ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

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Nostalgic Melody&Film 懐メロ&フィルム

白バラの女王 The White Queen [前篇]

The White Queenが18日に幕を閉じた。BBConeの日曜日22時から1時間、10回のエピソーデドラマだった。予算£25ミリオン(35~40億円ほど)、撮影日数120。これには地下牢/宮殿インテリア/要塞/城など250のセット、さらに12回の宮中晩餐会と2回の載冠式を含む。殆どはベルギーのブルッフェ(仏語;ブルージュ)で制作撮影されたので、全スタッフ滞在や戦闘シーンにおける多数の馬や人の調達、歴史的建築使用のコストが含まれる。35億円をやりくりする財務スタッフはフーフーしなければならない。それ故、前線駐屯地シーンにおける軍馬用干し草が微々たる貧しさだったりする。コステュームは視聴者を引き付ける重要ファクターだが、華麗なる王女ドレスのバックに中世に存在しない生地が使われたり、ジッパーらしき縫製が見えたり、お馴染み制作余話が生まれる。二つヴァージョンがあり、一つはBBC用の自国民/欧州版。もう一つはセックスシーンを上積みしたUS市場版。[補註1]

ユーラシア大陸を挟み、東端の日本列島と西端のブリテン諸島が向かい合っている。地理的かつ歴史的に、共通性と対照性を有する。紅白の花に限ってみると、東はウメ、西はバラになる。前者にウメ戦争は起こらなかった。後者にバラ戦争が起った。
Roses marks

10のエピソード中、所用のため数度を見逃している。結論を先に書く。NHKの大河時代劇幾つかをを30数年前に垣間見ただけだが、その記憶から`白い女王`物語は一見、NHK的大仰な仕掛けと言うか鳴り物入り番組に似ている。脚本はおおかたに受けるように、巧みに`イージー`に書かれているが、現代的な台詞やり取りがヴィヴィッドで面白い。

昔NHKの将軍臨席の会議場面;武将たち(役者)のたいそうな物言いと動作を思い出す。あれとブリテンコスティームドラマとの差は大きい。エドワードと家臣の会話は軽く、彼らの出陣風景はフットボール試合に出かけるかのような雰囲気。いずれも帯に短し、たすきに長し…。視聴率を稼がねばならぬから左様な塩梅になる。その意味で、白バラのクイーンは良くできている。原作は`赤い女王と王様作りの娘たち`を含む「従兄弟たちの戦争」シリーズの同名小説。作家はフィリッパ・グレゴリー(Philippa Gregory 58才)。

時代はプランタジネット朝15世紀後半。薔薇戦争のさわりである。イングランド王エドワード3世(1312-1377)が丈夫な成人まで育った息子たち(確か)5人も作り、彼等の末裔が互いに王冠をめざし、謀略/裏切り/親兄弟の抗争/殺人/戦いを繰り返す。ほぼ30年の期間だ。一族が配分された領地二つの町の家系名に分かれ、互いに叔父/叔母、従兄弟/従姉妹にも拘らず、生死をかけて入り乱れる。目的は王位を得ること。手短に言うなら、王冠争奪合戦に他ならない。(あゝ愚かなりや!)

日本の室町時代、応仁元年(1467年)から文明9年(1477年)まで続き、京都を燃え滓の廃墟にした応仁の乱とほぼ重なると考えて良いだろう。またはその前後30年である。将軍職・足利家の親兄弟・従兄弟が管領・細川と山名さらに親族諸勢力の思惑と複雑に絡み合い、将軍職を取り合うのが応仁の乱であろう。南朝と北朝のいさかいがその前哨戦にあり、将軍-守護職の治世システムが崩れていく過程の出来事…そして応仁の乱後の、血沸き肉躍る地方国家の時代、言い換えれば戦国の世を招く直前の30年である。

The rose war 02

1464年ヨーク家のエドワード(22)は従兄弟のリチャード・ネヴィル伯(38)(Richard Neville;1428–14718)の応援を得て、ランカスター家の王ヘンリー6世に挑んだ。勝ち戦を続ける途中、エリザベス・ウッドヴィル(27)に遭遇。ウッドヴィル家は熱心でないランカスタ-家を支持する中位の貴族。エリザベスの亭主ジョン・グレイ卿は3年前の2月に戦死。二人の息子と母親ジャックエッタと共に上がりの少ない領地で暮らしていた。ランカスター側の資産に乏しい子持ち未亡人で、王位争奪戦と殆ど無関係な女性に過ぎない。

エリザベスは、しかし、プランタジネット朝を二分する薔薇戦争の主役に躍り出る。なぜならエドワードが`重い`瞼の彼女に一目ぼれした。重いというのは、1枚きりの絵から分るように、極めて目立つ瞼の落ち込み(二重まぶた)を指す。ヨーク家の参謀且つ軍総司令官と言えるリチャード了承をえて、当時マーチ辺境伯肩書き持ちのエドワードとエリザベスは密かに結婚をする[補註2]。介添証人は彼女の母親だけだった。彼の惚れっぷりは突然の病死まで続いた…、と歴史(小説)家サラ・クリストウッドが力説して、さらに曰く;その時代 no,1と言う稀に見る美貌が5才下の若者を虜にしたのよ。[補註4]

エリザベスを演じるのはレベッカ・ファーガソン。スエーデンの女優で、母親がブリテンだから二言語使いの人。西と北ゲルマン言語グループだから、才能でも器用でも無く、普通に見られる複数語使い。だが演技も個性も光っている。あと二人の重要女優配役がある。エリザベスとずっと付かず離れず、薔薇戦争このさわり部分のランカスターサイド中心人物マーガレット・ビューフォート;1443–1509)。そして先述したリチャード・ネヴィルの次女で、ランカスターとヨークの間を父親の思惑で歩み、のちヨーク家とプランタジネット朝との最後の王になるリチャード3世コンソートとして女王冠をかぶるアン・ネヴィル

アマンダ・ヘイル(31)がビューフォートを演じる。スペイン・ハプスブルグ系と同じシャクリアゴと口元そして視線の動き、これらのコンビネーションが秀逸。この役者を観る価値ありダ。アンは小柄なフェイ・マルセイ(27)が演じる。彼女はひょっとするとこの役で弾みがつくかもしれない。脚本は、エリザベスと対照させてアンをかなりの悪女に仕立てている。憎まれ役をきりっとした顔つきで堂々と演じている。

The rose war 03


ウォーウィック16代伯リチャードは戦死するまでの短期間、ヨークからランカスターに乗り換えた。従兄弟エドワード外交に同調できなかったのだ。足利将軍職の取りごっこも全く同じ寝返り/出戻り/再裏切り…が繰り返し起こっている。10年前エドワードとリチャードの二人の父親はランカスター軍に敗北、いずれも戦死。翌1461年3月、息子たちは逃げ延びたフランスから再上陸、バラ戦争最大戦死数(2万8千)を記録するタートン戦役にて勝利。

以降9年間のヨーク朝が続く。若きエドワードはこの間に年上女房エリザベスを見初め秘密結婚をする。リチャードはその結婚や治世に納得せず、ランカスター側ヘンリー6世/アンジョーのマーガレットの後援者になる。結果的にヘンリー半年の王位だったが、リチャードはこれゆえに`Warwick the Kingmaker`字名で薔薇戦争史に名をとどめている。歴史に王を作る人は一杯いるので固有貴族名がついている。

彼の長女イザベラはエドワードの弟ジョージと結婚、次女アンは初めヘンリー6世とアンジョーのマーガレット夫婦の世継ぎ(これもエドワード)と結婚。1470年10月、ヘンリーとキングメーカー連合軍に追われ再び大陸(ブルゴーニュ公の庇護)に逃げたエリザベス旦那が翌年4月バーネットにて、5月テュークスベリーにて、キャンペーンを開始。初め小勢から徐々に裸足の兵を集め、以前のヨーク家支持貴族勢力も集めた。バーネットでヘンリー世継ぎ12才エドワードが戦死。5月にキングメーカー・リチャードも有力ランカスター貴族等と共に戦死した。

世継ぎの妻だったアンはしばらく捕らわれた後、姉イザベラ旦那で王の弟・クラーレンス伯の預かりになる。クラーレンスはキングメーカーと共にヘンリー6世側だったが、義父を離れヨーク家つまり兄エドワードと弟リチャード側に戻っていたのだ。身柄あずかりのアンは従って姉イザベラと共に暮らし、事実上ヨーク宮廷を彩る女性の一人と言うこと。父を失った彼女たちはその豊かな所領を継承し裕福な貴族姉妹であった。

1471年は文明3年、足利義政(1449年-1473年)の肩入れによる東軍が優勢になった年である。将軍/管領/守護が絡みもつれ、正室・日野富子がボンボン旦那の代りに息子・義尚の将軍擁立に暗躍しつつある年。諸国の武将たちは東軍・細川勝元か西軍・山名宗全に組みし、視界不明な複雑な政治と戦争情勢だったと思われる。

義政をエドワード4世に比較することは出来ない。なぜなら1471年以降、イングランドは平和になるのである。十年余の国内の落ち着き。宿敵スコットランド/ルイ11世フランスに対する外交攻勢をとれる言わば`余裕`が生まれるのである。ランカスター陣営の弱体化は、辛抱つよいマーガレット・ビューフォートがエリザベス・ウッドヴィル宮廷に入る状況を促すのである。

マーガレットはlady-in-waitingと言われるが、彼女の任務は子供たちの養育である。付き人は普通、女王の世話をする女官で、高位な貴族の配偶者や未亡人である。かつて若きエリザベス・ウッドヴィルもランカスター朝の女王アンジョーのマーガレットの付き人チームの一人だった。後の16世紀前半ヘンリー8世の入れ替わり立ち代りした妻たちの殆どは先代女王のlady-in-waitingである。ヘンリー8世の場合、普段みる若い女性に惚れた(チョッカイだした)に過ぎない面がある。

エリザベスはエドワードとの3人目の子を、先年1470年に産んだ。それが世継・将来のエドワード5世になる。十名の子を産み、先夫との2名を加え、合計12名の母親である。筆頭女官マーガレットの一人男子だけは従って例外になる。エリザベスとマーガレット、二人の成熟女性は政治志向をちがえても人間的な関係を築いたと思われる。それはイングランド王家がプンタジネットからチューダーに切り替わる時、判明することになる。

The White queen 051

翌1472年アンはヨーク家3男リチャードと再婚。ヨーク三兄弟とネヴィル姉妹、女王であるエリザベスとマーガレットの渦を巻く宮廷生活が続く。4年後、ジョージの妻イザベラが産後に亡くなる。 衛生管理が不十分な中世に珍しくないが、夫クラーレンス伯ジョージは毒殺と主張。彼は兄への反逆心と弟への懐疑心に悩み、精神不安定による粗暴な行為が目立つようになる。

ジョージは王によって僧院そしてロンドン塔に幽閉され、反逆罪の有罪判決を受ける。ドラマはアンの謀略を匂わせる。エドワード跡目狙いの次男を除くこと。それはリチャード載冠とアン自身の女王への野望だ。ジョージはマルヴァジアと言うイタリア・ブレンドワイン樽に頭を押し込まれ溺死させられる。こうした場面は見せ場である。歴史上めずらしい出来事だから、丁寧に細工して撮りあげている。演ずる役者の性根と言うべきか。

ある史家によると、リンチのような扱いだったらしい。兄王の指示でなく、弟リチャード配下が動いたらしい。しかし適格資料に乏しく事実は不明。なお脚本はアンに次のように語らせる。「夫の弟たちへの懐疑心を常に持つエリザベスの謀りごとに決まっている」。エリザベスは確かに、夫の弟たちを決して信用せず、彼女自身の高官位にある兄弟と息子たちに動静を探らせている。宮廷内紛の情報合戦だ。

The white Queen 05

マーガレット・ビューフォート(1443-1509)は何者だろう。サマーセット侯ジョン・ビューフォトの娘として1443年に生まれる。ビューフォートはフランス・シャンパーニュ地方の土地名。エドワード3世の息子たちの、成人に達した3人目ジョン・ガウント(John of Gaunt 1344-1399)所領地だった[補註3]。ジョンのタイトルは第一代ランカスター侯爵。ここからランカスター家系が誕生。ヨーク家はジョンの末弟エドムントから出る。ジョン3人目の妻との同名息子ジョンが母親仏蘭西領地ビューフォート姓を名乗ったのである。マーガレットは傍系とは言え、もしも直系が絶える場合の受け皿になり得る。そう言う意味で由緒正しきランカスター末裔になる。

1455年の12才の時、病弱ヘンリー6世の意志で、24才のエドムント・チューダーと結婚。エドムントはヘンリーの異父兄弟。ヘンリー5世没後、未亡人・仏蘭西ヴァロア家から嫁いできたキャサリンはオーエン・チュダーと再婚。その息子がエドである。まさしくバラ戦争の幕が落とされ、翌年の戦役でエドはヨーク側にとらわれ監獄にぶち込まれ病死に至る。マーガレットは懐妊7カ月目、13才の未亡人になった。

お産が大変だったらしい。当時の初妊娠は16才前後と思われ、12才は現在と違い肉体的に困難と予想される。男子が生まれた。やや遠いとはいえ、王位継承権を主張できる男子である。仲介役のヘンリー6世名をもらう。それはランカスター家の王の名。彼女は計4回結婚するが、初お産の苦渋体験から2度と子供を作らず、ヘンリーが唯一である。安全を計り、7~8才息子をフランス・ビューフォートゆかりに預ける。将来を見通した彼女の明晰…。以後`元服`年齢まで手紙と数度の逢瀬で接触を保つことになる。

マーガレットの宗教心と一途なランカスター家再興の夢が息子ヘンリーに託されている。ランカスターリアンは紅いバラ紋章を用いている。対するヨーキストは白いバラ。ドラマ題名`白い女王`たるエリザベスは、ヨーキストの女王であるから。出身はランカスター真紅のバラ花紋で、この混じり合いが激しく渦巻く政争の流れに揉まれながら、一つの編み物に織りなされていく。

[The White Queen 後篇に続く]

【補註】
1.さあ日本へはどちらが? 日本のTV放映であるから、カットされた上品なシリーズになるような気がするが…。かつて大嶋渚監督「L'Empire des sens (愛のコリーダ)In the Realm of the Sense」が日本国内で話題を集めた。愛欲の徹底的描写すなわちセックス写実手法のため、エログロ映画と見なす批判が出た。実際の映画館興行がどうなったのか私は知らない。欧州でノーカットで名作映画としてTV放映され、何故か私は独版と白版の2回観た。キチゾウの男根を口にくわえ激しく動くサダと、くわえられながらタバコを吸うキチゾウとのロングショットは当時の欧州でも特異だったようだ。主役Rebecca Furgusonなど女優人はサダを演じた松田英子のように実際の性行為をするわけでないが、殆どそれに近い状態の迫真演技をしている。茶の間に入るTVフィルムのこうした傾向はドンドン`自由化`している。やや異なるが、赤子誕生シーンでは殆ど生まれたばかりの赤子を準備手配して、撮影はそのタイミングに合わせ行われるようだ。なお大嶋渚は今年1月半ば永眠している。晩年に痴呆症を患った彼を妻・小山明子が介護し尽くしたDocが添えられていた。合掌。
 
2.この秘密結婚を、弟リチャードが載冠する時の必要手続きに利用している。兄とエリザベスの結婚を無効にすると、その子息は庶子になり、その王位継承権は発生しない。権力者は偽文書/偽証人などいかようにもでっち上げ、議会の承認を得る。建前と言うか、約束≒契約の形を整えることがキリスト教社会の最重要事。謀略でも嘘でも、議会/枢密員に結婚無効を承認させること。しかしこの無効宣言はヘンリー7世が元に戻している。時の絶対者の思惑と政治判断たる代物である。

3.BBCone日曜日放映の後に、ばら戦争に関するほんとの歴史と題するやはり1時間番組が続いた。オックスフォードやケンブリッジの歴史学研、さらに歴史小説家、計8名ほどが其々の意見をのべて、興味をそそられた。こういう分野に女性研究者が多いのは、王位の妻(Queen consort of England/Scots/Irelandのように記述される)と王位その人エリザベス1世やヴィクトリア女王との絡みではないか。男性研究者に分らぬ部分を探れる…そんな気がする。

4.Gauntは現在ベルギー・フラーデレンの古都Ghend(Gendフェント)生まれ。母親フィリッパの里で、誕生時に父親不在だったために、低い土地(ベルギー)の屠殺家の息子と揶揄される。GauntはGhendの英語化。長兄エドワードが皇太子職で亡くなり、その息子リチャード10才の1377年、エドワード3世が没す。息子はリチャード2世として載冠。幼少のため叔父ガウントが摂政(Regency)を務める。1399年嫡子無くリチャード死後に王位についたヘンリー4世はガウントの息子。本来なら継承権1位のガウント自身が王位につくが、同じ年59才で亡くなったために息子が載冠した分け。ランカスターの主流はヘンリー4/5/6世と続き、一方ガウント妾で3人目妻(シャンパーニュのビューフォート貴族出身)の流れにマーガレット・ビューフォートが位置する。あくの強い個性的人物だったらしく、彼の4代後の玄孫(ゲンソン)がチューダー朝を開く。ガウントはキング・オブ・イングランド史に於いて欠かせぬ面白いポジションを受け持つ。
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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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