ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

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Nature 雑草 フローラ/ファウナ

アララギはイチイの別名 正一位の樹木種子が含むもの  

          ほこらのあるセイヨウイチイ (この部分3m高、直径60cm)  
          Taxus baccata Cor 05 Hall en Geel
          樹高3~4mの黄色果実をつける変種セイヨウイチイ


希臘(ギリシャ)/エジプト/支那/ローマ…、神話を含めあらゆる時代/場所に毒エピソードが見られる。狩りをする原人が矢じりに毒を塗った。そして毒は殺人手段に発展。政敵や身内すら消さねばならない時、密かに毒をもる。あるいは自分自身の消滅に毒を飲む。毒`学`は同時に治療薬学であり、人類生まれて以来、不可欠な探究テーマになる。

左;株立上の複数の幹が3m高で互いに架橋して繋がっているセイヨウイチイ。樹肌は小豆色のような赤味。水平に(ダイムと言う)25㎝4個の折定規を置いた。即ち数幹がつながりつつ巾100㎝余になる。
       Taxus baccata Cor 06
右;左の全体像。やはり教会墳墓に植えられている。樹高8mほどに過ぎないが、教会以外に古い公園/庭園に見られる。さあ樹齢はどのくらいだろう?200年ほど?


毒は自然界にある。無機的な鉱物から有機的な生物まで、万とあるようだ。動物のヘビやフグ、植物のキノコ類にシキミやイチイ、経験則によって古代から`有用`されている。

アムビオリクスの話が三つ前の記事にある。彼に報復すべき紀元前54年、共和制ローマはガリアに大軍をして再遠征を行う。数年の戦役末期にベルジカ(Belgica)エブローネン(Eburonen)部族の王カトウヴォルクス(Catuvolkus)が毒をあおり自殺した。セイヨウイチイの毒とされる。

毒成分はアルカロイド類の複合体でタクシン[taxin(e)]と言われる。ラテン綴りTaxonから属名Taxusがなり、その毒成分ゆえにタクシンである。イチイ属は雌雄異株ゆえに、雌株に熟す果実に毒が主にあるようだ。果実は外側の柔らかいやや細長いシリンダー状赤味とその内部に保護された種子からなる。外側は甘っぽく、たくさん集め余分に蜂蜜を加えジュースにすると、粋で珍しい自然飲料になる。

左;アララギに相応しい冬景色か。日本のイチイの兄弟セイヨウイチイ。様々な形に剪定しやすい性質を持つ変種だが、もちろんイチイ属の基本性質を持っている。アイリッシュ・イューと言われ、1778か1779年にアイルランド伯爵領 Fermanagh で発見される。雌株だけだから注目され、直ぐに欧州に広がり、現在世界広く植栽されている。
       Taxas baccata cor 01
右;雌株アイルランドイチイの雌花は普通のセイヨウイチイ雄株から飛来する葯(花粉)を必要とする。受粉すれば果実を形成する。粒々の実は通常セイヨウイチイ雄花の冬姿。


鳥は果実を丸ごと食べ、遠くに種子含みの糞を落とす。種子は消化されず、多くの植物が採る戦術。種の存続を図る種子だから、動物につばまれた後、消化されては困る。つばまれるために赤・黄の華やかさで鳥や小獣を誘い、一端彼らの体内に)入ると、消えてなくならないように種子外皮を特別に仕立てている…。これと毒素を種子に集中していることと関係があるのではないか?あるいは種子を啄ばむ動物たちは消化すると死ぬと言う情報を知っていて、ゼリー部分だけ食べ、残りを排便するのかもしれない。

我が村周辺の独蘭国有林・広大な森にしばしば大小の実生幼木と相応な背丈のイチイが見られる。鳥やリスのお蔭である。広い森は住宅地(時に都市の近郊)を抱えているから、それらイチイはアイルランドイチイからと従来のイチイからの二つ由来が考えられる。仮に前者の場合であっても、アイルランドイチイの樹形にならないと思われる。事実、樹形の整はぬ藪から棒が多い。たまにいい素質も出る。姿の綺麗なセイヨウイチイ自生種10mを観察したことがある。雄株だった。

右;赤い果実。黄色いタイプを上に示したが、北海道の石狩地方にキミノオンコと言う黄色果実の変種がそだつそうだ。赤や黄のゼリー状実の内側に種子を隠している。 左;赤い外側が外れ落ち、種子が露出している。
     Irish Yew Taxus baccata Fastigiata
Fastigiata綴りがアイルランドイチイの、ふつう園芸種として扱われる名称。こんもりとやや細身で真っ直ぐ育つ意味だと思われる。しかし日本を含め、業者圃場には横広がりや垣根用の矮小タイプなど多くのヴァリエーションが育植されている。


もし私たち人間が赤い果実そっくり、鳥のように呑み込み、噛まずにそのまま胃と腸に送ると、種子は素直に排出される。植物は動物の内臓器官を見通して種子を作っている。こうした人間の胃腸による異物排出作用を利用するのが、麻薬マフィアである。運び屋が数十から数十個のカプセルを呑み込み、胃に蓄え隠すのだ。本人たちは気分が悪くなるそうだが、相手国又は自国に着き、無事に排便回収すると、ぼろ儲け出来る。商いには目まいや危険が伴うのである。しかし今では税関ハイテク専用スキャナーが簡単に検出するので、この運び手段は過去になりつつある。

カトウヴォルクスは見事に自殺をした。既に上述のイチイ種子の仕組み、あるいは葉や樹皮/木部にもあり得る毒効が知られていたと言うこと。種子や葉から抽出された毒液を彼は飲んだかもしれない。だが緑の種子を口に入れ、噛みつぶした可能性もある。3個以上ならば数時間に息を耐えさせる力があるそうだ。あるいは現代の尊厳死に用いられる心臓停止薬のように、心臓筋肉を麻痺させるのだろうか? 紅いシキミの実ならば、かなりの数をのまねばならないだろう。だがシキミの場合、重症になっても死に至ることは殆どないと思われるが…。

      Taxus baccata 05
左;新教会の墓地に植わる欧州イチイの雌雄の二本。背丈4~5m高、幹の太い部分は直径15㎝ほど。右個体の幹が太く見えるのは株別れ数本が重なっているため。樹齢は100年を超えるだろうか。どっさり赤い実が付くのは確か左の木だったと思う。 右;雄株の雄花(左画像の雄株でない別個体)。

イチイは奈良時代、最上位の官位`正一位又は従一位`を持つ官僚がこの樹木で作られたシャクをもったことから命名されたそうだ。シャクは30センチほどのヘラのような形の祭礼道具だ。このシャクから寸法単位`尺`が使われるようになった。アララギは別の呼名。詩歌アララギ派は昭和初めの文芸運動だと思う。現在の詩歌の主流はそのアララギを元にするそうだ。よってどなたか詩人に、アララギ語彙の背景を教えてもらわねばならない。全く私に不明だが、語音/響きから古代のゆかしさが連想されるような気がする…

セイヨウイチイと日本自生イチイとの違いはカラマツの欧日二つに例えることが出来よう。日本にはキャラボクと呼ぶ背丈の低い変種がある。大山の高みに育ち、風よけ対策のために小木として進化した独特なタイプ。これを含め北半球に10余種のイチイ仲間が数えられると言う。だがイチイ専門家たちは例えば数センチ長で数ミリ幅の小葉に無数に並ぶ気孔の細胞数によって似たものどうしとそうでないのを連続的にとらえる。DNA解析と同じで裸眼で見えない世界だから、こんにちの分類学はその父リンナエウスの時代から遙かに`進化`しているのだ。

欧州と日本のイチイは地域的に連続する殆ど数え切れない種をまとめる二つの同盟群の大将のようだ。支那からヒマヤラ、コーカサスにかけて日本イチイ同盟系、カナダから南ヨーロッパ、南部スカンディナビアまでは欧州イチイ系と言うように…だ。詳細は素人私に理解できない。そんな塩梅で、ともかく日欧の二つが日欧米で知名なのは言うまでもない。北米種はシャクに使われないが、生活用具材として伝統を持つ。これらの目で観察できる違いや特徴についてネットどこかに専門業者の説明があるかもしれない。残念ながらウィキペディアは空っぽである。

1m20cm高に留まる垣根用アイルランドイチイ園芸種。よく維持されている教会墓。この背丈で年に2度剪定されると受粉機会が無いらしく、赤い実を付けることはまずない。背丈3mほどのタイプだと、どう言うわけか、受粉して赤実を付けるイチイ垣根を見ることがある。
Taxus baccata Cor 07
イチイやモミ特有の長細い葉の裏側に白い気孔線がたいてい2本走っている。気孔の文字通り、二酸化炭素の取り入れ口で、高倍率ルーペなら確認できる。この細胞の数によって、種間差と言うか地域ごとに異なるイチイ仲間の違いを研究する。↑の数字が細胞数を示す。欧州自生の基本種同盟群の数字がおとされている。タクサス・カナデンシスと言う北米カナダグループも欧州種に近いと言う意味で書いてあるようだ、日本や支那の同盟群は地球を半回転させた地図上になる。


セイヨウイチイはエブローネン部族が活躍した時代、そんじょそこらの森に生えていた筈。教会の庭/墳墓にも育っていた。ローマ軍がガリアにでて、ブリタンニアに渡り、カンプ≒駐屯地を築き、兵と将官たちが常駐した。将軍が戦闘で倒れる場合も派遣任官中に亡くなる場合もある。すると高級将官たちはセイヨウイチイの棺桶に寝かされ葬られたのである。それが敬意で将軍を見送る習わしであったと言う。濃い茶色の心材と、白い辺材の組み合わせが美しく、材質はきめ細かく加工しやすい。一方で、重く堅牢だと言う。

セイヨウイチイ巨樹古木はドーヴァー海峡向こうの島々に多い。多いと言えど十数体だ。すべて教会領/庭園にあり、幹元周囲15mと言うお化けのような個体がある。たいてい内部がほこらになっている。従って倒壊しても年輪が数えられない。海峡手前の土地にそのような古木を見るのは稀である。過去20世紀の間に、有用な用材として伐採されつくしたと思われる。ただし原生林(はふつう欧州にない)っぽい都市部から遠い山地/山脈に研究に支障なく、どっさりと出てくるそうだ。

欧州イチイも日本イチイも本来の自生地で30m近い高みに達する。イングランド・西サセックス(Midhurst)に28m個体がある。スコットランド高地(Fortingall)には神話的物語が伝わっている。時のローマ駐在官・Pontius Pilatusの息子が遊び疲れ、イチイの根元で休む傍ら、いたずらに彼自身の名前イニシャルと年号を刻み付けたと言う。今の年号に換算すると、BC15年。するとそのイチイがなお健在ならば20世紀を超える樹齢になる。同じ個体かどうか分らぬが、該当場所と思われる地点にあるイチイは推定1500年の樹齢だそうだ。欧州樹木界で、もっとも長い生存年齢になるだろう。これに匹敵する長寿は欧州楢、別名`ナツナラとフユナラ、いわゆる`European Oakだ。この楢は300年経つと少なくとも直系1mに達する。対する欧州のイチイはせいぜい60㎝ほどではないだろうか。

さし渡し7~8㎝と5~6㎝のイチイ切断面。後者の年輪を数えると、20以上ある。ゆっくりと時間をかけて育つ樹種なのである。生産用材のためにまず造林されない所以である。例えば直系50㎝材を得るため100年も200年も待っていられない。日本独特種・杉とアスナロの生産サイクルは25~30年くらいでは…、檜はもっと長いだろうか。コウヤマキとサワラを加えると木曽五木と言われる日本主要建築材になる。これらは生産性に於いてイチイよりも国家経済上の価値が高い
Irish Yew Taxus baccata Fastigiata doorsnee
輪切り二枚に中心から外周への半径線上に細長い黒いものが見える。`放射状の節(フシ)`、あるいは`半径(に沿う)細胞群`と言えるもので、細胞が管上に繋がり成長滋養成分を蓄える器官。光合成の生産物や根からの水分/栄養分さらにマツ類ヤニなどの通路は垂直に走るが、貯蓄細胞菅は水平になっている。ナラ類では巨大な束が目立つ。針葉樹/広葉樹いずれも観察される。


日本のイチイに二つの樹木園で遭遇したことがある。10mほどと思われた。USのMassachuusettsの新教牧師ギッブスは日本のヒノキ科サワラの小さな園芸種を1897年に作った。これに勇気を得て、彼は欧州のイチイと日本のイチイ(Taxus cuspidata)の種間雑種の育種に挑んだ。1900年頃の試みである。この末裔と思われる種間雑種が1972年のコニファー(針葉樹の仲間)会議で報告されている。学名を Taxus x mediaと記述する。ハイブリッド・カラマツと同じように成長が早く、挿木で簡単にクローン個体を得られる。将来このハイブリッドはイチイ仲間の中心的植栽種になるかもしれない。

ハイブリッド・イチイも雌雄別株のはずだ。すると雌株の果実や葉にやはり毒が蓄積されるのではないか。老王が噛み潰した死に至る毒素である。ギッブス以降のハイブリッドの薬学的研究についてのレポートがきっと出ている筈。イチイ仲間はもともとスローテンポ成長だが、苗木栽培業者がアイルランドイチイやメディアにさらなる便宜を加え、重宝な庭木ラインアップを揃えている。その反対に元々の古典的樹木としての高木イチイが顧みられなくなっているのかも知れない。材木屋にまず出ることはなく、もしも出る場合は高価な珍重素材になる。個人庭園伐採ならば、たいてい薪にされるだろうか?。小細工趣味の私のような輩にもったいない。薪にされると、美しくも価値ある樹木は`すっかり毒`抜きされてしまう…
       
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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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