ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

Politics and economics 政治/経済

戦術的投票のディテール

オランダ選挙の答えが出た。ニュースサテライ各局のコメントが伝えていわく;EU各国がホッと胸をなでおろしている。

ドイツ昨夕のニュースが、ブンデスタック議会でおばさん然たるメルケル宰相の演説を紹介。債務危機国への融資は憲法に沿うと言うカールスルーエ最高裁判所の憲法解釈決議があったから。続くように昨夜の蘭選挙による共同通貨への後押し…

反EU/反Euro気分が流れる中で、そうでは無いと言う支持政権が生れる。保守・国民党と左派の労働党の二党が断突勝ち。41vs39議席をとり、国民党10労働党9の増席。政策で相当な違いがあるが、EU維持に関して両党は同じである。とは言え、西班牙(スペイン)他への追加援助が自動的にされるのではもちろん無い。ギリシャのEU離脱や否や?も先行きは全く分らない。晴れやかな雰囲気が、当分ともあれ欧州連合を保つと言う程度だろうか…

最後の選挙予測で戦術的投票行動が概ね読み取れる(画像下半分)。それが、上半分の実際の結果に明確に反映されている。つまり最後の予測が出てから行われた最終弁論がさらに選挙民の戦術的投票を加速したと言うこと。蘭放送協会NOSによる主要政党代表マニフェスト討論会は250万の視聴者数があったと言う。フットボールの欧州選手権のオランダチーム戦に匹敵する数だから、固い政治番組として異例の出来事。2時間余に渡る論戦が好みの議席最大政党へ投票行動を促したのである。

この大波を、議席数において中間的な政党すべてがこうむったのである。画像の上グラフがそれを端的に物語る。中間組はこれまでの支持選挙民の三分の一から半分以上をトップ2党に吸い取られた。これに対し、数名だけの小粒政党は動かぬ支持者を基盤にしているので変化がほとんどない。 

前項で紹介した参加22党のうち、議席を得た11党がグラフに示されている。殆どの新政党が議席0に終わったが、例外は「50歳+」党が2議席を得た。熟年になり聞き耳を持つ頼るべき党が無いと感じる人々がいるのである。1議席当たり少なくとも16000票が必要とされ、50+党は全国の行政選挙区合わせて32000票を得た勘定になる。日本と比べると、なんと些細な数と思われるに違いない。あきない上手の小国にとって1万6千は非常に重い意味を持つと言うこと。

Verkiezing 12


こうした現象は蘭選挙史で時々あった。だがこれほどはっきりと出た例は初めてだと思われる。同時に流動票と言う概念の定義付けに、新しい要素を加える選挙になったと思う。立憲君主国で、君主が商いして回る典型のオランダ故にこうした面でも先端を切るのである。いばらない、もったいぶらない、常に実質的、塩漬けニシンで生きながらえてきた連中だから、尊厳死の初例、同性結婚の初例、かくかくしかじかの初例を作る…。

日本も多数政党と言えるのでは。幾つあるか詳しく知らない。知人いわく;首相を順繰りにくる総裁が受け持つと言う日本事情即ち自民党政権のマンネリが終り、ヤレヤレ一寸進歩すると思った…と。浦島太郎的輩にとっても、何となく分る気がした。ところが受け皿の民主党は半分だかが元自民党だから、疲れるなーと知人の溜息が流れて来たのを思い出す。

もしも多数党一つの日本の政党党首が今回のディデリック・サムソムのような魅力を持つならば、日本の政治は多少`進歩`するのではないか。`進歩`云々は好い加減な語彙ながら、何か溌剌とする変化が起こるのではないかと言う意味。政局運営だけに腐心する政治。その政治屋にならざるを得ない日本的事情を超える何か…

Verkiezing 02

塔が見えるユトレヒト中心街、選挙演説するDiederik Samsom(41)。Mark Rutte(45)の国民党予測議席数に接近しつつある時点。

労働党は2010年選挙でヨブ・コーヘンを先頭に国民党ルッテと31対30と言う1票差で敗れた。野党の2年間、コーヘンのイメージが落ちた。教授から移民大臣として入閣。ユダヤ系の温和なおじさんと言う印象がアムステルダム市長時代は良かったのだが、党首として溌剌さに欠け、映像時代の犠牲者だったかもしれない。

その結果、倒閣後に党首選挙を経てサムソムが立った。8月初旬の労働党予測数は15議席まで落ちていた。TV選挙討論が始まってから、徐々に上昇し始める。ディデリックの話術の巧み、新鮮さが人々を惹きつける。それまで左翼代表であった社会党の支持者が中道左派の労働党に引越をはじめたのだ。

左翼のみの天秤を見ると、労働党がかつての重力を取り戻したと言うこと。右翼を見ると、キリスト教民主CDAは沈んだまま、かつての第1党勢いを取り戻せず、国民党VVDの独り勝ち。こうして9月12日の数日前に、ルッテとディデリックの対決構図が鮮明になる。なぜ10日ほどの短期間にずっと17^18で低迷していた党が倍増して、選挙前日に国民党と並ぶ40予測議席に達したのか。数の増え方に前例を見ない。

前例のない選挙。予測が短期間に地すべり的変化を起こした。理由は数日ごとに発表される調査予測に被調査者(選挙民)が対応すること。蘭の場合、各メディアが依頼する調査組織(企業/大学など)が七つある。調査方法はインタネットによる任意3000名、電話による1500名、個々の組織によって様々な手段/組み合わせと人数のようだ。当然、7つの間に差異がみられる。Aの調査発表の翌日にBが調査すると、既にAの結果を知る被調査者がそれに反応して投票先を変更する。

12日、緑環境党誕生以来の敗北をきした。党首Jolande Sapへのメディア攻勢。[補足註1]
Verkiezing 13

26議席を得る以前から欧州右翼政党で輝いたウィルデルスの敗北声明。[補足註2]


首相は慣例上、議席数一の政党党首に収まる。過半数を得る党は無いのが通常だから、殆どは複数政党の連立組閣が焦点になる。複数だから、色の組み合わせによって紫や赤緑、白青(?)と言った字名を持つ内閣が誕生する。この色味を左右するのが権力第一人者の首相である。

この数週の経緯から、選挙民個々は自分の支持する党またはそれに最も近い予測最大議席数の政党に投票する。その殆どは左右いずれかの好みをもちつつ、まだ党を選択できない浮動層。潜在的浮動票は投票資格者30~40%と言う。この部分が各調査発表ごとに投票をかえ、トップ2党に集中していったわけだ。具体例は、気持ちの上では社会党なのだが、左主導の政権になってほしいから、労働党に投票すること。これを戦術的と呼んでいる。

選挙予測集計に時間がかかった時代に起こりにくい現象だった。インタネット・ソーシャルメディア時代の産物。呟きや書き込みメディアの反応によって、投票行動が左右されるのだ。そして戦術的投票は、今回例と違う形でも起ころう。例えば、左右いずれかの第1党が明確な場合、連立に参画する中規模政党間の順位つけに適応されよう。

オランダ選挙は今後の戦術的投票を暗示する。少なくとも欧州連合圏で見られるようになるのでは…。これは2大政党国家で起こり得ず、またソ連邦などの旧共産国家体質を持つ疑似民主主義諸国でも起こり得ないと思われる。選挙予測調査が言論の自由の原理下で保障されなければならないからである。呟きメディアやソーシャルネットワークの自由が無ければ、実現されない出来事である。

自由にものを言える筈の日本でも発生するだろうか? それは私にはちょっと分らない。真面目で行儀のよい大多数の同胞がこんなそそっかしい反応と言うか対応を良しとするか…私に見当をつきかねるのだ。


[補足註];

1.党名GroenLinksの英訳はグリーン・レフトだろう。敗北理由は倒閣後に起こった党首争い。緑左の党勢弱化はテレビ討論以前から明らかなので、戦術的投票結果に当たらない。前党首はディベイトの達人で華やかなフェムケだった。ヨランデはフェムケから1年半前スムーズにバトンタッチされた。だがサップ女史は器でないと反旗を翻したディディと言う若者がいた。スッタモンダの経緯を経て党首選挙になった。サップが大多数の支持を得て党首に留まる。自信を取り戻したヨランデだったが、お家騒動の傷は深くドンドン支持を減らした。環境党にさえ人種差別があるかのような奇妙な事件。誰も口にしないが、ディディのモロッコ移民2世と言う事実も影響した…?
環境志向の政党はドイツ・グリューネンが嚆矢。以来全ての既成政党も環境重視し始めたので、緑を主題にする環境党の舵取りが難しくなっている。スター的党首が消えた上、お家騒動が起これば、大幅な縮小になるのもやむを得ないか。

2.9議席を失う(とは言えど尚15議席を占める)。反イスラムと反EUのマニフェストの説明不足だったと彼は言う。欧州一般の論調は未来にとって歓迎すべきというもの。ウルトラ右翼はしばしばポピュリスト党と形容される。安っぽい人気取り政党の意味。その後退がブリュッセル議会で喜ばれるのは当然だ。恐らく未来の選挙に於いて、15~10議席ほどの右翼的警鐘政党として生存権を持つのではないだろうか。

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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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