ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

Oh every day 日々そうそう

ささめ雪アムステルダム ボロ自転車の街

聖ニコラウス生誕日12月6日、アムステルダムはキュッと冷える。
ささめ雪が夜中にちらついた。路地と運河をうっすら飾っている。

ここは自転車の国。ボロ自転車ばかりが鎖に繋がれ、無造作に風景を作っている。
学生の街でもあるから、持ち主は学生が多い。彼らはサラッピンを買えないが、買えるとしても決して買わない。直ぐに消えてなくなるから…
       

      Canal met sneeuw Cor 02 Klein

次女も何度か無くしている。盗られると言い換えよう。一度珍しく、彼女は取られた自転車そっくりを駐車する同世代を目撃した。細部の傷によってやはり彼女の自転車だった。たまたま予備鍵をまだ持っていたので、証拠事情を説明。かの若者は悪びれず、約束通り後日その自転車を返却してくれた。

盗むのは度胸と言うか踏ん切りが必要だ。初めて盗まれ2つ目も災難に合うと、男子学生は`互いに融通し合う`サーキットを発見して実行する。つまり盗まれると、機会を見つけ盗み返す。壊しやすい錠前とか、時に鍵無しがあると、そのまま拝借して乗ってゆく。

ヴィットリオ・デ・シーカの白黒映画`自転車泥棒`は1948年製作公開。松竹が1950年に配給し、私は1958年頃にどこかで観劇。なぜ名作なのか、さっぱり分らなかった。戦後すぐの貧困、善良な失業者を描く物語。盗まれた自転車を追いかけ探す親子のドジぶりが理解できなかった。底をつく貧しさならば、人は知恵を働かせ強くなれるのでは…あたかもアムステルダム若者たちのように。

運河の街の自転車盗難率は世界屈指を誇れるのではないか。商いで17世紀世界を制覇した国だ。宗主国スペインに対して戦争しつつ、傍ら東インド(ジャワ・セレベス島)やメラネシア島嶼部族を支配圧政して富を集め、唐津焼きもドッと仕入れて商った。やはり他の自転車を盗み返すアイディアにたどり着き、捕まってしまう善良イタリア人に比べると、蘭人は南蛮人と言われたごとく蛮族にして狡猾、かつ呆気らかんなビジネス気質を持っている。

運河からドンドン消えてなくなる自転車を非常に安く商う連中がいる[補足1]。それを次女は買うので、盗むと言う踏ん切りをつける必要はなかった。男子学生たちの気軽さとは、互いに盗られ盗る世界。盗られて学生たち誰もショックを受けないそうだ。ボロ自転車だからアーッと言う感じ。次を手当てする面倒感はあるけれども…。

      DSC_0288-1.jpg

日本都市部(殆どが都市部ですが…)、自転車駐車場の混雑ぶりは日常風景だ。アムステルダムほどボロ自転車は少ない印象を受ける。何よりサイズが小さく、殆どが前輪上部に籠を持っているようだ。このタイプ自転車平均値段を聞いて少し驚いた。2~3万円…。欧州に同額クラスが無いわけで無い。それらは故障しがちで潰れやすい。支那などから大量に入る一種の`捨てかえ`自転車だ。すると籠付き可愛い自転車も`飼い捨て`に違いないと思う。

蘭人ほぼ誰もが自転車に乗り、ヴァカンスに自転車を乗せてゆく。熟年で自転車を持たない人はいず、その価格平均は10万円前後になろう。休暇は勿論、日常生活の大事な脚だから確固たる自転車観を持っている。そしてあちこちで開催される自転車廻り行事に参加する。

アムステルダム運河域のような都市中心部は集合住宅が多い。古い数層の石や煉瓦長屋である。一階は店舗に用いられる場合が多く、居住部分へのアプローチは急で狭く長い階段。酔っていようものなら、苦労する代物。普通の机一つ、運び上げられない[補足2]。自転車いわんやだ。可愛いいボロ自転車の場合もどこか外に結わえて駐車させねばならない。

Herenhuis(ヘーレンハウス)と呼ばれるギルド(商工都市同盟)時代からの建築。`紳士ことHeren`は資産家/政治家/富裕階層。欧州各地によく維持されたこうした建築観光資源をご覧になるでしょう。現代インテリアを持つ豪勢版もあるが、碌に維持されない下宿屋風情が殆どと思われる。ただし絵葉書になるファサードは景観維持のために、行政が維持補修するようだ。
        AmsterdamLuchtfotoBmz.jpg
アムステルダム旧市街。重なる運河都市計画が明瞭。かつては水路が物の移動の要、言い換えれば経済のインフラストラクチャ―だった。今は水路めぐり観光のほか、他ゲイパレードや音楽祭、五輪勝者のパレードと言った行事に独特の雰囲気を与える舞台装置である

          
学生ボロ自転車と成人/市民自転車の二つ世界があるような気がする。面白いのは太ったオバサンも小奇麗にメイクアップしたご新造さんもたいてい2台以上の自転車をもっている。一つはよそ行き、ヴァカンス用。他は普段の買い物用、言わば盗まれるのを考慮した実用車と言う感じ。

それが、中世以来変わらぬ狭い都市環境にあって、ボロ自転車をごちゃごちゃ放置せざるを得ない理由。目白にかつて住し、あるいは本家`メジロジム`でサンドバックを叩いた南蛮男子の暖簾分け道場の前も、かくしてボロ自転車が床机倒しになっておりました。


[補足」;
1.良質のセカンド自転車を扱うのはプロフェッショナル。狙いの自転車を鎖や錠前の切断道具を用い、寸時にヴァン(貨物車)に運び入れる。鋼材チップ埋め込み自転車もあるが、盗難対策付き自転車を探す手間暇取る警察は存在しない。プロは細部変更や部品交換したセカンドハンド自転車を大量に他の街に運び、グループと通じる自転車屋に卸す。東欧共産国家崩壊後に、自転車も自動車や他機械並みに国境をこえた商いになっている。元手がただであり、簡単な乗り物だから、この自転車セコハンビジネスは`堅い`に違いない。

2.水べりを歩かれ、上を仰がれよ。各戸建築上部に木造や鉄骨構造物が突き出て、滑車をぶら下げている。この滑車でかさばる家具調度を釣り上げ、窓から内部に搬入する。
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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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