ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

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Politics and economics 政治/経済

Referendum & CEO`s income 国民直接選挙 とスイス航空の自沈

左右パッと見だと同じ航空会社に見える。良く見ると、ロゴが異なる。左は`前`、右は`後`である。 Swissair Bankrupt 01
スイス航空は日本でも良く知られるエアー・ブランドだった。昔の鶴マークの日航と同じ、スイス国策企業と見なされる。1995年経営危機のベルギーのサベナ航空の買収に動く。同時にポルトガル航空も傘下にして乗客航空企業五大手の一つになる勢いを示す。再生新会社・スイス国際航空雇用員数はかつての1/10、無駄と贅肉の無い合理的適正規模、と業界通の記事にある。


2001年9月11日、乗客飛行機を乗っ取り突撃自爆するテロ``ナイン・イレブン``が発生。これに世界の耳目が集中。傍ら人口わずか700万余の山岳国家スイスでは国家を揺さぶる事件が進行していた。航空業界イメージNO.1に近いスイス航空の、根も葉もないかに思われた``油を買えず機体飛べず``が現実になった。乗っ取り自爆を防ぐもっとも確実な安全策…とジョークが出そうだったが、根も葉もあるズサン風船経営実態が徐々に明らかになる。

債権側二つの大手銀行Union de Banques Suisses(英:Union Bank of Switzerland =UBS)とCredit Suisseが融資栓を堅く閉じたのである。スイス国民の誇り`おらが飛行機`が世界中空港に釘付けになり、人々は仰天して二つの銀行本社に`栓を開けろ`とデモ抗議をおこした。油を買えない事態は未曾有だが、飛行機会社を愛するこんな人々の行動も珍しい。

USAを例外にしてどの国も代表的航空会社をもつ。いわゆるflag carrierあるいは"National airline"と呼ばれる。民間だが、国家利益に関わるので、常に自国航空行政の優先的扱いを受ける。国策企業としてスタート、半官半民的な印象を受ける場合もある。そうした典型的大手はエアーフランス/ルフトハンザ/ブリティッシュエアーウェイズ/カーエルエム(オランダ航空)etcである。JAL日航もこの範疇だった。

南欧のアリタリア(伊)/イべリア(西)、カナディアン/カンタス(豪)などほか無数のナショナル・エアーラインがある。これらの中に、貧しい国家の多い低開発諸国が国営企業として航空会社を営む。文字通り国の面子になる顔である。これら100%税金に負う企業は相対的に小規模で業界競争の外にあり、大手グループ化/合併と殆ど関わらない。例えば`危険が一杯`リビア航空や良く落ちる図体大きいエアローフロート(ロシア)と共同事業をしようと言う欧米大手は存在しない。

東欧共産国家群の消滅した1990年代前期、航空業界は需要大幅伸びを予測した。新国際秩序に対応する経営理念と経営拡大策が模索され、弱者が強者に飲み込まれる戦国時代が有体になる。グループ化と言う業界再編が試みられ、何度も壊れ、経営苦の例えば伊アリタリア/西イべリア/葡TPA等はあちこち翻弄して波間に浮かぶ難破船ごときであった。初の犠牲は白耳義サベナで、生き延び努力甲斐なく倒産寸前に陥る。

スイス航空はスカディアビア航空と事業協定に挫折した後、サベナとTPA買収計画を進めた。人口わずか700万余の国家の航空会社がそれより大人口国家の代表航空企業を傘下に収めるのだ。1995年基本合意に達する。国内と国外それぞれほぼ3万名雇員をもち、スイスブランドの強力なイメージをもつスーパー優良企業だから、白耳義と葡萄牙両政府は肩の荷を下した気分だったに違いない。

サベナとTPAを加えると大手五指に入る。狭く住み辛い山岳国スイスをして、左様な企業を育てた誇らしい気持を理解できる。上述の抗議デモはそんな気持ちの発露である。しかし1995から2001年まで、地球をくまなくカバーするネットワークを持ち、主要国首都に大支店を構えるスイス航空の台所を知る人はいなかった。6万雇員の給与水準は業界で群を抜いていた。パイロットたちと幹部の人件費が営業利益の伸びを食ったとカラカイ半分で言われた。贅沢な投資がソフトウエア―子会社やジュネーブ多数関連企業含みで引き続き、いざサベナ買収費捻出の段になり、財布の底が空っぽだったそうな![脚註1]

スイス国土面積は四島日本の1/9ほどに当たる。人の口は上述のように東京都より少ない。その国にUSBやクレディット・スイスと言う世界最大資産級の銀行があり、これらが政府と共にスイス航空の大株主である。スイスフランを干し上げた`おらが飛行機`の実態がさらされ、アルペン山脈が揺れ氷河の氷解が始まったような騒動が起こった。

とばっちりを受けたのはベルフことベルギー人士である。サベナはやはり`おらが飛行機`であり、救世主になるのがスイス航空の筈だった。ブリュッセル議会は騒動の本命スイスに習い、年末まで紛糾を重ねる。結局ブリュッセル郊外ザーヴェンテムを母港とするサベナは清算され、失業率を押し上げる苦い汁を飲まねばならなかった。他欧州大手にとって、中堅一つが消えて商いし易くなったのかどうか…。

12年が流れた2013年、光陰矢の如し。機体は大きく軽くなる。ブジェット・エアーライン[脚注2]出現で大手は従来通り変わらない厳しい競争下にある。破産前のCEO(最高経営責任者)初め経営失墜のスイス航空幹部たちの退任ボーナス額が既に数年前に明らかになっていた。

スイス航空株主USBはリーマンブラザース倒産による金融危機の際、莫大な損失を計上。投資部門に於けるそれまでのやはり`風船`営業の結果。損失責任者のUSBトップ陣は辞職せざるを得なかった。辞職の`足労`として支払われる金額を「ゴールデン・ハンドシェイク」のように呼ぶ。株主と監査取締陣が退任者と握手して与える`ご褒美`の意味。さらに損失と関わりなく、自社株や老齢年金あるいは配当金と言う形を取ったボーナスになる。

倒産を導いた経営者、金融危機に冷静に対応できなかった銀行家、元CEOがサラリー年俸と別に退任時に得た特別賞与金額は50~60ミリオンスイスフランらしい。次席や専務など個人それぞれ細部は異なるだろう。だが零の数が一つ違ったとしても、普通のスイス人にとって天文学的な額に変わりはない。因みに50ミリオンスイスフランの現在為替換算すると、ほぼ51億円。

経営者の退任ボーナス習慣とこうしたゼロ並びの額は金融業界に於いて驚くべき現象でないようだ。銀行業過去30年に顕著になった超高額ボーナスは一般に公開されなかったので、ジャーナリストを含め`下々`に知る機会がなかったと言うこと。ところが21世紀に入り金融業を中心に経営責任モラルが問われ、議会によって公開法が制定されたり、徐々に透明性が高まりつつある。その結果の一つがこのスイス例になる。

モラルを欠いたボーナス額に激怒する世論が高まった。一人の小企業経営者がレフェレンダムと言う国民投票運動を始めた。彼の動機は、膨大な額をネズミ泥棒的に懐に入れる`社会悪`と並び、雇用6万名と関連会社人員を路頭に放り出した責任を問うこと。具体的内容は、馬鹿げた無能経営者への報酬を法律で規制、違反者に数年の実刑を課すると言うもの。彼の運動はレフェレンダムに必要な規定署名数を集めたのである。

スイスからこの実施が伝わると、仏外相と独SDPトップが積極的支持声明を出す。英国高級紙も「何故アメリカにレフェレンダム法が無いのか? 今や十分に下地は揃っている」とUK国内での早期実現と共に論調を揃えている。スイスでは何か懸案があると国民投票が行われる。スイス国民は慣れっこになり、関心を呼ばないテーマだと投票率が過半数を少し上回る程度らしい。今回、高投票率は期待されていない。事前予測によると68%が報酬額の法規制と違反者の実刑とを支持している。

EU圏一般で様々分野の節約と昇給凍結措置が採られている。失業保険も年金もカットされる。通貨危機による不況/経済停滞のど真中にあって、金融業の異常なボーナス習慣への批判が相次ぐ。こうした寒々しい気分をスイス68%の数字が示していると言えるだろう。

[脚註];
1.個人的経験を言うと、宣伝アイテムである機内食用テーブルウェア―で美しく使い勝手がいいのはスイス航空のセットだった。個人の好みとは言え、専門家のはしくれとしての意見。明らかなコンセプトがあり、デザインに金がかかっているのが見て取れる。当時の大韓航空やキャセイ航空の比でない。機内アイテムのデザイン/質が一般的に下がったのは`ナインイレブン`テロ以降である。
2.座席を詰め、食事を出さない。格安の短距離乗客航空企業。例;フランクフルト-ロンドン往復90ユーロー。アイルランド人のアイディアだそうだ…


   Switherlands Referendam 01

来たる週末に、スイス連邦で又もやレフェレンダムが行われるそうだ。直接民主主義と言われ、選挙資格を持つ成人すべてが意思表示を示すことが出来る。先々年、Turmspitze(=尖塔)が並ぶ宗教的建築に対する国民投票が行われた(補註1) 。2011年その時の記事を下に移行。この週末レフェンレンダム背景は長い歴史を持つ金融業トップ`天文学的`報酬の見直しに関わる。おおかたのEU政権がピリッと反応…金融業の殿さまたち冬の時代? 
************

Arabisch-muslimischen Minarettenと綴り、本来のキリスト教国家にも拘わらず、アラブ・イスラム教に属する"ミナレッテン”が林立する風景にお目にかかる。スイス で昔、これらの搭をスイスの独語で表現していたそうだ。ところが、いつの間にかミナレット/ミナレッテンと呼ぶようになった。イスラム教とその単語に見慣れったと言うこと。

チューリッヒ近くに住む我が息子の叔母が半ば怪しからんと言う表情でこう言う。「湖の手前 に搭が突っ立つミナレット(単数)、イスラムなのよ。風景破壊もいいとこ。困るわね」彼女一家はカルヴァイン新教です。ミナレッテンに ついて旧教も皆が大反対しているそうだ。

レフェレンダム元祖の連邦国家だから、喧々諤々あって、わずかの差で尖塔イスラム建築反対が多かった。バーゼルやジュネーブの西南域では建築OKが上回る。東北のチューリッヒ方面域では70~80%もの反対があった。多数民主制にのっとり ``アラブ宗教尖塔許さぬ``結論が出たわけ。

この問題は欧州の極右政党の大きな反応を呼ぶ。ポピュリズム(≒芸能的な人気取り主義)とは現在ではイスラム教と不可分の関係にある。ミナレット反対多数の結果を知った他EU圏の超保守主義または反イスラム政党が"良識ある国民判断”として歓迎したのは言うまでもない。スエーデンなど北欧は「民主主義の許容性/寛大性を逸脱する。イスラムへの偏見」と言う世論が強かったようだ。

先日ギリシャ支援に異議を唱えた独CDU 古参ウォルフガング・ボスバッハすらもスイス投票結果に否定的感想を漏らしている。メルケル宰相自身も開かれた許容度の高い民主主義を望むと述べ、CDUの気前良い路線を匂わせる感じだった。

ナインイレブンとその関連テロが、ドイツで起こっていないせいだと私は思う。このあたりはベルギー/UK/フランスと一味違う。ドイツ保守はカッコイイ所を見せたい…。アドルフ・ヒトラー狂気に戦後ずっと耐えてきた心性の裏返し、ドイツ人はこんなに開かれているんですよ…、私はそう感 じる。

スイスのレフェンレンダムが実行され、結果が明らかになると、例によってモスリム諸国が怒りだす。リビアの"酋長”がスイス製品ボイコットを提唱。彼の家族親戚一味はスイスの銀行に何十億フランを置いているにも拘わらず。奴さんが如何に好い加減に世界をもてあそび、一方それをアラブ均衡維持と石油との為に長年支援してきたのは主に西側"列強”に他ならない。着せ替え旦那にしてみれば、トリポリ陥落させたサルコジー+キャメロンのコンビ が恨めしく思え、同時に`ロクデナシの恥知らずめ`と心底思っているに違いない。

   Switherlands Referendam 02のコピー
シュヴィーツは連邦を構成するKantonと言う26地方行政区の一つ。ほぼ国土の中心に位置する。この旗から現在の国旗が作られた。裏返すと国際赤十字の旗で、その本部はスイスにある。マッターホーン(英読み)はシュヴィーツに属するようだ


[補註];
1.スピッツとはブンデスリガ(独サッ カーリーグ)等のシュート役のこと。先頭に突出して攻撃する位置のプレーヤー。空に突出する搭の先端と言う語彙からの借用。日本サッカー記事に司令塔が出てくる。Trum=塔と言うか物見櫓 (ヤグラ)から状況を見て各員へ指示を出すリーダーを指す。
鼻の尖った犬をスピッツと言うのも多分同じ…。スパイアーと言う英語彙があり、Spireは語源に近いspitzeからの匂いがする。カールスルーエ北にスパイエル(Speyer≒スパイアー=Spire)と言う小粋な町があり、双搭の司教区教会がある。これと絡む可能性あり…、尖った双塔が町の由来かもしれない。

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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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