ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

Oh every day 日々そうそう

How to make Croissant

>Wakka 01

Croissant met straal Klein

Croissant met gele straal Klein

↑クロワッサンらしく見えるイエロー・アップル・クロワッサン。素早く煮てオーブンで乾燥させた細長いリンゴ片を繰るんだもの。
↓変わりカニ型クロワッサン(後述)、緑は様々な草を混ぜこんだ生地のため。

kani Clrb form 01

1日目にフランスパンを買った。Baguetteと綴る棒型のパン。パリ・ノールの裏側は汚い駅裏街で、パン屋も小さな汚い印象だった。しばしば汚いからこそ、美味い店がある。その通りの朝早くバゲットを小脇に挟んだり手にもつ人々を見かけるのは、そう言うわけである。(補註1)

2日目にコワサンを買う。パリの上さん連中が早口(に聞こえる)にコワサン、コワサンと言う。ようく耳を澄ますと、クロワッサンに聞こえてくるような気がする。H音が無声に成るようなフランス語はてっきり分らず、それそれと指でさして求めた。朝早い客はたいていバゲットだから、指でささねばならなかった。[補註2]

左は一見、草餅に見える。草はヨモギで、ヨモギを餅に混ぜてついた餅のこと。そんな草餅ふうなクロワッサンをまだ見たことがない。世界はひろいから、もっとケッタイ奇怪な試みがあるだろう…? 
Croissant Dandelion green 021-klein
この色味は右のセイヨウタンポポ葉っぱの葉緑素。葉の量によってパン生地の色濃度が違ってくるのはお察しの通り。それに比例して味の強みも異なる。タンポポの場合は特有な苦みを生かす比率を探すこと、そして食味する人(自分や客や進呈する知人…)の好みで自在に応用しよう。


How to ものは苦労しないお手軽伝授本を指す。本題のハウ・ト・メイク・クロアッサンはわたし自身への問いかけで、ああでもないこうでもないと言う試行錯誤の報告。パン焼きも、例えば同じ焼き物`お好み焼き`も幾つかのファクターに左右される。本物の信楽や唐津が窯の温度に左右されるようにダ。窯の真ん中に置かれた大土瓶と端に置かれたオチョコとでは焼き上がりが違う。

Croissant Dandelion green 124 klein


お好み焼の場合の一番の違いファクターはプロの広く厚い鉄板と小さな家庭用鉄板。もしも料理屋の座敷にしつらえられた鉄板ならば、ちゃぶ台に置かれるコード付きお好み焼きプレートとの落差は大きい。パン焼きの肝心はオーブンである。深く大きい数段の棚を持ち、1000度前後まで温度調節できるプロ仕様と家庭用オーブンとの違い。この差は致命的で、クロワッサンに関してだけだが、標準家庭オーブンでプロ・ベーカリーのクロワッサンを焼き上げられない。

バターを包み込む方法は大まかに2つ、二つ折りと風呂敷包み。慣れればどちらでも良いけれど、この頃のロール器による簡易化のせいか、平らな生地に置く左が増えている気がする。
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手こね手作りの本物パン屋は家庭用に紹介する場合は風呂敷包みを見せるようだ。器械作りになっているが、宣伝は`昔のまま`でなければならない。風呂敷のコツは4角に開きのばした真ん中を小高く残しておくこと。なぜなら薄く伸ばしたバター(やり方は後述)を包む4片が重なる厚みに揃えるためである。


ヨーロッパ的ヴァリエーションと言えるクロワッサン変化(ヘンゲ)がある。チョコレート/ハム/乾燥果物/チーズなどを巻き込んだもの。形は三日月形と四角の2つ。後者はいわゆるクロワッサンイメージが無いため、国/地方によって`サイコロチャン`みたいな別名もある。[補註2]

Croissant語義に`ぐんぐん育つ`があるらしく、このパンを食べよと言う名前かと思う。これはトルコ国旗にある三日月と絡んでいる。オスマントルコがウィーンに迫る戦役があり、そのトルコ軍旗にあしらわれている三日月は地球の影によって出来る。月が地球の影から出てゆく時、三日月は徐々に``大きく成長する``。逆に地球の影に入る時、太陽の反射を受けた月面部分は痩せ細っていく。これが1.三日月、2、成長すると言う意味をクロワッサンに与えているらしい。

脂肪層と生地と交互に重なる甘いパンの形状は確かに三日月に似ていないこともない。特に左右を内側にまげ、全体として円弧状にすると、そう見える。三日月は人類の普遍的な天文界の形であるから、オスマン・トルコに独占してもらう必要はないのだが…。「三日月軍旗がハブスブルクのお妃に迫っている」と聞いた宮廷パン職人誰かがが、おきさきのために台所で苦心して成形中のパンを記念に「三日月」と呼んだとか…。当時、時間のかかる飛び切り豪華なパンであったようだから。

数世紀と言えど伝統は伝統だ。5㎜厚に伸ばした生地を2等辺3角形に切り分ける。1枚を底辺から巻き上げてゆく過程を考えた職人は偉大である。バターと生地を重ねる方法を確立した人はもっと偉い。何かの失敗や弾みで、フムこれは面白く且つ美味いと言うパン焼き方を見つけたのではないか。恐らく一人の天才発想で無く、パン焼く人々の日常から生み出された工夫と思われる。

アモラシア・ルスティカナと片仮名読みできる名前が左の植物。4月から5月初めにかけて咲く。ホース・ラディッシュと英語で言うらしい。普通のラディッシュは小さな赤い丸い株状大根と思っていたので、馬大根とは何ぞやと疑った。この根をすりおろした瓶入りがドイツの食品屋に必ずある。何と美味い。のちに西洋山葵(ワサビ)と聞いて納得。ワサビのように一瞬、鼻にきて頭を突き抜けない。マロ味ある芥子で、ドイツ人の好物のようだ。
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出たての葉っぱや花芽を摘み、熱湯をかけ、バター炒め。左党に結構いける。少量を破戒機と言うか、ジューサ/ブレンダ―で木端微塵にして、クロワッサン生地と共にこねる。ややグリーン・ジューシーっぽい軽いツーンとする味覚のアモラシア・ルスティカナ・クロワッサンが出来る。


私のパテントはカニのでかいハサミに生地を生成すること。三日月より遙か向うの一つの天体を蟹星雲と言う。同じ天文界だから、皆さんが知っている。超新星の残骸で、カニを彷彿させる姿をしている。英綴でCrab Nebula。スケールが大きく、想像が広がり、そして楽しい。

Prepare butter 01
unsalted butter 200g. 破れない程度のビニール袋に挟み、スリコギ/伸ばし棒で太鼓をたたくように平たくする。バターが柔らかくなると、棒を軽く左右上下に転がせ、必要寸法の四角形にしてゆく。充分な余裕あるビニール袋なら簡単に広がり、ビニールがやぶれることもない。右の状態になると余分ビニールを畳込み、冷蔵庫に保管。数十分後に固くなると、ビニールが離れやすく、生地上に乗せられる。
Croissant Dandelion green 123 発酵 klein

成形したての状態から2倍程度に発酵/膨らんだ生地。発酵時間は室温による。冬は数時間、夏は1時間程度だろうか。私は大きなビニール袋に入れ、セントラル・ヒーティング吹き出し口に乗せる。調節ダイヤルをややあげると、室温を挙げるべき温風が吹出口からビニール袋に入り、30分ほどで生地は2倍以上になる。強制的だから良くない筈だ。ビニール袋を取り去り、膨らんだ生地に少量ミルクを加えた溶卵を刷毛で全体に塗る。これを150度くらいのオーブンに入れ、5分後200にあげる。15分ほどで焼きあがる。 しかしながら家庭ごとにオーブン仕様が異なる。温度上昇時間も実際の正確な温度も極めて不正確である。経験を重ね、それぞれ異なるパン生地に応用すること。


1982年から大よそ1年半、自家製パンを焼いた。作業正味時間1時間ほどを要するパン焼き。朝に出て夕に帰る勤めから自宅業になったから可能になった。30分こね寝かせ(一次発酵)、再び15分こねる。2度目の発酵は数時間以上を置く。言い換えれば適度に膨らむまで放っておくのだ。気長に待つ辛抱心が鍛られる。一種の精神修養になる。だが、焼いても焼いても、カチカチのパンになる。良く膨らむと軽い酢っぱみが出る。それが焼きあがると芳しい。そう言う美味なるパンが時々できた。すると仕合せで至高な気分に溢れる。

そのパンを蘭語でzuurdesemと言う。仏語;levain、英語; sourdough、西班牙語;madre。本場の独逸でSauerteigと呼ぶ。イースト(パン酵母)を用いない伝統パン。近代に改良され工場生産されるようになった`イーストの原初的なかたち。Whole wheat(全粒粉)一掴みを水と合わせこねる。小瓶にいれ布で覆う。一昼夜後にプーンと香る酸味に変わる。これをズュール・デーサム/ザウエル・タイクと言う。

その一掴みタイクを500gなりの全粒粉と共に力強く(必死で)こねる。陶器焼きとパン焼きの師匠は同一人であって良い。こねる専門家であらねばならない。焼き温度をモノに合わせ微妙なコツを体得しなければならない。こねる焼くと言うのは芸術的な営為である。最大発酵性を有し場所を選ばぬ現代イーストと比較すると、Sauerteigは数倍に膨らむまで悠々たる時間を要する。台所/作業環境がこの物質(バクテリア)で満たされる時間を要すると言う意味を含む。イースト環境の作業場と並立しない。初めてまもなく、カチカチパンが続くのは左様な理由である。毎日こねた生地から明日のために少量を小瓶に採る。ザウエルタイクの基本、継続する生活リズムを感じる。

重く引き締まった酸っぱいパンはドイツの数あるパン種中の定番。キリスト遙か以前から存在するパンの原型…栄養学的に最も価値あると言われる。ドイツ地方によって老舗ブランド名がある。幾つかの一般名もあるようだ。Roggenbrotと綴るライムギパンも定番一つで、ロッゲンと組み合わせるデーサム・ブロートが存在する。「これってパンなの~」と日本からの知人が目をパチクリ。

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日本は戦後US小麦はけ口市場として機能した。それ故にUS典型しろい食パン国だった。食パンが`パン`だったのだ。白い四角な食パンは、加えてかなりの砂糖を含んでいると思われる。この柔らかく甘い食パンは同時にサンドイッチのパンで、これが日本人のパン観を形成したと考えられる。

ザウエル・タイク/シュール・デーサムは左様な日本人パン観からすると、なかなか食べ辛いだろう。力仕事する田舎ドイツ人は重い堅い酸っぱい自然パンを核にして、様々なパンを開発してきたようだ。パンのヴァラエティーと豊富な味覚に於けるトップ民族はドイツ人だと私は思う。ザイエル・タイクを基礎にしているのだから…。ミュージカル映画サウンド・オブ・ミュージックを決して上映しなかった西ドイツ(現在もTV放映されることはまず無い)だが、数あるメロディーの一つに、German breadが詠われる。これは小さな拳状のパンで、Brotchenと綴る。ブローチェンはモダンなドイツを象徴する朝食パンだと思う。この数十年知られるようになった。右の映画のお蔭も少しあるかもしれない。

``原初的``酸っぱいパンを最左翼とするなら、最右翼にあるのはクロワッサンかもしれない。言うまでもなく小豆練りアンを包み込む日本創作アンパン文化を除外する[補註4]。クロワッサンはイースト酵母による発酵力に頼り、バターをどっさり用いる。砂糖も入っている。徹底的に軽やか柔らかだ。噛む必要のない、あって無いようなパンだ。ハイ・ティーなど紅茶と組み合わせるオヤツ/ランチに供されるパンのたぐい。ホテルのbreakfastの際、クロワッサンをオレンジジュースと共に初めに食べる。その後に腹に入るパンを食べる。言わば前奏の飾りパンである。

何故、クロワッサン焼きを私が今つづけているのか。理由は1.柔らかで、噛む必要が無い。2と3は無く、最後に腹が出っ張らないだろうと言う太り防止だろうか。柔らかく甘い小さなパンは色々とある。それらは作るのも簡単。甘いがサクサクする食味感はクロワッサンで、作るのはやや複雑で時間がかかる。作り甲斐が在る。

市販と言うか、スーパーマーケット自家製も本物パン屋の中身の濃いのも悪くない。プロの作りで時々食べると美味い。だが毎日は飽きる。草餅風はない。変わりクロワッサンもたかがが知れている。柔らかく噛まずに、毎日様々を味わう試みはこうして始まったのだ。何故、噛みたくないか? 上と下の歯群を4年がかりで生成中、まだ完了していない為である。嗚呼!

【補注】
1.パンの思い出は小学校1年生の時の鮮明さが一番。二番目がこの時。字(アザナ)をアンナと言うウクライナ女との出会いの前後である。一番めは60年ほど前のコッペパン。家族4人の朝食。25センチ長、上に4本ほど斜め溝が入り両端が丸く収まっているパン。近くにパン工場があり、もちろん売店もあった。私は毎朝そこへコッペパンを買いに走った。柔らかくて、しかも焼きたての芳しさが感じられた。

2.20世紀後半まで地方は言うに及ばず、小さな町でもちょっとした都市でも英語はからっきし通じなかった。ハリウッド娯楽映画が仏蘭西映画を圧倒、栄光ある文化が滅亡すると英語による映画上映禁止法案が議会に上程された国である。向かいの島国と世界を分割し、北米大陸も独占植民する勢いを誇った国。`敵性`言語をなぜ話さねばならぬ、と言う信念が漂う。天下のパリで英語を使うような人士は見下げられるべき連中である。しこうしてパン屋も例にもれず、フランス言語以外は通じなかったのである。

21世紀のフランス大都会人種や学生は英語を理解する。とは言え、アクセントのきつい極めて不思議な外国語と言う感じ。普通の町やのどかな田舎だと、英語だと分ってもらえるが、私は使わない存じませぬ関係ありませんと言う感じになる。ほぼ日本事情に似ている。フランスも日本も大国だからである。国営サテライト局`フランス24`を観ると、フランス人は流暢な英語を話すようになったと誤解する。NHKworldと同じ国策宣伝局だから、彼らだけが流暢に話すに過ぎない。

3.フランス・欧州の本場を除くクロワッサンの展開は不明。例えば日本の初期クロワッサンの横浜や神戸のベーカりー商品。万が一、和風独特クロワッサンが開花している可能性は大きい。長い和菓子の`包み文化`は17世紀以降にネタがあるとされるクロワッサンなんぞに比較に出来ないとおもわれるから…。

4.アンパンにカレーパン。これらは日本独特である。インターナショナルに決してならない、ユニークな代物。ザウエル・タイクと縁もゆかりもないから産まれたのだ。アンパンはむしろ和菓子に、カレーパンは`カレーライス`に属する。こうした`包み込み`は日本文化の核である。従ってクロワッサンを含むパンの風景に描くべきでないだろう。

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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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