ライン・ワール・マースの狭間から、草の如し徒然の観察八景。 政ごと/商いごと/言の葉ごと/遊びごと。

Nature 雑草 フローラ/ファウナ

待宵草(マツヨイグサ ) の自由恋愛 Evening PrimroseとNachtkerzen


数日前に黄色い花をつける植物をある庭で見つけました。一目見てお分かりになる方がいらっしゃるでしょうね。和名を宵待草、または待宵草と言う大変有名な草。宵を待ってから咲くので、順序通りでも返り読みでも、いずれもありデス。でも初めに和名を付けた偉い方々はどちらかを正しいと勝手に言っているようです。花を愛で、我が親しい名称を付けて呼ぶのは自由ですから、`学会`関係者を除き、もっと大らかであっていい…。

Teunisbloem 03

何故この写真を撮った? 私には珍しい形だからです。10本の短い茎が真ん中の太く長い主要軸の周りから放射状に出ています。こんな姿をまず見ません。一本茎が出て、茎を伸ばし、50センチや1mになると上部からこうした枝を出すことはあります。根っこから輪になって枝を出すのは珍しい。翌年に育つべく沢山の葉だけを秋に出す(根生葉とかロゼットと呼ばれます)のが普通で、それはそのまま冬を越し、大抵の場合翌年に茎を伸ばし花をつけます。

大抵と言うのは植生環境によって、2年待ちも時には3年待ちも。つまり3年生草と4年生草タイプを私は観察しているから。2年生草と簡易本にあるのは平均でそうだと言うこと。どうやら画像の個体は翌年に延びる積りだった。ですが、異常な多雨と時々の陽気と言うケッタイ天候のために、本来のリズムを忘れて茎を伸ばした…と。外輪と言える茎/花群は、だから「この際、姿かわりで出てみよう」と成ったのではないか。彼女(可憐な花は女性形のようですから)は、こう言うわけで1年生草になります。

Oenothera 待宵草 rozettjes op Zand
ライン川河床の砂地に無数に出る根生葉。数か月後に見ると、花弁サイズは大と中に属するヴァリエーションだった(下の記述)。出たての葉っぱを私は熱湯に通し、醤油などかけていただきます。鰹節があると良いのですが、、

Nachtkerzen(ナハトケルツェン)と溝向こうの隣人は呼びます。`夜の蝋燭`とは夕方(夏の21時頃から)から花弁を開き、夜間に蛍光性黄色の光を発して、あたかも蝋燭のきらめきのように見えるからです。ブリテンやダッチ名より優れた呼び名です。USの通称はイブニング・プライムローズ、夕方に咲くプリメラ(別種のサクラソウ仲間名)と甚だイメージ貧困な命名では…、地元の草花ならば独立名詞をつけるのが良かろうに..。 蘭語の通称はTeunisbloem/テウニス花、聖アントウニスからの拝借名。これも故事を知らねば直截なイメージが湧き辛い。

Oenothera laciniata In Takano Tango 001 小待宵草

日本海々岸、帰化自生種。和名でコマツヨイグサ(小待宵草)か?あるいはメマツヨイグさか?19世紀末から20世紀半ばに渡日したようです。これは花柄のみを根から立ち上げているような印象をうけます。しかも砂地に茎と言うか根と言うか、他へリンクするものを這わせて次の花を再び立ち上げる…そんな風な感じです。どなたか詳しい観察者の教えを請わねば一寸分かりません。同じ方式が北/南米の待宵草にあるでしょうか? 21世紀の北/南米種と同じゲノムの帰化種は既に存在しない…と私は推し測ります。

本属の仲間として、メキシコ湾を取り囲む多くと南米自生の合計125種に分類され確認されているようです。欧州にもたらされたのは16世紀後半。航海時代、オランダ諸地方/都市がオランニェ・ナッソウ統領のもとにハプスブルグ・スペインのフェリーペ2世に反乱する80年戦争の間だったと言うこと。

欧州に於ける純粋帰化種として3つが挙げられます。原生地の白や赤、別種かと思われるような園芸種を見ます。しかしそれらの逸出の報告はありません。黄色のみの花でサイズ違いの三つです。大Oenothera glazioviana= syn. O. Erythrosepala(オオマツヨイグサ)、中O. biennis(メマツヨイグサ)、小O. parviflora(中と同じメマツヨイグサ)。日本では中と小がサイズを違えていても、同種として扱われているようです。

これらは16世紀の渡欧以来、互いに交雑して、しかもフローラ一般の突然変異を証明し得る研究対象種になっています。夜蛾と蜂による他家受粉が基本で、それが突然変異の舞台になります。一方で自家受粉による純粋系も維持される。両者が交じり合い、再び三度元に戻ったり、世紀を通じて欧州のみの遺伝子情報が継承されてきた。学術名は便宜上従来と同じものを用いているにも拘らず、(遺伝子解析の専門家によると)もはや北米自生種と異なるコード並びで、厳密には異なっているそうです。

Oenothera parviflora 比較 Kleinste teunisbloem
野原で採取した種子から出た個体群。上3つの内の`小`にあたり、4枚花弁がはっきり分かれている。

別の種子から出たものは花の差し渡し5センチ以上あり、花弁は重なり合い`大`に当たります。`大`と`小`に加え中間サイズが出ました。花柄付け根の小さな二枚葉(托葉)が違ったり、大きな花をつける個体の葉主脈に赤味が走りがちだったり、幾つか細部が観察されます。そうなんですけれども、毎年出る待宵草は全くチリジリバラバラと言わざるを得ません。何もしない放りっぱなしの`雑草庭`に於いて、自由奔放な交雑が生じているのです。

Oenothera biennis 007   Middelste met Grote
自由恋愛の例。右手前花弁差し渡し5~6センチ。左奥の花弁は3~4センチ。 花弁の作りが違い、印象も異なる。


オランダ権威者によると、以上の三つは``30年前現在``の説明し得る妥当な学説なそうな。言い換えれば、仮説である。なぜなら北海に連なる島々に自生する砂地の待宵草など2つの変種くさいのを勘定するならば、5種として分け得る。逆にそれらを一つに括ることも出来ようと言う含みなのだろう。

聖アントニウスの花は午後9時頃、夏だから欧州中央はまだ明るい。赤い外側の保護被膜を下に落として黄色い花弁が姿を現す。ほぼ60秒前後で、クリ-クリッと空気を掻き裂いて回転しながら花弁を広げる。折り紙のカザグルマだ。あるいは粉引きの風車に他ならない。

耳を澄ますと、回転する際の空気音が聞こえる、と思う。花色はまだ蛍光を帯びず、生れ出たばかりの黄色の柔らかな感じ。あちこち近くの蕾が2時間ほどの間に、プルプルッとも聞こえるように空気を震わせる。見事なシンフォニー…見甲斐、聞き甲斐、椅子を庭に持ち出して待つ座り甲斐がありますよ。 

Opening Teunisbloemknoppen 01.jpg
1~1.5センチの`小`も同じ要領で開花する。花は紫外線を発するそうで、それが蛍光的な印象を作るのだろうか? 

翌朝の明るい時に見ると、既に夜間のギラギラする花弁の表情はきえうせている。花柱天辺につく十字形の柱頭がどうなっているかを忘れたが、花柱大部分は筒部に埋もれながらまだ見えている。同じ長さの8本雄蕊はしょんぼり萎れている。宴の後なのだ。正午頃になると花びらを閉じ、まもなく花びら自身が落下します。残りは緑っぽい2センチ長の`トックリ`です。こうして茎軸の上部は咲いてから一月ほどで、軸周りに細長い緑の筒状果実を密集させる。

雪がちらつく頃になっても、やや茶色を帯びた種子の細長い大群はそのまま立ち尽くしているんです。茎は死して木質化、言わばびっしり種子をつけた細長い木の杙が立っている。カッコイイとは言えない風情がずっと続きます。春を過ぎても、荒野/野原にそんな姿を見ることが出来ます。

長い期間に吹く風に思い出すように乗せられて種子散布を行っているんですね。辛抱強いと言うか、したたかな種の存続作戦。庭の草花を丹念に世話するには多くの知識が必要です。種子を求め撒いて育てる計画作業が私はできません。教えられ、しばしばナルホドナ-と感銘を受けます。そのお礼でもないですが、荒れ地にヒョウヒョウ‐と立つ待宵草やゴボウの涸れ姿の話を差し上げます。
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ken minatoya

Author:ken minatoya
Victor Westhoff(1916-2001)碑文Hij observeertからのHNを本名と苗字に先立つ屋号に変更。ウエストホフは生物フローラの相互生息環境を丹念に観察したBiotop概念の先駆者。ザザーッとフィールドを歩きつつ、こぼれ見える外史/雑人/雑草の風景

日本語→英語自動翻訳【星条旗】
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