ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

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Nature 雑草 フローラ/ファウナ

ディジタリス=Digitalis=ジギタリス、指スッポリ花の妖精神話

アナログ(Analog)からディジタル(Digital)へ…。アナログは時計針が進んで行くような量的な表示を言う。ディジタルは数字表示と解される。量的表示から数字表示の時代…。とすると、あまりにも単純だ。しかし普段の暮らしは、通勤する交通体系も役所手続きも、映画の世界配給も、全てがディジタル化され効率よく安価になっている。と言う塩梅を踏まえ、今後はディジタル化の世界と言うに留めて先に進む。

森のたたずまい;ディジタリス群。林床のやや暗い部分を好む。
Digitalis col 02

ディジタルはデジタルとも書かれる。この元になるギリシャ綴りは指を意味するdigitus。派生語の一つDigitalisが指をすっぽり包む形状の植物属名になった。その仮名そのままを和名にするならば、ディジタリス又はデジタリスとなるだろう。ところが通り名はシに点々を打つジと、giをギと読み「ジギ」タリスとしている。

左;線路両側の斜面に賑やかに出ている。右;廃線路はお気に入りの場所…。分らないのは線路の上部はポカッとあいた空であること
Digitalis col 01
平均1.5m高に成る植物は線路沿いに旅をして増殖する知恵を持つようだ。

Digitalis purpurea が横文字名。日本列島に自生しないため、ディジタリス属またはジギタリス属か? 前者だとコンピューター関連`無機`的機械製品の分類みたいな語感になる。`有機`的生物だから、それではゴッチャになるため、先人は仮名ジギタリスを採用したのかもしれない。この有毒植物は恐らく明治期に導入または知見を得たと思われる。明治/大正期にディジタル概念は知られず、たまたまジギタリスと読み、仮名化したのだろう。日本にない植物だから、素直に普及したと考えられる。逆に言うと、早いもの勝ちで、怪我の功名的な区別化命名になっている。

Digitalis col 03
紫と白の二つの花が在る。森と線路沿いのグループをよく見ると、濃い紫から白までに、様々な中間色が見られる。

purpureaはパープル色、即ち紫。紫色個体が70%ほどを占めるので、基本色と考え、種名として採用した。10本を数え、うち7本が紫と言う個人的観察から。画像無しだが、濃紅紫の個体が出ることもある。つまりパープレア種は紅→紫→桃→白と言うカラースキームを持っている。殆ど2年生で地下茎増殖をせず、撒き散らされる種から育つ。すると色に関し、多様な遺伝子の組み合わせが出来る。濃い薄いももちろん個体ごとの遺伝子に左右される。

Digitalis col 05
2mを悠に越す個体。下半分に付く葉群が立派。花色は薄紫からピンク、それらの混じりもある。

Digitalis purpurea `Alba`と綴る変種は保護種とされる。真っ白が珍重され、おそらく上に見られる白個体を選択育種して`白`を固定した園芸的なものと憶測する。誰が保護種にしたのか、子細不明だ。私の出鱈目歩け歩け観察からすれば、奇妙なトンチンカンに聞こえる。この季節に見ようと思えば、何処にでも見られるのだから。商い人種にとって重要なのだろう。普通の紫より無垢な純白を好む人もいる。白は紫より儲けが良いと言う算段もあろうか。残念なことに、いくら固定しても、店で購入された`白`は野外からの他家受粉によって、次世代も白に留まる確率は少ない。

パープレア種と異なる色味をベルギー・アルデンネ山地林縁で見たことがある。やや小型の別種(D.lutea)の黄色花を咲かせる。英語だとイエロー・ジギタリスと言うべき種である。他に大きな目立つ花のD.grandifloraと綴る黄色種がある。有名なのはD.lanataと綴るランタナあるいはウール(羊毛)ジギタリスと言われる仲間かもしれない。いずれも`南東`欧州`当たりの自生種と思われ、温暖化によってルクセンブルグ域に進出しだした可能性はある。最後例は人気があるらしく北半球の庭=植物園あまねく広がっているらしい。

Digitalis col 01
これらを含め世界に20余種のジギタリス仲間が知られるそうだ。全てが自生域の植物園に展示されている筈だ。古参パープレアは10数種の園芸種が開発され、ランタナ(ウール)やルテア(イエロー)などジギタリスの色変わり創作品種もあり、それらは世界市場に出回っている。日本気候/土壌に順応するタイプが圃場名を冠して市販されている可能性は大きい。草本は新天地への適応力、と言うか、細部で異なる形質を木本より得やすいような気がする。ジギタリスも20余種から、多くの愛好家によって広く深い世界になるかもしれない。

キツネの手袋と言う言葉を聞いた方は多いだろう。これはジギタリスの日本語名である。foxglovesと言う英語彙の訳。島国人はジギタリスを11世紀ノルマン侵入頃からキツネの手袋と呼んでいたそうだ。文献調べの好事家によると、どうやらこの原型はfolksである。FoxはFolksから訛りと言う分け。

古来ウェールズの民は妖精だったらしい。可愛い紫のベル(鐘)=ジギタリスの花をこよなく愛した妖精がウェールズ民族の祖先だったと言う物語。gloves=手袋はギリシャ語源と同じ連想。そのfolk=人々の手袋と言う呼び名がいつの間にかブリテン何処にでも棲息するキツネにすり替わったと言うのだ。私はキツネよりも`人々`説に信憑性を感じる。我が民は`妖精の出`と言うフェアーテイルが綺麗に響く…。

`キツネの手袋`にはもう一つの化かしの意味がある。ジギタリスの化かしは、薬効性である。有毒と言われながら、毒成分の医薬効果が古来信じられてきた。妖精時代から薬効作用が実際に用いられてきた節がある。19世紀半ばから成分抽出され、2年目ジギタリス葉が需要対象。医薬企業のためにパープレアと並びウール・ジギタリスの栽培が盛んと言われる。昔から言い伝えを継承し、心臓病ほかへの研究開発らしい。

更にもう一つの化かし、と言うかメタモルフォーゼ↓がある。一目瞭然、穂状花序トップに出る珍しい頭花。下部に付く普通花の左右対称と異なる多面軸相称の大きい花。

pelorische topbloem col 015


pelorische topbloem col 06
普通の花に於ける内部(雄蕊4本+1本花柱)と愕片(5枚)

pelorische topbloem col 010小 

以上二枚簡単な図像ながら、説明を用さず、直ぐに分る変化/変態である。トップ・フラワー付きのジギタリスの中に、それぞれ個性があるようだ。外観だけの観察に過ぎないが、個体ごとに中心をとおる軸数が異なる。次例をご覧あれ。
pelorische topbloem col 002-1 小

右2つの文字通りのパープレア紫に比べ、頭花付きの左二つ個体が白花である。頭花をつける変態例は何故か`白`または白っぽい傾向が強いのである。色素と形態変化との相関関係があるような印象を受ける。具体的証拠が見つかれば面白い。それには一定の変態個体数の観察が必要だ。

統計的分析は生物専攻の学生が学ぶ基本事項と聞く。こまめにフィールドに出て、周辺環境(≒ビオトープ)を調査、全ての種を計測、個体それぞれをマーキングして、、、と言う作業。昔、湿原保存地の1㎡に出る植生調査に加わったことがある。1㎡に過ぎないが、気長な根気勝負だ。

ジギタリス頭花変態の場合、まず出会う必要がある。100や1000個体ならば、ゼロだろう。1万ならどうだろう? 広い暗さに条を成して差し込む光の森、半影の林縁や雑木林、線路沿い斜面を目を凝らして探索するなんて暇は誰も持たない。空の青さを見ながら、梢の鳥のさえずりを聞きながら、のほほんと歩いている時に、アレあれは何なの? と言う感じで遭遇するしかない代物なのだ。

妖精がジギタリスの周りを飛び交う頃から、人々は時折、美しい尋常でないトップ・フラワーを知っていた筈。ときどきの時代の観察者に書きとどめられ、存在が知られてきた。相応の理屈も19世紀半ば以降、成分分析と共に用意されてきた。こんにちのミクロなゲノム調査は、それでも難しい。現物が無ければ不可能だから。

Digitalis col 06

``何のとりえもない平凡な指スッポリ花``と言われるのがパープレアである。平凡ゆえに、生命力に溢れ、他を圧して主力になる。草木の英文本にしばしば見られるCommonと言う語は左様な意味である。この野草が風に押され、行きつ戻りつ揺れているのを見ると、何処にでも出る強靭さを理解されるだろう。

コモンの他にレイディーを付ける別名がある。高貴な女性を象徴する色からと思われる。レイディー・フォックスグローブズと聞くと、イングリッシュ・ブルーベリーを思い浮かべる。濃青の釣鐘草である。鐘の筒部はパープレアほど大きくなく、幼子の指も入らない。背丈も精々50センチほどの可愛い植物。このイングランドの釣鐘草をウェールズ妖精神話のジギタリスに並べると、スコットランドのキキョウ科の釣鐘草も上げねばならない。こちらにも紫と白花がある。グレイトブリテン諸島のジギタリスと似たものは6~8月に見られる。

1個体で数百の花と無限と思われる種子を作る。花数を数えたことはないが、2.5mの半分が花で覆われると、なかなかの壮観さである。日本列島の何処かで、庭から逃げ出した種子が元気に育ち大群を作るかもしれない。すると運が良ければ、トップ・フラワーを廻って踊る妖精を見られるだろう。

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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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