ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

Euro crisis 通貨危機

ユーロ危機とリンクする自動車産業の悲哀

過去半世紀、日本は消費者を満足させる高品質商品を作る製造業の一番ではなかったか。製造業によって、ひと時USとEUとの差を詰めたのである。代表は電気電子と自動車産業。失われた15年にこの差が逆に広がり、韓国・支那の追い上げが激しくなる。また台湾・マレーシアなど小ドラゴン諸国やインド・ブラジルの勢いも凄まじい。

マイクロソフト/アップル/グーグル/フェイスブックと言う`ソフト`、知的`忍術`企業は重要だ。だが、日本の屋台骨は他の追随を許さなかった製造産業ではないだろうか。それはEUを伺うと、良く分かる。ドイツを見られよ。その優れた機械・自動車製造によって、EUの骨格なのだ。牽引力はフォルクスワーゲン/ベンツ/BMWの車族である。

ブリテンもフランスもイタリアも…基本的に同じだ。フランスPSAにRenault、イタリアFiat、さらにUSのGMとFord傘下の欧州車族。これらグループが揃って売れ行き不振にあえいでいる。ユーロ危機によって市場規模が縮小[補足1]した。言い換えると、過剰生産設備の縮小を余儀なくされていると言うこと。 

3日前にUKフォードの工場閉鎖のニュースがあった。長いフォードのUK生産の終焉を意味する。
     Auto Industry disaster In Buritan
サザーンプトン工場と関連ダージェンハム施設で主に商用車を請け負っていた。再来年末までに完全撤退予定。合わせて1400名の職が失われる。トランジッションと言う馴染のバン/貨物車シリーズは人件費の安いスペイン・ヴァレンシアに生産移管するそうだ。深刻な高失業率25%のスペインに対する点滴のようなリリーフだ…。その見返りはサザーンプトンの嘆き。


フランクフルトとパリと二つの大きな自動車ショーが確か今月初めにあったと思う。スイスやベルギーでも行われた。フォードやプジョーだけでなく、長い間、売り上げ欧州一を謳歌したドイツ・オペルの悲惨状況が目立つ。オペル家創業の伝統メーカーがアメリカ資本GM手中になっているが、オペルブランドはドイツの人々にとって愛着ある`我が車`である。2008年9月リーマンブラザース倒産を契機に世界大不況が発生。お膝元US自動車産業は莫大な政府融資を受けざるを得なかった。GMは倒産措置を取り、巧妙に再生したが、欧州傘下グループの負担に喘いでいる。数年オペル売却に右往左往…、やや一息したが、ドイツ国内プラント幾つかの閉鎖は必至である。

フォードはスエーデンの伝統メーカー・サーブを所有していた。不況で手放さざるをえず、スッタモンダの末、超高級スポーツカーメーカー・蘭スパイクカーに譲った。小が大を呑みこむ話題だったが、オーナー・ミューラーの舌上手に乗せられた格好だ。この時代にマイナーな高級車は売り辛い。ほどなくサーブは消滅した(参照;2011年9月10日;スエーデン製のイメージ)。

ブリテン大島の海向かいのベルギーで、サザーンプトン閉鎖の2日前にGenkフォードプラント閉鎖が決定した。フェンクの工場は欧州自動車生産の大規模なひとつで、乗用車の大型車を請け負っていた。買い控えは大型車から始まるので、閉鎖対象になった大きな理由だと言う。ベルギー・リンブルフ州の街にとって深刻なニュースで、ベルギ連邦では発表以来、連日ニュースに上がっている。
    Auto Industry disaster Genk
デトロイトのフォード本社はUS国内を含め、世界戦略の大手術を敢行中だ。欧州生産の再編成によって6500名を削減、生産台数で18%減、年間450~500ミリオン$節約を目指すと言う。


日本車は欧州に於いて故障率の最も少ない、と21世紀初めまで言われていた。信頼度に於いて、現在でもその評価は変わりないと思われる。日本メーカーは地震・津波・原発の多重災害とタイランド洪水などによって大きな損害を受けたと思われる。そのニュースと共に、スマホのサムスンと並んでヒュンダイ(現代)やキア(起亜?)と言う韓国自動車メーカーが相対的にイメージをあげているように思われる。事実、市場占有率を上げている。まだ日本車との数字の開きは大きいのだが。

欧州メーカーにとって支那市場は企業存続の鍵になる、と言われる。少なくとも産業トップ人が声を揃えて言う。それをヘボ政治家が繰り返す。過去数十年の支那経済成長に従うと、信じるも信じないも、時の勢いなのだ。だが日本は難局にある。トヨタも日産もホンダも三菱もすべからく支那市場の見通しを練り直しているらしい。

フォードに先だってPSAグループ(プジョー・シトロエン)がパリ近郊プジョープラント閉鎖を決定。ギリシャから始まった債務問題がイタリア/スペイン/ポルトガルに拡大、この南欧の売り上げが激減したのが引き金になった。8000名が失職するそうだから、オランデ大統領にとって頭が痛い。痛いだけでなく、彼の支持率がぐっと下がった。
      Auto Industry disaster Paris
30年前仏蘭西に大小合わせ10ほどのメーカーがあったような気がする。現在は2つのグループに集約され、三つのブランドがある。フランス人独特な作りで、故障多発するが、欧州では根強い人気がある。PSAもルノーも日米メーカーと連携しつつ最大市場の支那に焦点を据えている…しかし大事な本家市場が重体に陥っている。
 

ご存知のように、「小日本叩き潰せ」と言う反日デモとそれによる日本製品不買の嵐のせいである。尖閣諸島問題をアジアの宿敵同士の睨みあいと言う構図で描き、その延長の荒れ狂うデモをサテライト各局が繰り返し紹介したのである。東と南の支那海のシーレーン全域を支配/領海下に置く侵略的背景を観る人も国もないようだ。フィリピンもヴェトナムも、全ての海上輸送関連諸国の国際問題の筈だが…。

欧州にとって他人事なのだ。弱小民族圧殺の人権問題を見て見ぬふりをして、要は支那との商いを円滑にすること。(数字を作り上げている感の強い)経済高成長7.5%の大市場に、ドイツは最も機敏に動いている。あたかも支那事変における枢軸国ドイツ・ジーメンス社のジョン・ラーベのように、だ。[補足2]

日本車は半分減? もしそうなら異常である。いや、支那全土に吹き荒れた反日デモが異常だから、その結果の売り上げ半減は当たり前と言うべきだろう。とまれこの穴を埋めるのは、プジョー/シトロエンでもフィアットでもオペルでもない。GMとフォードも穴を埋めていない{補足3}。ヒュンダイ・キア韓国勢では支那の人々のイメージに合わない感じがするが、どうだろう。

もうお分かりでしょう。大方はドイツ車がトヨタ・ホンダなど日本車に変わっていると言うこと。ブランドで言うとフォルクスワーゲン好調がこれを証明している。また高級車メルセデスベンツとBMWの支那市場圧倒的強さは従来から変わらない。これら2社の最大お得意はアメリカだったが、支那が早晩とって代わるそうだ。レクサスは高級乗用車の一角として世界で名を成したが、支那における数字はここで不明。もしあったとしても、今回の事件で割を食わなければならないだろう。

欧州自動車市場が13%縮小しているとして、そのマイナスをドイツメーカーは最小限に留めていると言うこと。ベルギー・フェンク工場組合活動家はこう説明する; 「ドイツ労働者の平均給与はどの周辺国より低いために、企業再編に関し有利。残念だが、ベルギー平均供与は欧州で一番髙いために、フェンク閉鎖が優先された。
加えて曰く;もしもギリシャ人が真面目に働き、EUに財政事情を正直に伝えていれば、こんな債務問題に成らなかったかもしれない。大火事の成る前に消し止められた筈。嗚呼…、

[補足];
1.欧州平均で13%と言う数字を見た。工場閉鎖による解雇人員と同じで、メディア出所により確定できない。プジョーの重役によると、数年以内に欧州5~10プラントが閉鎖になるそうだ。自動車産業は関連/下請け裾野が広い。失職するのは幾つの万単位になるのだろうか。
2.John Rabe、日本軍南京攻略時、民間人保護に尽力したジーメンス社派遣ドイツ人。武器商いに関わった筈。彼の証言=日記文献が大虐殺の一つの資料になっている。同盟国・日本の軍隊に対しての活躍を称賛するドイツ本も上梓されているそうだ。
3.とは言えGMは外国メーカー売上トップ。VWは成長著しく、来年見込みは9%増。


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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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