ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

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Ordinary People 雑人雑名

エイプリル・キャスバーン  [ドタバタ腐敗スコットランドヤードにかけて]

 雪と氷、冬景色を添えて本稿締めくくりマス
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更年期障害と言うのが何時から出るのだろう。エイプリル・キャスバーン女史は更年期障害だったのだろうか。あるいは普通の過労や神経衰弱だったのだろうか。

    April Casburn 2
    今年53才、2010年離婚でもめて苦労。加えて新しいパートナーと共に子供二人を養子として引き取る手続きで神経を擦り減らす。検察CPS[補註1]訴訟を受け、尋問に答えて曰く;問題の電話会話中に何を言ったのか覚えていない。これは更年期症状の典型らしい。

2010年9月11日午前、首都へ出入りする高速は車で込み合っていた。エイプリル・キャスバーンは車を左端避難レーンによせて止めた。電話することを思いついたためだ。何故9月11日? ニューヨーク・トィンタワーテロは9年前の同じ日だった。21世紀テロの代名詞になり得る事件が彼女の日常と関わっていたからだろう。気に留めていたことをする好日だと、無意識に体が動いたのかもしれない。

4月生れだからエイプリル名をもらったキャスバーンは風変わりな呼び名で他人の覚えが良かったそうだ。1991年にスコットランドヤードに就職、19年目に一つの捜査部々長に昇進。担当部は`テロリスト資金`部[補註2 ]。彼女は押しも押されぬ主任調査官。21世紀は悪夢のような9・11テロで始まった。テロ資金調査の主任がこの日に霊感をえて、彼女自身の正義感を発揮しようとした? メディアにリークして、世論を喚起することだったかもしれない。

携帯電話の相手はニュース・オブ・ザ・ワールド紙(NoW)。一年以上前から話題になっている電話盗聴取材タブロイド紙。受話器を取ったのは編集部員ティム・ウッド。キャスバーンは捜査関係者と言うも、実名は明かさなかった[補註3]。10分近い長話だったらしい。ウッドはスコットランドヤード(警察庁の字名)が進める再捜査に関する情報提供だと2名の上司にEメールで報告した。

      
上左;1960年以前にスコットランドヤード大通りにメトロポリタン警察本庁があった。新庁舎に移り、昔の通り名が警察庁の通称/ニックネームに`昇格`してNewをかぶせたもの。 上右;正式名称
      April Casburn 01
エイプリル・キャスバーンは職種/肩書の前に`元`が付く。10日に出た判決根拠は、公務情報を報酬目的で第3者に伝えることを厳禁する法律である。彼女の電話はメディア企業による贈収賄調査が進んでいる真っ最中だった。ヤードのスポークスマン声明;「秘密情報をジャーナリストに漏らす腐敗警察官の居る場所はない」。しかしエイプリルは充分なサラリーを得る高官職にあり、新パートナーも高収入者ゆえに金銭目当で電話をしたことを立証するのは難しいのだが…


2009年7月1日ガーディアン紙は、振り返れば、歴史的な記事を掲載した。 ニック・デーヴィスによる電話盗聴に関するこの記事が発火点になった[補註3]。過去十数年に渡り追跡しながら、殆ど関心を呼ばなかった事件。ニックは疑惑を具体的に提示し、これまでの経緯を示す全体像を伝えた。それまで関心を呼ばなかったUK世論が静かに動きだすのである。

ガーディアン紙によって発火した火が徐々に勢いを増し、UKインディペンダントやUSニューヨークタイムズ他の取材の呼び火になった。両紙の編集者がショーン・ホアーと面談[補註5]。彼はNoWの芸能担当で、具体的な電話盗聴のテクニックほか私立探偵を介する取材実態を語った。ホアーはNoWからマードック系他紙へ移っていて、NTのインタヴューに``無報酬`で応じたと言う。

デーヴィスの記事から1年余の2010年9月1日、ホアーのインタヴューを中核にした詳細な盗聴スキャンダル記事がニューヨーク・タイムズを飾る。``USAマードック帝国ニュースコープ`の進出先UKにおける不祥事がアメリカ社会に広く知られることになった。記事に具体的な日時や盗聴探偵者名が上がるなど、ウエストミンスター議会緊急議題に発展。保守党キャメロン内閣にとって放っておけない社会且つ治安問題となり、スコットランドヤードへ政治圧力が重くのしかかった。

わずか10日の短期間でスコットランドヤードは再捜査を始めることになる。尻を叩かれた警察のオタオタぶりが伺えよう。長官ポール・ スティーブンソンと副長官の一人で面目の潰れたジョン・イェイツとが採った指揮と捜査方針がどうだったのか? それは翌年に始まる議会公聴会まで待たねばならないのだが、組織に安住してきた公務員のお座成りアタフタ模様だったことが後の議会公聴会とリヴァーソン聞き取り調査委員会で浮かび上がる。ガーディアン他メディアが紹介した大掛かり盗聴事例について、警察は殆ど把握していなかったのだ。

こうした自ら属する組織内部のドタバタを見聞するキャスバーンは相当イライラしていたと思われる。しかも彼女自身のプライヴェイト離婚の影を引きずっている。男の同僚たちの捜査が好い加減で、彼女の担当部資料が勝手に用いられる状況に同意できなかった。盗聴問題は今に始まったことでないのだ。十数年余以前の嫌疑から、議会公聴会さらに裁判まで既に数多くのプロセスが重ねられてきた。キャスバーンは、メディアによる新証拠報道と関連する徹底した広範な捜査が必要だと考えていたと思われる。にも拘わらず、NoWと仲良しの上司は事件を放置し、つい先日から`嫌々`再捜査を始めている。この好い加減と言うか、反道義性に彼女は怒っていたのではないか。

イライラが募る。40才から50才までに、あるいは50過ぎにも、更年期障害が発生すると言う。彼女もふつうの中年女性に過ぎない。そんな時エイプリルオバサンの耳に聞こえたのは、逮捕/訴訟目標になる人数や名前である。ヤード内の関連捜査ファイルの再検討が始まる。これらの情報をメディアに漏らせば、愚図な男の同僚たちと組織内部腐敗を世に喚起できるかもしれない…。

そうした思いを反芻させながら11日、都心ヴィクトリア区にある本庁に車を走らせていた。ラジオから9年前のナインイレブンのテロ回顧雑談が流れてくる。彼女は速度を落としバックミラーを見つつ、左の予備レーンの駐車位置へ車を運んだ


左;1月7日裁判所へ向かうキャスバーン。今回の大捜査の結果、訴訟を受けた50余名の内、彼女が判決を受けた初例になる。
      April Casburn 3
上右;元スコットランドヤード次席コミッショナーのジョン・イェイツ。議会公聴会の質疑で筋の通らぬ受け答えをしている。警察組織と言う閉鎖社会`常識`にのっとったと思える。
下;元コミッショナーのポール・スティーブンソンン。在職2009年~2011年Sir称号を持つ。[補註6]
      Sir Paul Stephenson
スティーブンソンは国家治安の最高責任者2年目にして辞職せざるを得なかった。NoWから夏休暇の申し出を受け、ベルギー・アルデンネ山地の保養地スパで家族と共に豪勢を楽しんだ。イェイツも同じ供応を受けているらしい。彼らは元NoW編集部副主幹Neil Wallisを日給千ポンドでヤード広報助言官に迎えている。これはキャメロンがネイルのNoW同僚アンディー・コウルソンを保守党広報官に採用、そのまま後の首相官邸広報官に据えた経緯と同じである。いずれもタブロイド・ゴシップ紙編集部在籍時代、違法盗聴に関わり、2011年7月に逮捕された。犯罪嫌疑者を逮捕する警察のトップ二名が嫌疑者と通々の関係に在ったこと。ウォリス逮捕後に長官ポールは辞任を明らかにする。最期の言葉としてスティーブンソン曰く;「デーヴィッド・キャメロンの執拗なアンディー・コウルソン主席広報官採用に比べると、私の道義責任は遙かに小さく軽い」。


エイプリル53才、アリソン48才(スコットランドヤード法務官)、ベッティーナ39才(国防省文官)、これら女性は因みにホーン・ハッキングに関わるキャリアー公務員である[補註7]。このスキャンダル劇の主演女優は言うまでもなくレヴェッカ44才、ルパート・マードック6人目の子と揶揄される。彼女は公務員ではない。アリソンが他を裁くと言う構図になっている。
彼女たちの女性器官と関わる更年期と言う肉体現象がブリテン史最大のスキャンダルや私生活/離婚に影響している…、などと言おうものなら女性から叱責されるに違いない。少なくともこれら女性は高学歴で知的でなければ職を務められないだろう。肉体現象が仕事に差しさわりを与えることを避ける聡明さを持っている筈。

11日午前``エイプリル・コール``に応対したのはTim Wood。ティム・ウッドと聞くと、スズキイチロウやヤマダタロウのような変哲もない何処にでもある平凡な名前と苗字だ。彼の凡々たるメイルと証言だけが多分発作的な電話をした人物の有罪を決定したのである。その証言とは「電話主は情報と引き換えに報酬を求めた」と言う記憶だ。

電話主はレベッカ・ブルックスとアンディー・コールソン両名をあげ、予定逮捕数6名とを告げたそうだ。さらに上述した組織内部のドタバタや`男`の同僚による嫌がらせや非協力について。特にジョン・プレスコット[補註8]が再捜査に大きな影響を与えている点を繰り返した。プレスコットが彼女担当のファイルを悪用するかのような言い分だったそうな。電話主の失望と怒りが十二分に感じられたそうだ。新聞社にかかる様々な情報提供にありがちなように、二人の会話者は互いに名を名乗らなかった。相手が捜査官で内容が特ダネっぽく、ティムは丁寧なメイルを上司二人に送ったのだ。

ニュース・オブ・ザ・ワールドはこの翌年6月にスキャンダルとして大爆発した大波のため、長い歴史をオーナーによって閉じられたのだが、キャスバーンの電話時は嫌疑だらけのため、むしろ良く売れていたタブロイドである。だからもっとも相応しい情報リーク先として彼女は電話をしたのではないだろうか。大スキャンダル誕生後に、再捜査を遙かにアップグレードした捜査体制がキャメロンお声がかりで敷かれた。その贈収賄チームによるNoW押収資料にティムのメイルが当然含まれいた。

調べに対しエイプリルオバサンは涙を流して述懐;「文字通りのエイプリル・コールこと4月馬鹿の電話をした」と。何故、突然思い立ったのか、良く分からないと言う。彼女は、捜査の雰囲気に違和感を覚え戸惑い、激しい怒りを感じていたと想像される。「決して報酬を求めた言辞をしていない。聞き間違いまたはミスター・ウッドの誤解/思い込みだ」と主張している。もう一つ、内部告発の正当性を述べている。つまり11日午前、`口笛を吹く`勇気が突然に出てきたと解釈するのはどうか。加えて金銭的動機に根拠ないことは上述のように明らかだ。

判決はスキャンダルに対する世論の反映であろう。スコットランドヤードのお粗末は高官の腐敗、刑務官やコピューター担当者の収賄など枚挙にいとまなく、それら腐敗警察公務員を激しく罰することが期待されている。そこにエイプリルは何故か迷い込んでしまった。報酬を受け取らず彼女の情報も使われず全く実害がなかったにも拘らず、彼女に不正警察官のスタンプが押されたのである。スティーブンソンとイエィツとは、違法ジャーナリストを迎え税金無駄使いを行い、豪華な供応を受けたのだが、何の罪も問われていない。

テロ資金調査部の栄えある主任調査官によるナイン・イレブンの行動は何ゆえだったのだろう。魔がさした、発作的、、、第三者にはどうにも判然としないだろう。判決後、身柄を拘束されなかったのは、いわゆる情状酌量の結果と思われる。裁判官は恐らく、更年期障害の典型と考えたのかも知れない。残念なことに、裁判判決とはしばしばそうであるように、裁判官は世論の勢いに妥協せざるを得ない…。


【補註】;
1.Crown Prosecution Serviceを逐語的に置き換えると王立訴訟局か。

2.ナインイレブン(9・11)の資金提供者はサウディアラビア富豪とされる。国債テロ組織アルカイダの創立者ビン・ラーデンは富豪の息子で過激イスラム。UKに於ける近年のテロは過激イスラムによる(かつてはIRA)。ビン:ラーデン襲撃フィルムが1月初め封切られ、UKで快進撃。

3.捜査とは2010年9月1日ニューヨークタイムズ記事発表後に、立ち上げられ再捜査。当時のスコットランドヤード次席コミッショナー、ジョン・イェイツが後に辞職せざるを得なかったのはこの事件を捜査不必要と判断したからだ。イェイツは 元NoW編集者を高額でアドヴァイザーに迎えるなど、警察高官と特定メディアとの癒着が既にあり、捜査不要判断はその必然の結果と思われる。[参照2011年11月15日;BBCも地元ニュースを国際版扱いにする]

2011年6月、三つの捜査班が設けられ、2013年も進行中。``オペレーション・エルヴェルデン`名のチームは、センセーショナル記事作りのためにメディア企業が行う警察官と政治家の買収を調査する。``オペレーション・ウィーティング``は盗聴実態を明らかにする。もう一つはコンピューター・ハッキング捜査班。エイプリルの資金調査班の立ち上げもこれら一連の動きと無関係でない。

4.Nick (Nicholas) Davies ; ブリテンのフリーランス調査ジャーナリスト(investigative journalist)。通常、メディア勤務記者は毎日の出来事を記事にする。これに対し(印刷と視覚いずれのメディアも)一つの主題に張り付き、自ら調査し、しばしば長期間に渡り追跡記事を継続、または総括的ドキュメントフィルムを作成するタイプのジャーナリストを指す。対象規模が大きい時、チーム形態をとる場合がある。長年の取材と真相発掘に対し、デーヴィスは幾つかの記者賞を受賞している。

5.Jean Hoareは電話盗聴に悩み酒に溺れ体調を崩す。NoWに丁寧に解雇される。解雇示談を行ったアンディー・コウルソンはNoW内部事情について口笛を吹かないでほしいと言う口止め料を支払っている。なお内部告発の英語彙はWhistle-blower、蘭語彙は``鐘を鳴らす人→警鐘者``。ホアーは捜査中に不可解な死を遂げる。[参照2011年7月21日;テームズの霧、2012年5月31日;国家の舵取りかそれとも商いか、など]

6.ブリテンには馬の糞ほど古めかしい称号が転がっている。多額税金を経費で落としても、公務員が接待を受け豪華ヴァカンスを家族と共に過ごしても、SirはSirに留まるようだ。ブラック・ユーモアに満ちる王様連合の国に違いない。闇金融で大もうけした銀行頭取が批判を受け辞職する例がある。こうした連中がSir(卿)称号を持っている。商い繁盛させ個人的に懐を潤すことが重要な条件と思われるのだ。

7.April Casburn / Alison Levitt / Bettina Jordan-Barber / Rebekah Brooks

8.John Prescott。トニー・ブレアー政権の2番手。労働党の大物で長期間の副首相職にあった。かなりのムジナである。再捜査に口出ししたのは、ブレア―時代のマードックとの蜜月と絡んでいる可能性があろう。スティーブンソンとイェイツほか警察庁トップコンビの任命はまだ労働党政権時である。プレスコットの息がかかっていると見るべきだろう。


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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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