ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

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Here&there lands 雑なるアレコレ大地

Loreley & Bobsleigh  [ローレライのメルヘン収支決算]

先週カンボジア首都プノンペンでユネスコ世界遺産会議があったそうだ。各国持ち込み遺産候補で溢れると言う。一方で、過去に選定された場所が維持管理の不備、偽デッチアゲ情報、約束違反などの理由で取り消されたりするらしい。経済=観光がかかっているために、ユネスコは思わぬ権威を集めることになった。

何処の国の誰が偉いさん風を吹かしている? とライナー・クネヒト氏がぼやいている。85年前オットー・クネヒトが立ち上げたコンクリ―壁面材会社を経営する人で、数年前レジャー産業に進出。と言っても単純な`コンクリート`基礎の上にステンレス半円鋼管を乗せたボブスレー・バーンを斜面に作ったに過ぎない。サマー・レジャーである。芝生のスキージャンプと同じで夏に行えるウィンタースポーツ、その遊戯施設である。

バーンと言うかトラックは、かのローレライの岩壁にあると言う。ローレライ神話の場所ゆえに、世界遺産の品格に関わる。従って撤去するようにとユネスコ委員会が勧告したのである。ラインランド・プファルツ州政府の審査承認を得た事業であるから、州政府の方針と関わる。ライン川中部渓谷の北(上)半分は州が世界に誇る観光地である(補註1)。つまりブドウ栽培と並ぶ州の重要財源なのである。

美貌のローレライが船びとを魅了して水底に引きずりこんだ岩壁
Lorelei 04
ボブスレーバーンはこの範囲に見えない。


↓;Loreley/ローレライの日本語詩付き楽譜。これを見ながら習ったのは中学だった。オタマジャクシを読める筈はなかったが、聴きよう聞き真似で半世紀後にメロディーを覚えている。教育用の唱歌と言うのは`大した`力持ちである。
Loreley liedje
20世紀後半、ドイツ国内ですら日本`ローレライ`知名度に及ばなかったと思われる。教科書になく、歌う機会はない。ギムナジウムのある一行とサウンドオブミュージックやローレライの歌について話した時、みんなキョトンとしていた。エルビス・プレスリーのロックンロールが遙かに巷に溢れ、ビートルズ常識の時代…。復興経済とライン川の観光、さらに世紀末のクラシック歌謡の見直しと共に、ハインリッヒ・ハイネ(Christian Johann Heinrich Heine )による歌詞がフリードリッヒ・ジルッヒャー(Friedrich Silcher)の曲にのって見直されるようになった。これをひと助けしたのが蘭リンブルフ州マーストリヒトのヴァイオリン弾き・アンドレ―・リウ(André Rieu)。クラシック音楽を言わば大衆化した人で、EU圏特に独仏で大成功を収めている。ヨハン・シュトラウスを中心にしつつ、例えば'Die Loreley'を彼自身の交響楽団で演奏する。楽団の女性たちは常に優雅クラシックドレス着用。スタジアムや都市の広場を埋める大観衆を前にローレライのメロディーが流れる。かのUS売れっ子ブリットニー・スピーアズ(Britney Jean Spears)を凌ぐ売上を誇る。世界ミュージッシャンNo.5に入るビジネスだから、TV放映などを通じるローレライの普及ぶりが想像されよう。

左下;ラインラント・プファルツ(Pheinland Pfalz)州の`上側中流部ライン渓谷`図。上部コブレンツKoblenzから下部ルーデンスハイム(Rüdesheim am Rhein)までのほぼ65㎞。川面から見上げる高みに、過去1000年間に築かれた砦(城)/僧院/教会が並ぶ。約40を数えるからほぼ1.5㎞ごとにある勘定になる。2002年にそれらの建造物と渓谷とが一括に二ユネスコ世界遺産として認定されている。その40余の対象が個々に遺産として登録されているとは考えにくい。ユネスコ警告と州政府政策の争い…しばらくの猶予期間があろうが、どう落ち着くだろう。

Lorelei 03

手前にブドウ園。連邦16州の内、ワイン産業省を持つのはこの州だけである。ワイン大臣がいるのだから、ブドウ栽培面積は他を圧して大きいそうだ。温暖化でブドウ栽培の最適緯度が北にシフトしている。イタリア/フランスの伝統葡萄農家が憂えている。その最適緯度は中部ライン渓谷からコブレンツでラインに入るモーゼルMosell、さらにラーンLahnやナーエNaheなど河川を含むドイツ南部になるだろう。既に名産ワイン産地であり、いっそう勢いがつく。


同族会社クネヒトの遊戯施設がそのまま留まる場合、世界遺産資格を失う可能性はある。資格を失うと、ライン中流渓谷の観光客が減るだろうか? 国連`賢者`寄り集まりの`正義`に屈するべきだろうか。岸壁からのボブスレー・トラックまでの距離と、互いに干渉しない調査結果をユネスコに提出、ネゴ(≒政治工作)する余地があろう[補註2]。 

ライン本流が左側から手前に流れている。モーゼル川が右奥からラインに合流する。中州の先端部分に大きな皇帝ウィリヘルム1世像(Wilhelm Friedrich Ludwig:22-03-1797~09-03-1888)が立つ。諸侯領寄り集まりをドイツ帝国として統一した初代皇帝。宰相ビスマルク(Otto von Bismarck)を筆頭にするプロイセン家臣の有能さ故である。コブレンツ名だたる観光地。
Lorelei 01
ラインラント・プファルツ州のわずかな部分だが、ラインに流れこむ支流ネットワークが見て取れる。ブドウ栽培に欠かせぬ背景である。

かつてコブレンツ市は国際ガーデン博覧会を持った。相応な見本市なら、会場を俯瞰したり、入場の便宜のためにケーブル/ゴンドラを設置するのがこの頃の常識である。ガーデン博の際も、市街からライン川を越えて対岸高みの会場までケーブルカーが設営された。催しが終われば、ライン景観保持のために撤去する方針だった。しかし観光アトラクションとして人気を集め撤去方針を中止したようだ。コブレンツは世界遺産40余アイテム域の北端にひっかかっている。当局はユネスコ恐るるに足らずと見たのだろうか。

2009年ドレスデン市の世界遺産`18㎞エルベ川渓谷`が資格を失っている。ドレスデンはエルベの谷に栄えたザクセンSachsen州の核古都だ。東独時代の古色を一新すべき、21世紀になり様々なインフラ基幹プロジェクトが展開された。知られるザクセン候宮殿再建を別にして、その一つとしてエルベをまたぐ橋梁計画も構想された。ユネスコは大反対だった。東独からの復興/経済活性が第一だから、連邦も州も市も計画に前向き。順調に実施された。警告を発し`面子を失った`格好のユネスコは`遺産資格`を抹消した。[補註3]

コブレンツのケーブル存続は`クネヒト家`によるボブスレー施設と共にプノンペン会議の議題に上がった筈だ。州政府の担当部門によると、コブレンツ・ケーブルは2026年まで暫定的に承認されたと言う。13年後であるから、寿命に遠いとしても実質的な`更新/見直し`即ち事業アップデイト時期と言える。手短に言えば、ユネスコはケーブル存続をOKしたと見なして良い。
>Lorelei 02
↑切り立った崖とボブスレー・トラックの組み合わせを見るならば、ユネスコの面々でなくとも、チョット興ざめする。もしもこの二つ写真のように、崖上部分からステンレス鋼鈑が蛇行しているならば、世界遺産の名に値しないと納得できるのだが…

なじかは知らねど 心わびて
  昔の伝えは そぞろ身にしむ
  さびしく暮れゆく ラインの流れ
  入日に山々 あかく映ゆる

万人に知られる歌詞は近藤 朔風(コンドウ サクフウ)による。本名・逸五郎、酒好きな訳詩家で肝臓を患った。35才(明治13-大正4年)早逝したのが惜しまれる。1番歌詞初め2行はハイネ原詩を忠実に移している。後半は全詩からの語彙/抒情を取り入れたもの。文語体らしからぬ平易な作詞で、誰にも分りやすい。美しい訳詞でハイネと伍する格調/雰囲気を持っている。文部省唱歌に採用された理由の三分の一くらいはこの歌詞ゆえかも知れない。[補註4]

朔風の言葉と憂いを秘めるメロディーのお蔭で、日本人がライン中部渓谷を訪ねる。森鴎外はこの崖を初めて訪れた同胞の一人に違いない。文豪に続く日本人観光客は東洋からくる最大グループであるそうな。さもあらむ。我が村の近くにラインに沿う`ローマ街道`があり、砦の連なりとカエサル時代ローマ人生活を見聞できる。だが同胞と出会ったことはまだない。そうした観光街道ルートは連邦いたる所に設定されているが、ローレライ/ライン下りに並ぶ日本人の関心はバイエルン・ロマン街道(Romantische Straße)に集まるっているようだ。

先の復活祭休暇にローレライのボブスレーバーンを滑り降りたのは3万人だと言う。寒い日和だった。もし普通の年の夏日和ならば、10倍の利用者になったかもしれない。楽しむ利用者の巾は距離や斜度による条件に左右されるだろうが、曇天3万なら、悪くない商売ではないか。参照;上空からの俯瞰→ http://goo.gl/maps/YSZiV

壁面パネルの建材製造企業クネヒトは確固たる多角化経営方針を持っているかもしれない。ファイバー・グラスなど素材開発とコンクリートあるいはステンレスの組み合わせ…、軽量にしてかつ強靭な土木建材サプライヤーとしての展開。そしてライナー・クネヒト氏は孫や子供たちへの楽しい贈り物を考えたのかもしれない。`滑り台`はレジャアー施設の定番の一つ。大小を問わず連邦中のゲマイン(基本行政単位=市町村)に必ずオープンやトンネル状のくるくる回りの滑り台がある。加えてスポーツ・ボブスレー/リージェはドイツの得意種目。五輪のメダルはたいていドイツがかっさらう。他国に比べると、人気の高いスポーツ。かくして半ば必然的に、滑り台事業部が生れ、最適立地としてローレライ山頂部が選ばれたのではないか。

このアイディアは州政府に歓迎されたようだ。ウインタースポーツのサマー化はトレンドでもある。`国お越し`と言うか地元活性が葡萄とライン遊覧の伝統だけに居座っていてはならない。こうしてローレライのレジャーイヴェントは誕生した。もし施設撤去の場合、投資額と今後の年間売り上げ(≒利益)を、州政府はクネヒトに賠償しなければならないだろう。あるいは他への引っ越しも考えられる。するとローレライと相乗効果が消えることになる。

カンボジア世界遺産会議の撤去勧告は、お伽話にまつわる小さなドタバタ。ひるがえって、それが現代のメルヘンと言うことかも知れない。ハインリッヒ・ハイネは1番の3行目にEin Märchen aus alten Zeitenと詠んでいる。古い時代から続くメルヘン。水面から130m高に突き出る崖は昔から危険な曲がり角で、船事故が絶えなかったらしい。古代から近代まで様々なメルヘンが作られたようだ。

遺産資格抹消は65㎞内のすべてに及ぶから、州政府は頭が痛い。天下のライン渓谷がたかがユネスコなんぞに頼るとは情けない、と言う声もある。かたやクネヒト[補註5]への補償額だ。さほどで無いと思われるが、このユーロー危機にあって又もや州民からお小言をもらうのも避けたいだろう。前回選挙で保守キリスト教民主(CDU)を辛うじて上回り、社会民主党(SPD)+緑環境党(Grünen)連立政権がこの収支決算をどうまとめるか、見どころである。

【補注】;
1.中部渓谷の南半分は隣り合うバイエルンやヘッセンとの州境を流れる。さらに南のフランスとドイツ(バイエルン)国境になる部分を含むのか?不明。コブレンツから北流しケルン/デュッセルドルフ/ディスブルク等を通過する部分は、すると`下部渓谷`になる。しかし山地より平野部の感じ故に、渓谷を使わないのかもしれない。
USでは川が流れる平野部を渓谷(Valley)と呼称する。水が大地を流れると、水際が削られる。数十センチから数メートルまで。それは日本山岳地/ロッキー山脈/ライン中部などの渓谷のひな形、と言うか相似形である。左様な塩梅で、大河川を悠々と流れさしめる広大な平野部を`谷=valley`と表現する。ミシシッピー・ヴァレーと聞く日本人は首をひねるのだが…。

2.国連に幾つの下位専門部があるか知らない。人権や難民を扱う部門の事。委員会と言うのか局と言うのか知らない。とまれそれらのボスは国連総長が指名するように思われる。自薦他薦のポスト取り合戦が繰り広げられる。12年蘭首相を務めたルッベルスはNATO委員長にまず立候補、それならずして、`盟友`である国連総長コッヒー・アナンと話をして難民担当ボスに収まった。彼の補佐女性職員2名からSexual harassment訴訟を受けスッタモンダ。アナンの援護を受けたが任期半ばで辞任。いろいろ回顧談で、委員会勧告や決定の手続きが個人裁量でなされる場合が多いと語っている。渓谷の資格抹消は委員会ボスまたは古参委員たちの差配に影響されると言うこと。ドイツ人がその一人なら、かなり融通が利く筈。

3.世界遺産会議は定期的に開催される。委員資格の詳細を知らない。印象を書くと、国連を核にする国際機関と言うのは不思議な存在である。国際公務員と言われる連中が高給を食んでいる。各国が国の面子にかけて、最高公務員職に自国官僚を送り込む場合が多い。一般職員は公募され、採用されるとあたかも永久雇用であるかのように組織内あるいは関連国際機関を渡り歩く例が多い。一般より遙かに様々な特典があり、元職員リタイア―した某が`ちょっと止められない`待遇と公言している。EU公務員も同様で、ユーロー危機/不況に合って、改革が話題になる。裏返しに言えば、国際公務員は甘やかされ過ぎなのだ。世間知らずの別世界人…。

4 ローレライの詩/歌、その背景について詳しい音楽MP3サイト下記を参照されたい。
http://duarbo.air-nifty.com/songs/2007/01/die_loreley_61d7.html
二木(フタツギ)紘三(コウゾウ)さんが主宰される天下逸品の歌謡/民謡メロディーサイトである。氏の人となりが余すところなく発揮されている。品があり、ほのぼのと温かい。熟年の憩いの場所としてお薦めする。
(上記URLをコピーし、貼り付けると、氏の演奏するメロディー・ローレライが流れる)

5.Knecht:召使。めしつかいの概念は広い。英王室の女王の身の回りの世話をする召使は lady-in-waiting と呼ばれる。高位の女性である。給料無しの研修生/学生を言う例もあり、半ば知識人である。一般に、家事手伝い/奉公人・下働きを指す。クネヒト姓は多い。この姓を持つ人がイヤと感じているかどうか? まだ聞いたことが無い。もっとひどい苗字が沢山ある。法的変更手続きに至らず、甘んじてOKと言う相対的バランス感覚…。
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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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