録向上要因を`ドーピング`として私はとらえる。規約違反になる薬物服用や酸素増量でない`ドーピング`である。

  200m決勝ゴールに近い地点。右から2人め(赤シャツ)と5人目とが片脚、後は両脚切断選手。右から3人目が1位に僅差で敗れたオスカー。6人目が一位ブラジルのアラン・オリヴェイラ。 
  T4344 Men200 b
 1位と2位の握手。二人それぞれのブレードを比較されたい。アランのそれがオスカーのものより遙かに長い。いずれが弾力に優れているか素人にも想像できる。コーナーを回り直線コースにおける加速力に圧倒的差が観察される。アランとコーチは数か月前から長いタイプを試し、写真のブレードは8日前から用いている新兵器である。全身長が6㎝増えたが、それはIPC規格に収まる範囲にある。


今日のスカイ・サテライトでは義足義手の技術専門家、IPC競技規則の担当者、薬物分析家などが登場してコメントを寄せている。世界で最も過酷な路上自転車レースはフランス国内を2週間走るトォール・ド・フランス。ランス・アームストロングは86年から92年まで連続7度も勝った。先日USADA(米国反薬物取締機構)がランスによる全ての勝利を無効宣言した。バルセロナ五輪の銅メダルも打ち消される。数々の輝かしいペダル歴は薬物の助けで実現した。前代未聞のスポーツマンは薬物漬かりだったが、同時に薬物使用を誤魔化す(≒カバーアップ)名人でもあった、と言うのが成分証拠と幾多の証言を揃えるUSADA声明である。

かつての支那の陸上や水泳チームのドーピング行為は名高く、以降の「支那選手に疑問府を付ける」条件反射的習慣を作った。USA全ての陸上五輪出場者はドーピング使用者だと、知名コーチが白状している。リア・スタルマンは1984年ロス・アンジェルス夏季五輪の女子円盤投のゴールド・メダリスト。しばしば目にする巨漢選手と違い、鍛えぬかれた均整のとれた肉体の持ち主だった。71m余を投げ優勝。引退して解説者として活躍、明言を残した。曰く;ドーピング無しで五輪を勝つことは出来ない。

トォール・ド・フランス7回の王者が正式にタイトルを剥奪されたならば、では7回の2番手が優勝者として繰り上げになり自転車スポーツ史に残るだろうか?実は7回のうち確か3回2位のヤン・ウルリッヒを含め、その他の2位サイクリスト全員がドーピングによる処罰を受けているのである。リアの言葉に従えば、ドーピング無しで自転車フランス一周競技に勝てない…。自転車競技は左様な世界なのだ。

パラリンピックもオリンピックのドーピング軌跡をたどることだろう。出来る限りの公正な規約をつくり、器具と障害度との補正値を常に技術進歩に対応させることになろう。そしていつも、それら枠に収まらぬ…灰色と形容される部分がオリンピックと同じようにひらひらと舞い続ける。 


[註1] 人見絹江は日本スポーツ史の最も偉大な女性と思われる。陸上競技に於いて並外れた万能ぶりを発揮している。アムステル大会では幾つかの種目にエントリしていたが、すべて予選落ち。そこで予定になかった800mに急遽出場。気絶するまで走り2位に入る。日本女性初めてのメダリストになる。男性ホルモン分泌が通常女性より遙かに多かったと想像される。
2009年ベルリン世界陸上選手権女子800mゴールド・メダリストは南アフリカのキャスター・セメニア。最終ストレッチのごぼう抜きを実況観戦していた私も思った、男子ではないかと。医学検査で子宮など女性機能を欠き、通常女性より数倍の男性ホルモンを持つ両性者と判明。先のオリンピック800mで2位になっている。医療措置を受け女性らしい印象になったが、ドーピングでない自然分泌による数倍のテストステロンのお蔭である。神の悪戯…あるいは神の手から漏れたというべきか。両性間の連続線上にいる人々…。性別問題は悲しい先例が多く、キャスターの場合も競技出場を見合わすべきと一般論が強かった。南アフリカの`愛国`がらみで政治問題になった。
人見絹江は24才で亡くなり、五輪参加当時、性別云々で喧伝され無かったのは幸い。人見の銀メダルからキャスターのロンドン成績が重なる。アムステルダム大会女子800mではゴール後にぶっ倒れ昏睡状態になる選手が多く、その後メルボルン大会までこの種目は行われなかった。


****補足***

前項の雑談話は「愛国心煽りの支那生き残り術」だった。先ほどメダル会得をチラッと見てみた。国名の後に並ぶ4つの数字は金銀銅メダルの数と合計。参考に序列23位の日本。1位/支那 37 26 29 92 2位/英国 16 23 15 54 3位/露西亜 14 15 10 39 23位/日本 2 1 1 4
全参加国のメダル会得数は下記↓パラリンピック2012 メダル・ランキング(9月3日現在)に詳しい。http://www.london2012.com/paralympics/medals/medal-count/

大ブリテン島の身体障害者スポーツ取組について、私は誤解していた。人々に広く理解されているように思われる。連日の各種目会場の盛況ぶりから伺うことが出来る。そこで2008年北京のメダル数を見ると、シナとブリテン両国はこの数日間の会得数と並行している。

だから英国も支那も愛国心を持ちスポーツを愛する同じ国家である、と思ってはならない。ブリテンが植民地支配を行ったのは過去である。搾り取った過去の残滓を引きずっているとはいえ、今は昔。現在の支那はチベット・新疆・モンゴル他少数民族を支配圧殺している。それは毛沢東が長征と言う言葉にすり替えた逃避行の旅の後、中華人民共和国を建国。その後に周辺少数民族諸国を呑み込み、チベット域の例で明らかなように事実上、警察(≒軍事武力)支配を行っている。現在進行形なんです…。

40年前まで常に、共産支那は尖閣諸島を日本領土としていた。信じられないが、国際条約を認めていたのである。国力を増すにつれ、徐々に共産主義綱領を表にだし、尖閣諸島を含む東シナ海のすべての島嶼を歴史的支那領土だと主張しだした。利害関与諸国は日本に加えフィリピン・ヴェトナム・インドネシア・マレーシアなど。因みに尖閣領有を主張する台湾は遠の昔に、支那の固有領土になっている。[台湾の人々も複雑、べそをかかぬように…]

パラリンピックに於いてチャイナとブリテンは同じように見えながら、愛国心高揚の役割が異なると言うことを知っておきたい。スポーツを政治手段としている。東独の例を思い出してほしい。そのプロシャ的厳格な共産独裁国家は、今は存在しない。共産支那の明日が見えるのでは。
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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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