ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

Oh every day 日々そうそう

正義の裁判官が戻ってくる

15世紀欧州の巨匠はフラーンデレンの人 を 8月27日になぜ書いたのだろう? 10日ほど経過した今日、不思議な気持ちになる。魔が差したのではなく、予感がしたのかもしれない。

ベルギーのフラームス(=フラーンデレン)新聞De Standaard(註1)が今日、ファン・アイク兄弟作「神への捧げもの」(=神の子羊)の失われている部分「正義の裁判官」の近い生還を伝えている(註2)。全体は中央上部に神になったキリストを描いたドリー・ラウク(三枚扉)の大作、1934年以来その下段左のいわば襖1枚の部分が欠けている。それが戻ってくると言うニュースだから、興味深い。

神の物語を描いた素晴らしい祭壇額縁画を盗む事業だった。左下の額だから外しやすく、比較的かんたんな作業だったと思われる。しかし資金も人も作業するタイミングも必要になる。「正義を遂行する裁判官」題名も一役かったのかもしれない。フェントのバターフス・カテドラルと関わる人々がこの勇気ある出来事に絡んでいる筈。万が一、司教自身が立会ったかも知れない。誰もが知る絵であるから、もちろん売ることは出来ない。しかるべき場所に安全に保管する密約があった…。政治抗争というか、政治的な理由があったと思われる。宗教的事象が政治に関わらないことはありえない…。

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上は10日前の記事とほぼ同じ全体図。カインが人々を苦しめる左上部分は示されていないが、中部分は等身大のアダム、下が事件渦中の「正義の裁判官」。馬に乗る群像が岩山や森さらに遠くの城または教会を伴い緻密に描きこまれている。実際見たとしても、細部を鑑賞/観察するのはなかなか難しい。そこでやや分かりやすい部分画像をご覧あれ。
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正面手前の青い裁判官服(?)の手綱を握る右手のデッサンがやや狂っている。不自然な左様な部分をデフォルメしてもっと誇張して描かいた画家がこの後まもなく出てくる…むろんフラーンデレンの画家たち。6世紀前の過去、北のベルギーに恐るべき個性ある画家たちがいたのである。青と右上の黒い衣服の人物も女性らしく見えるのだが、女性裁判官がいたと思われないのだが…、作者の想像なのかどうか…

スタンダールト紙はこのニュースの公開タイミングを計っていた節がある。1年前に、隠匿/保存する家系と所有者カテドラルのビショップとの`仲介者`が現れている。77年前の出来事だから、当事者は亡くなり、保管家の子息子女または関係者家系の意向を受けた人物がビショップに接触してきたらしい。政治事件ならば、もう時効になり「盗難画の生還」で穏便に済むのではないか。該当の司教は過去の政治事象として済ます積りなので、仲介者現れる事実を信頼する新聞社に伝えたと思われる。

キリスト教民主党の政治家August De Schryverがこの盗難の中心人物と噂された。あるいは彼の党友グループの仕業か? シュライヴァーはフェント生粋の人で,両親は商人として成功、園芸産業(特にハイデ)にも関わっている。園芸はフラーンデレンのフェントを抜きにして語れない。かくしてアウグストはカトリック者で商人として活躍、戦時中はフランス・ヴィッシ―政権に逮捕され、ブリテンに逃れベルギー亡命政権に参画、戦後いくつもの大臣を歴任、ベルギーを代表する政治家で影響力をもった人物。

「正義の裁判官」盗難事件の捜査は五里霧中に終わったそうな。臭いものに蓋をしたのでも、捜査陣がうやむやに葬り去ったのでもない気配がする。フラームス社会の核心を物語る事件だったかもしれない。例えばフランス語圏に対抗するような何か…。祭壇画は国宝レヴェルを超える汎欧州的価値を持っている。結果論だが、その一部を公の場所から隠すことが彼らにとっての意味…政敵への警鐘…だったのではないだろうか。アウグストは1991年に亡くなり、既に20年が経った。事情を知る`老人たち`にとって、もとに戻す時期が来たと言うことか。

昨年と異なる人物、やや若い`仲介者`が先月だかに再びビショップに接触してきたとスタンダールト紙の記事は言う。時間が間に挟まったのは…、記事曰く;返却に躊躇する家系の人々がいて、彼らは名前を明らかにされ罪に問われるのを恐れたのではないだろうか。その調整に時間がかかった…。

カトリックの雄たるスタンダールト紙が2012年9月8日に自信を持って言う;間もなく「神に羊を捧げる」祭壇画が統合される。近代宗教絵画史の78年ぶりのエポックメイキングたる明るいニュースになろう。

[註];
1.オランダ語圏フラーンデレン域、すなわちカトリック信仰を背景にする新聞。アントヴェルペン(仏語;アンヴェルス。英語;アントワープ)で生まれ101年の歴史を持つ。最近消えたAVV-VVK (Alles voor Vlaanderen, Vlaanderen voor Kristus)と言う標語が、性格をよく語る。フラーンデレンの全て、キリスト教のフラーンデレン。ド・スタンダールトと言う意味はキリスト教(旧教的)倫理観を指すと解される。
2.「正義の裁判官」と和訳されているかどうか不明。こんな題名はあまりにも宗教的素朴に思われるが、少なくとも何万の難民を出すシリア内戦の頑強な悪・露西亜/支那を裁いてほしい。
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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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